第5話 天界の幽霊

 恐らく私は、幽霊が視える能力を持っている。私の視界にはっきりと映るその姿を、街を行き交う人々は目もくれずに歩いている。なので多分、私だけが視ている彼らは幽霊である。


 歌舞伎町と呼ばれる地域は深夜でも煌々としている。美しいスーツやドレスを着飾った若者の幽霊たちは資本主義の天国と地獄にて、輪廻転生の渦に飲み込まれている。夜間、白さを纏って光り輝く天国は、日中に灰色の地獄へと姿を変える。身なりを綺麗に整えた天使たちによって、地上の人間は天上の世界を味わう。その光景に脳を焼かれた人間は天使たちに再会するためにこの街に通い続ける。対価として払い続ける金銭を信仰心から天使たちに注ぎ込む。ついに支払い能力を失った人間は日中の地獄にて叫びをあげる姿を時折見せる。ただ天上の世界はその優しさをもって、彼らを天国に導き、彼らには天使側の立場が与えられる。そして地上の人間は天使となった彼らに天上の世界に導かれる。


 我々人間には天上の世界は眩しすぎるとは古くから言い伝えられているが、非情にも人間は愚かなので、その世界に夢を見て禁断の地に足を踏み入れる。そして天国と地獄の輪廻転生の渦に飲み込まれていく。

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