第6話 港区の幽霊
恐らく私は、幽霊が視える能力を持っている。私の視界にはっきりと映るその姿を、街を行き交う人々は目もくれずに歩いている。なので多分、私だけが視ている彼らは幽霊である。
港区の幽霊は、幽霊にしては珍しくSNS上に現れる。ただ実際にその姿を見たことのある者は少ない。彼女たちはSNSに、自己顕示欲の首輪に縛られているのだろうか。
彼女たちは幽霊として栄養を与えられる事が無いのだろうか、地上の人間とは違い瘦せ細っている。骨ばった手足をしているのにバストは彼女たちの豊かさを示していて、それを強調する為にあるような衣類を纏っている。そして美しさを均質化した顔を中心に、端に豊かさを示した写真をSNSにアップロードしている。洗練された顎のラインは不気味さを解き放ち、大きな目の横にある尖った目頭は彼女たちの生き方を表している。この不気味さと美しさ、貧しさと豊かさの混ざったカオスに魅了されたのか、感性の研ぎ澄まされた若い女性たちはSNS上の幽霊を目指して日々研鑽している。
私は生きていてSNSに映る彼女たちの姿を観測したことはないので、多分幽霊なのだろうと思っている。都会の人間の足の速さと同様に、SNS上の彼女たちのタイムラインも足早に更新されている。
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