第30話 親友の手による陥落


 怜の身体は、もはや私の言葉に、そして愛撫に完全に屈服していた。理性の鎧は剥がれ落ち、科学者としての仮面は砕け散っている。私の指先が、彼女の耳たぶを、首筋を、そしてその華奢な鎖骨のくぼみを優しくなぞるたび、憐は小さく身震いした。そのか細い喉からは、抑えきれない吐息がひゅ、ひゅと漏れ続けている。


 「怜。怖くないわ。私しかいないから。大丈夫よ」


 私は、憐の耳元でそう囁いた。その声は、まるで母親が震える子供をあやすように優しく、慈愛に満ちていた。だがその言葉の裏側で、私の心は獰猛な捕食者としての冷たい歓喜に満たされていた。


 憐は私の言葉を信じていた。だからこそ、彼女は抗わなかった。AVの男たちに無理やりイかされたあの屈辱的な記憶とは違う。これは最も信頼する親友が、自分を未知の領域へと導いてくれている。憐の知的好奇心は、その新しい快楽へと身も心も委ねようとしていた。


 私はゆっくりと、しかし確実に、憐のスカートをその下へとずらし、柔らかな太ももを露わにした。憐は抵抗しなかった。ただその潤んだ黒曜石の瞳で私を見つめていた。その瞳の奥には、恐怖と期待と、そして甘い降伏の色が混ざり合って揺れていた。


 私は、憐の太ももの内側をゆっくりと撫で上げていった。私の指先が、その柔らかな敏感な場所を探る。怜はびく、と身体を震わせ、その固く閉じた唇が微かに開いた。


 「……ぁ、ああ……っ」


 言葉にならない喘ぎが、憐の喉から漏れた。それは快感の始まりを告げる静かな、しかし確かなサインだった。私はそのサインを見逃さなかった。そしてゆっくりと、憐の股間にその指を這わせた。


 「……っ、ふ、や、ぁ、つきの……」


 憐は私に助けを求めた。だがその声は、もはや拒絶の言葉ではなかった。それは快感の淵に突き落とされかけている魂の叫びだった。


 私は、憐の濡れた部分を指で優しく、しかし執拗に愛撫し始めた。一本の指で。そして二本の指で。くるくると円を描くように。上下に往復するように。憐の身体は、私のその繊細な愛撫に過剰なまでに反応した。台座の上で大きく、大きくしなり、そのか細い喉からは、まるで初めて鳴き方を覚えた子鹿のように、くぐもった嬌声がほとばしり出た。


 私は怜のその身体の激しい痙攣をこの目で見つめていた。その瞳から止めどなく涙が溢れ出している。だがその涙は、もう屈辱のそれだけではなかった。それは、未知の快感と、親友に自分のすべてを見つけられてしまった、その羞恥と、そして抗えない快楽への降伏の涙だった。


 憐は私のその言葉に、私のその指に、完全に支配されていた。


 「……あああ……っ! や、だ……! つ、きの……! いや、ああっ……」


 その悲痛な懇願の声。だが、私は止まらなかった。憐をこんなにもぐちゃぐちゃにできるのは。憐のその理性を完全に破壊できるのは。


 「……私だけよ」


 その最後の囁き。憐の身体は、私の言葉と愛撫によって、ついにその限界を超えた。


 「ぁああああああああああああああああああっ!」


 悲鳴にも似た絶叫。憐の身体が、私の指の上で大きく跳ね上がり、その全身の筋肉が硬直した。彼女の口からあわがわずかにこぼれる。瞳は快感と屈辱に濡れて、私を見つめていた。


 完全な勝利。私は憐を私の手でイかせた。そしてそれは、あのAVの男たちに無理やりイかされたあの絶頂とは全く違うものだった。


 憐の身体が痙攣を繰り返し、そしてぐったりと私の腕の中に崩れ落ちる。私は、その熱く柔らかな身体をしっかりと抱きしめた。憐の涙のしょっぱさが私の肌を濡らした。


 私は憐の震える身体を抱きしめたまま、その熱い吐息と私の吐息が混じり合うその感触を、ただひたすらに愉しんでいた。

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