第2話 レイとルイ

『わぁっ!す、すごい!』


共有意識空間とやらでずっと話をしていた二人だったが、彼からの提案で少し外を散歩することになった。始めにやったように手を繋ぎ、彼が感覚共有を更に強めることで彼が見聞きしている外の情報をツバメも同様に感じることができるようになったのだ。共有意識空間はあくまで精神世界の話で肉体はずっと外の世界にあったらしい。目を開けて彼の視点から外の世界を見ると、遥か高所から朝日に照らされた街や遠くの木々が目に飛び込んでくる。


『どこにいるの?』

『電波塔の上です。普段は気配を消して動くこともできますが意識を内側に入れている間はそれも難しいので』


そう言うと彼は何の躊躇いもなくその場から飛び降りた。ツバメは驚いて大きな声を上げたが地面に近づくと彼は軽やかに着地する。すごい身体能力だと感心するよりも僅かに心配の方が勝った。更に驚いたことに、散歩と言っていたはずが予想打にしないスピードで彼は走り出したのだ。林や街中を新幹線で走り抜けるように体感したこともない速さで周りの景色が流れていく。確かに気分転換にはなるがそれ以上に目が回りそうだ。しばらく走った後に彼は街で有名な展望台へと向かう。この時間では当然施設は開いていなかったが、彼が展望台へと近付きその影に入った瞬間視界が暗転し瞬きの間に景色が一変していた。瞬間移動というやつか、ツバメは彼が人間ではないのだと再認識する。

景色は綺麗だった。先程の電波塔からでは見えなかった海が見える。


『大丈夫?疲れてない?』


綺麗な景色を見ながらそんなことが気になった。


『ワタクシは影です。影は疲労することも、怪我や病気になることもありません。貴方さえ無事であるならば』

『そうなの?』

『はい。例えば刃物で攻撃されたとして、影であるワタクシは切られることも刺されることもありません。しかし本体のツバメ様が切られたり刺されたりされれば、その影であるワタクシにも同じ傷ができるのです。病気や疲労などについても同じです』

『僕が怪我をすれば君も怪我をするし、病気をすれば病気になるし、疲れれば同じくらい疲れちゃうのか』

『ツバメ様の身体に何かあれば同じようにワタクシにも起こるのでちょっとした不調なんかも感じ取れます』

『そうなんだ。じゃあ具合悪くなったりした時シャドウにだけは隠せないんだね』

『はい……え?』

『あ、ごめん。君って名前が無いんでしょ?だから呼び易いように何が良いかなって思って。イヤ?安直かなぁ』

『いえ。まさかそんな。貴方から頂いた名前を嫌がることなど』

『ホントに言ってね!?君の表情見えないんだからさ!』


今ツバメが見える景色は彼が見ている景色。鏡でも覗かない限りどんなに相手の様子が知りたくてもツバメには知りようがない。それでなくとも光を反射しない黒い姿は彼の感情を覆い隠してしまう。

気に入ってくれたのかそうじゃないのか。もしかしたら勝手なことをして怒っているかもしれない。不快な思いをしていたらどうしよう。こんな僅かな不安ですら彼──シャドウには伝わっているのだろう。


「お好きにお呼びください。それがワタクシの名になりますから」


声色だけで判断して良いのなら、多分、怒ってはいない。


しばらくシャドウを通じて景色を眺めたツバメは随分と自分の置かれた現状に慣れてきていた。その心の余裕もあってか病院に行ってみたいと願い出たのだ。シャドウは始め抵抗があるようだったがツバメの願いとあれば強く反対もせず彼の言う通り病院へと向かった。

ツバメの脳裏には夢で見たスズメの不安気な顔が浮かぶ。いや夢ではない。シャドウがツバメを守るため監視をしていた中で見た現実の景色だ。

到着した病院はここらでは有名な大学病院でツバメの病室は表門から中庭を挟んだ奥にあるらしい。シャドウは閉鎖されている門を始め敷地内のセキュリティを難なく潜り抜けあっさりと病室まで辿り着いた。静かに開けられた引き戸の先は角度は違えどあの時の病室と同じ。そのベッドには誰かが横たわっている。ツバメの心臓が緊張に大きく高鳴った。シャドウは「失礼します」と小さく声をかけてからゆっくりとベッドの人物に近づく。

