第5話 無茶苦茶な覚悟

「なんだその作戦は」


来人に苦笑されてしまった。失礼なやつだ。


「井上の家に突入する。小手先で何かするってわけじゃない、なあに所詮BB弾だ。井上に当てられたとしても死ぬわけじゃない。」


………キノコと来人が引いてる。つくづく失礼な奴らだ。


「……いいよ。キノコ、エアガン頂戴」


「来人くん!?君は作戦とも言えない作戦に乗るつもりなのか!?」


「そうだよ、今作戦を考えて実行したとしてもそれは付け焼き刃にすぎない。それに──」


ダァンとBB弾が車に当たる音がした。


「ほら、あいつは話し合う気がなさそうだ。こうなったら数の力で圧倒するしか方法はない。」


「………もう!わかったよ!ほらエアガン!なんでここには脳筋しかいないんだよ!」


キノコが喚いているが聞こえなかったことにしよう。


───────────────────────


キノコ視点


「はあ…」


井上くんの家の間取りだったりとかは事前に碧くん達には話した。

それにしても碧くん達は力だけでしか解決しようとしないんだ。


「いくよ……」


「待て」


なぜか碧くんが僕達を止めた。


「どうしたの?」


「これ、見てみろ」


碧くんが指を指した先には罠があった。


ドアの隙間から紐が出ていて、その先には釘がびっしりと生えた板が天井についていた。


「やっぱり正面からは無理か…」


「…ねえ、なんでわかったの?」


「不自然にドアの隙間から紐が出てるからおかしいと思ったんだよ」


「碧!家の周りちょっと見てきたけど一階は全部侵入対策されてた」


「どうするの?」


僕がそう聞くと碧くんはしばらく悩んで


「車で突っ込む?」


「ちょっと待ってよ!せっかくの車がぐちゃぐちゃになるじゃないか!それに…」


「わかってるよ、言ってみただけだ。」


この人本当にわかってるのかな…


「…なあ碧、僕らだけじゃ井上を説得するのは無理だ。」


「一旦学校に戻ろう、井上を説得したいならまた来ればいい。」


来人くんはそう言った。


「そうだよ碧くん、いくら君でも井上には敵わないよ」


「……キノコ、警棒を持ってきてくれ。」


「え…?」


碧くんはここまで言われても止まるつもりがない。どうして…?


「俺は井上を絶対に連れて行く」


碧くんは覚悟を決めた目で僕らを見て言った。


「お前らがそう言うならそれは正しいんだろう。でも俺は龍騎と約束したんだよ、三人を絶対に連れてくるって」


「来人とキノコはここで待っていてくれ。もしかしてだ、お前らを連れて行ってもし命を落とすような罠が仕掛けられていて、もしそれで死ぬのが俺じゃなくお前らのどっちか、最悪の場合どっちも死ぬかもしれない。だから───」


「わかったよ、碧。お前の覚悟はわかった。」


「俺達はユナイトだ。ユナイトの意味は?」


「たしか『団結する。』だったね」


「そうだキノコよく知ってるな。んで碧、俺らはユナイトという団結するという名前とみんなの期待を背負って、ここに来てる。勝手な行動は許されない。だからお前一人で行かせるつもりはない。」


「かと言って仲間一人の意思を無下にすることはできない」


「わかった、僕ら全員で碧くんの考えている作戦をすれば勝手な行動にはならないってことだね」


「ビンゴ、お前は俺らをちょいと舐めすぎているんじゃないか。」


「俺とキノコはお前の想像するような死に方では死なないよ。約束する」


「来人…」


「あれ僕のこと忘れてない?」


「キノコも来てくれるのか…?」


「話聞いてた?来人くんは『俺ら』て言ってたよ?もちろん僕も含んでるに決まってるじゃないか」


碧くんが驚いたような目で僕を見てくる。確かにいつもの僕なら

『そんな無茶苦茶なああ!!』って言って全部否定してた。

でも来人くんの話を聞いて思った。いつまでも惨めったらしくうずくまってるだけじゃだめだって。

だから僕は覚悟を決めて碧くんを全力でサポートすることにした。

どんなに苦悩があったとしてもその時できることを最大限やる。

僕はそう決めたんだ。絶対にこれを曲げない。

どんなに無茶苦茶な覚悟だとしても。


「お前ら…ありがとう。ありがとう……」


「おいおい」


「ちょっと碧くんったら」








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ニセカイテンイ 音々音 @nenenenenenene

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