第6話 村でお買い物デート!?
翌朝、俺たちは氷の神殿に向かう前に、最後の準備をすることにした。
「ソラちゃん、出発前に買い物をしませんか?」
『買い物?』
「はい。氷の神殿の道中で魔王軍に鉢合わせする可能性もありますから、しっかり準備しておきたいんです」
『そうね。回復薬とかも必要かも』
「そうです!それに……」
俺はちょっと照れながら言った。
「ソラちゃんと一緒に買い物なんて、なんかデートみたいで楽しそうじゃないですか」
『デ、デート!?』
ソラの顔が真っ赤になる。
『そ、そうね!一緒にお買い物、楽しそう!』
こうして俺たちは村の商店街に向かった。
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最初に立ち寄ったのは武器・防具屋。
「いらっしゃいませ!何かお探しですか?」
店主のおじさんが声をかけてくる。
「えーっと、軽装の防具を探してるんですが……」
『私、魔法使いだから重い鎧は着られないの』
「なるほど!でしたらこちらの魔法使い用ローブはいかがですか?魔法防御力も上がりますよ!」
店主が見せてくれたのは、美しい青いローブ。確かにソラちゃんに似合いそうだ。
「お値段は?」
「金貨15枚になります」
「たっ、高い……」
俺は財布の中身を確認した。昨日の金策で稼いだとはいえ、旅費も考えるとあまり贅沢はできない。
「あの、もう少し安いのは……」
「でしたら、こちらの中古ローブが金貨8枚です」
見た目は少し古いが、機能的には問題なさそうだ。
『健太くん、中古で十分よ。新品なんて贅沢だわ』
「でも、ソラちゃんには良いものを……」
『気持ちは嬉しいけど、節約も大事でしょ?』
ソラが微笑む。やっぱり俺の推しは賢くて優しい。
「分かりました。中古ローブをお願いします」
続いて俺用の軽装鎧も中古品(金貨6枚)を購入。
「合計金貨14枚ですね」
「ありがとうございました」
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次は薬草屋へ。
「回復薬が欲しいんですが……」
「小さい回復薬が銀貨3枚、中くらいが銀貨8枚、大きいのが金貨2枚です」
『どれにする?』
「うーん、中くらいを3本ずつくらいですかね」
俺は計算する。銀貨8枚×6本=金貨約5枚。
「あと、魔力回復薬も2本ずつお願いします」
『健太くんは魔法使えないのに?』
「ソラちゃん用の予備です。スパチャで強化しても、魔力切れしちゃったら意味ないですから」
『そんなところまで考えてくれて……ありがとう』
魔力回復薬は1本銀貨5枚。4本で金貨2枚。
「合計金貨7枚ですね」
薬類も無事購入完了。
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「保存食も買っておきましょう」
『そうね。野宿になるかもしれないし』
食料品店では、乾燥肉やハードブレッド、水筒などを購入。
「これで金貨3枚です」
『健太くん、これも私の分まで……』
「当然です。推し——じゃなくて、大切な人の食事代くらい、俺が払いますよ」
『推し?』
「あー、えーっと……『押し』ですよ。俺が押している人、要するに応援している人」
『ふふ、健太くんって変わった言い回しするのね』
危ない危ない。つい現実世界の言葉が出てしまった。
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買い物も一段落して、俺たちは街を歩いていた。
『あ、あのお店素敵』
ソラが指差したのは、小さなアクセサリーショップ。ショーウィンドウには美しい装飾品が並んでいる。
「見てみますか?」
『いいの?』
「もちろんです。ウィンドウショッピングは無料ですから」
店に入ると、様々なアクセサリーが展示されていた。指輪、ネックレス、ブローチ……
『わあ、どれも綺麗』
ソラが目を輝かせている。そんな彼女を見ているだけで、俺は幸せだった。
「何か気に入ったものはありますか?」
『これ、素敵……』
ソラが見つめているのは、青い石がついた星形のブローチだった。確かに、ソラちゃんにぴったりのデザインだ。
「店主さん、これはおいくらですか?」
「ああ、それは当店自慢の品で……金貨25枚です」
「に、25枚!?」
高すぎる!今の俺たちの予算では手が出ない。