目の前には眠る自分がいた。自分の寝顔なんて初めて見た。

栄養剤と思われる点滴と、心肺と脳信号を測る機械に繋がれている点は異質だが、それ以外では本当にただ眠っている自分。

音で表現するのならブツンと、ブラウン管テレビが消えるようにツバメの意識が表から消えた。シャドウは慌てて意識を共有意識空間へ移す。そこには小さく蹲るツバメの姿があった。怯えているわけではないが、少し胸が締め付けられる感覚がシャドウに伝わっている。


『ごめん、なんか、わかっていたのに、ビックリしちゃって』

『無理もございません』


シャドウはそう言うと優しくツバメの背中をさする。慰めているかのような、励ましているかのような。

これは夢ではない。

わかっていたはずなのにわかっていなかった。自分の意識はあるはずなのに、自分は眠りについている。この乖離を上手く受け取ることができなかったのだ。

シャドウはどこか落ち着けるところへ行くと言い残し共有意識空間から出ていった。暗くもなく闇でもないこの黒いだけの空間。自分の意識次第で狭くもあり酷く広くもある空間。

落ち着かない。


「シャドウ、ちょっと良い?」


呟くように問いかける。そうすれば彼は来てくれると思っていたのだが、一向に気配が見当たらない。思い上がってしまっていたと恥ずかしくて顔が熱くなった。


『申し訳ありません!』


直後、彼の声だけが空間に響いてくる。こんなこともできるのかと思うも、何やら切羽詰まっているその声にツバメは首を傾げた。


病院を去る際、シャドウはやはり止めるべきだったかと後悔に苛まれていた。ツバメのことだ、世界の危機や使命の話をしたとしても彼にとって一番優先するのは家族のこと。仕事で遠くにいる姉に心配をかけないため、一人ぼっちの妹を案じるため、自分が如何に早く元の生活に戻るかを考えるのは当然のことだった。病院で自分の様子が見たかったのはそのためだろう。

結果、傷付けてしまった。

どこか落ち着ける場所とは言ったものの彼にとって最も落ち着けるのは自宅だ。しかし今は逆効果。さてどうしたものかと一先ず先程の人気がなかった電波塔のある林にでも戻るかと走り出した。街を抜け病院が見えなくなり、建物が疎になり、周りが木々に囲まれた頃、シャドウは足を止める。

何か気配がする。二つだ。野生の獣の類いではない。

数秒もしない内にミシッと枝が軋む音が頭上から聞こえた。冷静にひょいと後ろへ下がると気配の正体がドンッと鈍い音を立てて降ってくる。地面に小さなクレーターを作ったそれは人のようで少し違う者。


「見つけた。ルイ!!」


その者が何かに呼びかける。するともう一つの気配が周囲を動き回り何かを探っているようだ。そのもう一つの正体も見てやろうとシャドウは動き出すが、一歩踏み出す前に先の者が前に立ちはだかる。


「邪魔をするな影の陣!」


攻撃態勢。シャドウは鬱陶しく思いながらもわからせるつもりで相手にしようとした。丁度その拍子。


『シャドウ、ちょっと良い?』

「!」


共有意識空間からの声は相対する相手の猛攻と被りシャドウはすぐに応答できなかった。未だ周囲を探る者の気配と、自分に襲いかかる謎の人物。その者のパワーは凄まじく拳が地面を叩けばクレーターができ木々を擦れば抉り倒す。見た目は細身の女性でどこからそんなパワーが出ているのかと不可解だった。相手の素性を探りたいところだがその前に優先すべきことがある。

シャドウは次に飛んできた相手の拳を捕まえると、軽々と捻り背負い投げるように地面へ叩きつける。彼女は地面にめり込み、「がはっ」と内臓が押し上げられた声を発した。響き渡った打撃音の中に骨が折れるような音は聞こえなかったので少なくとも致命傷にはなっていないだろう。


