第2話 若者の幽霊

 恐らく私は、幽霊が視える能力を持っている。私の視界にはっきりと映るその姿を、街を行き交う人々は目もくれずに歩いている。なので多分、私だけが視ている彼らは幽霊である。


 新宿周辺には若者の死体が転がっている。これだけの人通りの前で無防備な姿を晒しているので死んでいるに違いない。見た目は人それぞれで、スーツ姿のモノもあれば、所謂、地雷系と呼ばれる女性のモノ、短パンにダボダボしたサイズのTシャツをきたモノもある。公衆の面前で四肢を投げ捨て、植木や道路に倒れ込んだそれらを認識していない人間もいるが、死体には近づきたくないのだろう、街行く人々は少し避けて通り過ぎる。不謹慎にもその姿を撮影する輩もいる。


 死因は恐らく急性アルコール中毒か薬の過剰摂取であろう。その死体近辺にアルミ缶や市販薬の空箱が散らかっている。日本は先進国として国際社会で立場を示してきたが、首都近郊にこれ程毎日のように死体が転がっていては、およそ先進した国であるとは云えないだろう。


行政がしっかりとしているのか、時間が経つとその死体は消えている。彼らが大人としての落ち着きを手にする前に、この世から姿を消してしまったのはとても悲しいことである。都会の人間は早歩きで進み続ける。

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