『やっぱり高いのね……』
ソラが残念そうに呟く。
『でも大丈夫。こういうのは見てるだけでも楽しいから』
そう言って、ソラはブローチから目を離した。でもその表情に、少しだけ寂しさがあるのを俺は見逃さなかった。
「ソラちゃん……」
俺は心の中で誓った。いつか必ず、あのブローチをソラちゃんにプレゼントしてやる。
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「最後に雑貨屋も見てみましょう」
『何か必要なものある?』
「転移石があると便利なんですけどね」
転移石は、登録した場所に瞬時に移動できる魔法のアイテムだ。危険な時の逃げ道として使える。
雑貨屋に入って尋ねてみると——
「転移石ですか?ありますよ。1個金貨50枚です」
「50枚!?」
『高すぎるわね……』
「そりゃそうですよね。便利なものほど高いのは世の常です」
『でも確かに、あると安心よね』
「まあ、今回は諦めましょう。お金に余裕ができたら考えます」
俺たちは店を出ようとした、その時——
「健太さん!ソラさん!」
振り返ると、見覚えのある女性が手を振っていた。
「リナさん!」
昨日助けた商人のリナだった。
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「奇遇ですね!お二人ともお買い物ですか?」
『はい。氷の神殿に向かう準備をしてたんです』
「氷の神殿!危険な場所ですね……」
「大丈夫です。しっかり準備しましたから」
俺は購入した装備を見せた。
「なるほど、用意周到ですね。でも……」
リナが何か考えている。
「実は、昨日お二人に命を救っていただいたお礼をしたくて」
「お礼なんて、そんな……」
「いえいえ!実は私、こういう物も扱ってるんです」
そう言って、リナが取り出したのは——
「転移石!?」
「はい。商人の特権で、特別価格で仕入れてるんです。お二人になら……金貨10枚でお譲りします」
「10枚!?本当ですか!?」
通常価格の5分の1だ!
「命の恩人ですから。それに、危険な旅に出るなら持っておいた方が安心です」
『リナさん……ありがとうございます』
「ありがとうございます!お言葉に甘えさせていただきます!」
俺は金貨10枚を支払い、転移石を受け取った。手のひらサイズの青い石で、魔力を込めると光る。
「使い方は簡単です。まず安全な場所で魔力を込めて座標を登録。その後は石に魔力を込めれば、登録した場所に戻れます」
『すごく便利ね』
「本当にありがとうございます。これで安心して氷の神殿に向かえます」
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リナと別れた後、俺たちは宿に戻った。
「今日は楽しかったですね」
『うん!一緒にお買い物、すごく楽しかった』
部屋で購入したものを確認する。
・中古ローブ(ソラ用):金貨8枚
・中古軽装鎧(俺用):金貨6枚
・回復薬×6、魔力回復薬×4:金貨7枚
・保存食類:金貨3枚
・転移石:金貨10枚
合計:金貨34枚
「結構使いましたね……でも必要な出費です」
『健太くん、今日はありがとう。私の分まで全部払ってくれて』
「当然です。ソラちゃんのためなら、いくらでも」
『でも……』
「でも?」
『さっきのブローチ、欲しそうに見えた?』
俺はドキッとした。やっぱり気づかれてたか。
「少しは……でも、ソラちゃんが我慢してるのに、俺が欲しがるわけにはいきません」
『私のために我慢してくれたのね』
「そんなんじゃないです。今は実用的なものが優先ですから」
『健太くん……』
ソラが俺の手を握った。
『いつか、お金に余裕ができたら……その時は、一緒に見に行きましょう?』
「はい!絶対に買ってあげます!」
『約束よ?』
「約束します!」
こうして俺たちのデートは終了した。
明日はいよいよ氷の神殿に向かう。装備も整ったし、転移石もある。
何より、ソラちゃんとの絆が深まった気がする。
「さあ、明日からまた冒険ですね」
『うん!健太くんと一緒なら、どこでも行けるわ』
その夜、俺は心に誓った。
いつか必ず、あの星形のブローチをソラちゃんの胸に飾ってやる。
それが俺の新しい目標になった。
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