『申し訳ありません!』


シャドウは相手が動かないのを確認すると同時にツバメへ応答する。


『ごめん、何か忙しかった?』

『いえ、目障りなネズミがいたもので。如何されましたか?』

『(ネズミ…?)えっと、ここ何もないから少し寂しいなって思っちゃって。早く珠?を集めるのはどうするのかなって』

『はい。それでしたら、』


「レイ!!」


叫び声とも呼び声とも言えない焦燥した声が聞こえシャドウは話を中断させる。外の景色が見えていないツバメはどうしたのかと問いかけるが「ネズミが」と、また抽象的な答えが返ってきたため同じくまた首を傾げた。


「生きてる、良かったぁ」


現れた者は先程まで周囲を探っていた者だろう。倒れた女性とは年端の違う少年である。彼は彼女の様子を心配そうに見ていたが息があることを確認すると胸を撫で下ろしていた。


『シャドウ、さっきみたいに目を共有してほしいな。外の様子全然わからないからさ』

『いいえ、ツバメ様が把握しておく必要のない者達ですので』

『えぇ?』


なんだそれ。ツバメの素直な感想である。

それからシャドウは外の対応をしているのか声が聞こえなくなった。


『(シャドウの意識や感覚を繋げる方法、僕にもできないのかな?)』


先程やってもらった時の感覚を思い出す。

手を繋ぎ、軽く目を瞑ってリラックス。そしてシャドウの意識が頭の頂点から体の奥にストンと落ちて優しくふわりと広がる。

手を繋ぐ必要があるだろうか?単に形だけだったのなら必要はなさそうだが。ツバメは手を繋ぐ代わりに祈るように両手を握って目を瞑る。遠いようで近くにいるシャドウの存在を意識する。彼が見えているもの、聞こえているもの、全てを自分の目と耳に。

ストンと落ちた感覚を得る。

ハッと目を開けた。


『ぎゃああああああ!!!』


目の前に広がった景色は、妹のスズメよりも少し幼い少年の首に刀のような鋭く黒い刃物が今にも突き立てられようとしている光景。反射的に出たツバメの叫び声にその刃を向けているシャドウは冷静に心の声で『ああ、繋げたのですね』と反応した。


『何してるの!?どういう状況!?とにかくその危ない物しまって!』

『ツバメ様、よくご覧くださいこの者たちを』


混乱に白くなっていた思考を引き戻しシャドウが睨みつけている相手とその傍に倒れている人を見てみる。一見ただの女の人と子供に見えたが、二人とも異様に大きく丸い耳が頭部から生え、臀部からひょろりと長い尻尾が生えている。先程からシャドウがネズミと表現していたことに納得できてしまう姿をしていた。女の人の方は手足全体に文字のような刺青が入っており、子供は黒い手袋をしている。


『この人たちは?』

『端的に言うと宇宙人です。地球外生命体。違う星の人間、もしくはそれに近い種族、といったところでしょうか。それにしては不可解な点の多い者たちではありますが』

『宇宙人……。もう驚いてもいられないんだけど、その人たちは、』


「あのさ!」


シャドウに生死を握られている彼が勇気を振り絞り声をかけてきた。二人は意識内で会話をしていたため話していたことに気付かなかったのだろう。シャドウは一度ならず二度までもツバメとの会話を遮った相手を問答無用で斬り殺そうとしたが察したツバメが慌てて止める。とにかく話を聞いてみようと。


「突然襲ったのはごめんね!でもね、聞いてほしいの影の陣。君の使命?だっけ?そのさ、世界が滅んじゃうかもしれない危機に心当たりがあるんだ!」


ピクリとシャドウの手がほんの僅かに緩まった。彼の言う内容に流石のシャドウも興味を示したのだろう。


「当然確定じゃないけど、でも僕らは確信してる。で、その世界の危機の元凶になる奴がいるんだけど、僕らはそいつを追ってるの!君を襲った理由は君の力が欲しいから。影の陣、目的が一緒なら協力しませんか!!!」


