第34話 上書きされる記憶
怜は私の提案を静かに受け入れた。ローテーブルに置かれたノートパソコンの画面には、先ほどまで流れていたAVの映像が一時停止されている。それは怜が絶頂し、男たちに蹂躙されていた屈辱的な瞬間だった。
「……映像の分析はこれで一度完了したな」
怜はノートパソコンから私を見つめた。その声には科学者の冷静な響きが戻っている。だが、私は知っていた。彼女の心にあの映像が深い傷跡を残していることを。
「そうね。でもデータはまだ不完全だわ」
私はそう言ってゆっくりと立ち上がった。怜は私の言葉の真意を測りかねているようだ。
「どういう意味だ?」
「ビデオに記録されたあなたの反応は、あくまで受動的なものよ。あなたはただ、男たちの一方的な攻撃に耐えていただけ」
私はそう言いながら、怜の横へと回る。怜の身体は微かに緊張し、肩が強張った。
「私が知りたいのは、あなたの身体が自ら快感を求めていく過程よ。その能動的な反応を記録し、分析したいの」
私の言葉に怜の瞳が見開かれる。それは私の意図を完全に理解した証だった。
「ッ……何を、するつもりだ……?」
その声には、驚愕と抗いがたい期待が入り混じっていた。
私は怜の身体をベッドへと誘導する。怜は抵抗しなかった。その潤んだ瞳は、もう私から離れられなくなっていた。
私はAVの映像を再び再生する。ヘッドホンからは、あの時の男たちの声と怜の悲鳴が生々しく流れてくる。だが、私の指は男たちとは全く違う優しさと確信に満ちていた。
私は怜の身体にキスを落とす。あの男たちが舌で這ったうなじに。その柔らかい肌の感触が私の唇に伝わってきた。
「この刺激と私の刺激、どちらが深く反応する?」
私は怜の耳元で囁いた。怜は何も答えない。だが、彼女の身体は正直だった。私の唇がそのうなじをそっとなぞるたびに、怜の肩がびくっと震える。
「次はここね」
私は憐の身体にオイルを塗った。あの男たちが使った透明な液体だ。それは怜の肌を艶めかしく光らせる。私はその艶めく肌をゆっくりと指でなぞった。男たちが撫でた腹部を。
「……んん……っ」
怜の口から、くぐもった熱い吐息が漏れる。
「本当はこっちの方が気持ちいいでしょう?」
私は憐の耳元で囁く。画面からは男たちの下品な笑い声が聞こえてくる。だが、私の優しく支配的な愛撫が、そのすべての音をかき消していく。
怜の身体は私の手によって、過去の屈辱的な記憶を快感で塗りつぶされていく。彼女の心は混乱し、快感に身を委ねたいという欲求と、それに抗いたいという最後のプライドがせめぎ合っていた。
だが、私にはわかっていた。怜はもう抵抗できない。私のこの愛撫と囁きが、彼女のすべての理性を破壊していくことを。
そして私は怜の身体に、自分の快感を絶対的なものとして刻み込んでいった。それはあのAVの男たちには決して成し得なかった、完全な支配の儀式だった。
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