冷や汗をかき喉を引き攣らせながら命乞いにも似た提案だ。ツバメはまだ状況がハッキリと理解できてはいないものの必死な様子の彼と協力という言葉を受け「良いんじゃないのかな」と絆される。しかし裏腹にシャドウは非常に冷たい声で「断る」と相手の提案を拒否した。


「う〜〜〜〜、理由とかぁ〜聞いても?」

「本体の命を狙おうとしたからだ」

「うわ、へへっ。やっぱバレてる」


シャドウが言う本体とは当然ツバメのことだ。ツバメは衝撃的な言葉に血の気が引き「え」と呟いて硬直する。それを感じ取ったシャドウはより相手を鋭く睨みつけた。自己の判断であればとっくに殺しているがまだツバメの許可が降りていないため辛うじて刃の位置は維持されている。

相手は緊張からかそういう性格なのか、へらりと笑ってみせたが直ぐに緊迫した表情に変わる。


「ごめんなさい。僕らの力じゃどうしようもないから、陣の中でも最強と呼ばれる影の陣の力が欲しかった。でも君が想像以上に強くて足止めもできないし、本体も全然見つからない。いつも一緒にいるわけじゃないんだね」

「最期の言葉は終わったか?」

「やめてーーー!お願いしますお願いしますお願いします!!!」


子供らしい駄々のような命乞い。シャドウはツバメに殺しの許可を求めるが、ツバメは何か思うことがあったのか、子供である彼を殺すのは忍びないと思ったのか許可は出さなかった。


『具体的に協力って、その子たちの目的って何だろう?』


シャドウはツバメの意思を尊重し、その疑問をそのまま相手に質問する。


「お前たちの目的とやらを教えろ。場合によっては殺す」

「ひぇぇ……」


当然脅し付き。黒い塊の白い目だけがこちらを睨みつけて喉元に凶器を突き付けられている恐怖に身を震わせながらも少年は話し始めた。


彼らは自分たちのことをマレイルと名乗った。こちらで言う地球人という意味で、彼らが住む星の人間を指す。二人は少年のルイとシャドウと戦っていた女性のレイという名前らしい。二人はとある人物を追っていて、ハカセと二人は呼んでいた。

曰くハカセは稀代の天才であり、彼が生み出すありとあらゆる発明品はマレイルの文明を瞬く間に進歩させ、彼らの星は地球人が想像もし得ないほどの発展を遂げていたそうだ。

しかしそのハカセは大罪を犯す。


「ハカセはある研究を強引に押し進めるために、膨大な人体実験を繰り返し、ついにはマレイルを滅ぼした。僕ら二人は実験体…マレイル唯一の生き残りってところかな」

「お前たちの星にも治安維持部隊や政を行う者たちがいただろう。そいつらは動かなかったのか」


ルイの話にシャドウから淡々とした声で質問が飛んできた。少し棒読みで、本当に疑問に思っている様子ではない。興味のない事に質問するタイプには見えないシャドウにルイは訝しみ回答が遅れた。


「外のことは知らない。わかったのはみんな死んでしまったということだけだ」


ルイの代わりに気怠そうに起きたレイが答えた。まだ脳が揺れている感覚に襲われていながらもシャドウをギロッと睨みつけている。


「私たちは必ずハカセを殺す。だがアイツはバケモノを生み出し続けているに決まってる」

「ハカセがその研究を完成させた時、この今の世界は滅ぶ。だから──」

「そうなる前に殺したいと」


シャドウの言葉に二人は頷く。

さて大まかな事情は把握したがツバメはどうするだろうか。シャドウは彼の反応を待ったが、どうやらツバメは彼らが語る内容が上手く理解できなかったようだ。というより混乱していると言った方が正しいだろう。自分が生きてきた常識とあまりにかけ離れた事情を語られても理解できないのは仕方ない。シャドウという存在にすらやっと慣れつつあるのだから。


『殺人の片棒を担いでほしいってこと?ううん、そういうのはちょっと』


一先ず理解できたであろうことに躊躇いを見せるツバメに気付くが早いか、シャドウの口からは「断る!」とハッキリした言葉が出た。シャドウとしてはツバメを殺そうとした奴らなぞ信用できないのだから当たり前だ。


「なぜだ!世界を救う話だと言ってるだろ!」

「レイ!落ち着いて。影の陣聞いて?君にハカセを殺して欲しいわけじゃない。あくまでそこは僕たちでケリを付けるつもりだ。でもハカセは世界を滅ぼす力を持ったバケモノ…兵器を生み出すだろう。おそらく僕らはその兵器を倒すだけの力はない。僕らはハカセを殺したい。君は世界を救いたい。そこの利害が一致しないだろうか?」


二人の表情は至って真剣だ。良くも悪くもお人好しなツバメはあまりに真剣な彼らに困惑してどうしようかと悩んでいる。


『断りましょう。この者らが言うハカセとやらが実在するのか、居たとして世界を滅亡させる怪物やら兵器やらを本当に生み出すのか、今確証を得る術がありません。聞くに値しないかと』

『そんな疑う?』

『警戒しているのです』

『どうしてそんな……あ、僕を殺そうとしてたからか。うーん、でもそれはもう良いんじゃない?』

『……貴方という方は』


シャドウの纏う雰囲気が明らかに弛緩した。ふっと漏れた吐息は表情こそレイとルイにはわからずとも笑っていると気付かせるには十分なものだ。


「なんだ?いきなり気色悪い」

「もしかして……話しているの?自分の本体と」


シャドウの様子にレイは訝しむも対照的にルイは興味を示した。


「ねぇ、僕も話してみたいな。君の本体と」


冷たい白い眼だけが降ってくる。視線に込められた殺気に身震いするもルイは引かずにニッコリと殊更な笑顔を浮かべた。


「きっと良い人なんだろうね。どうかな?本体に聞いてみてよ」

「本体は今こちらの意識の中でのみ話している。お前たちと言葉を交わすのは不可能だ」

「意識の中か。その意識を表に持って来れればお話しできるよね……」


ルイは思案する。喉元に今にも突き立てられようとしている刃は一旦意識の外に飛ばし、影の陣の協力を得るための有効な方法。

まず本体がどんな人物なのか知りたい。意識をどうこうするなど自分たちの力では当然不可能だ。

しかしルイにはその方法に心当たりがあった。


「ねぇ影の陣、提案なんだけど本体の意識を表に出してみない?聞いてみてよ!」


『意識を表に?どういうこと?』

『おそらく、魔族の力を借りるつもりでしょう』

『まぞく?』


壮大な話からファンタジーな話へとシフトしてきた。

魔族とは予想通り魔法を使う人たちのことらしい。ファンタジー世界の住人などではなく、今いるルイやレイと同じ宇宙人だとシャドウは簡潔に説明してくれた。


『僕の体を起こせるってこと?』

『いえ、それは不可能かと。詳細はアレらの説明を聞かねばなんとも』

『興味は、あるかな。さっきも言ったけど、ここ、ちょっと怖いし』


シャドウは逡巡した後、ルイの首元から刃を退けた。ツバメがホッとしたのを感じて今まで冷ややかだった彼らへの視線を少しだけ緩和させる。


「いいだろう。ただし変な真似をしたら、」

「ありがとうー!大丈夫だいじょーぶ!わかっているよ」


ようやく起き上がれたルイは大きく伸びをした。今まで殺されそうになっていたとは思えないほど能天気な態度を見せる彼は早速とシャドウに向き直り、「見てて」と言って左の手のひらをシャドウに見せる。これから起こることがわかっているだろうレイも黙ってそれを見た。


「行くよー?目を離しちゃダメだからねっ!」


ルイが手袋を外すと、そこには大きくギョロリとした目玉があった。


「!」


理解するよりも早く、空間が歪み自分たちがどこかに飛ばされていく感覚があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シャドウル 関野あたる @ataru12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