第7話 その答えは、、3
なんでライオンがこんなトカゲに負けているのか。ライオンのおさが血まみれのライオンを見て思ったのは誇りが傷つけられていることだった。ライオンはこんなものには負けない生き物なはず無のだが、、とにかくこいつはひどい怪我だ。傷が深い。自然治癒は不可能だ。ライオンの長、彼は長年の経験で治癒そのものが不能であることを悟った。大怪我を負った生き物が生きられるほど自然はやさしくない。だが、生きる方法があるとするなら、毒がいる。同族の好で救ってやろう。・・・・ガハッと目が冷めた時溺れているのかと思った。だがそれは間違いだった。5mはあろうか体長に何より恐ろしいのはその体高。3mはあることだろう。鋭い牙は岩をも貫き、そして砕くことができるだろう。生まれて初めて合うような巨大なライオンが水辺で寝っ転がっている俺を見下ろしていた。命の危険を感じるが食べられていないし、ずっと見てくるということは、とりあえずは死なないだろ、次の瞬間はわからないが。手を大の字に広げたまま主の目を見つめ返す。その目に敵意はない。怪我をしていたことをふと思い出し、手首を見てみるときれいにくっついていた。この湖がおかしいのかもと思った。湖に入れてくれたのはライオンだろうから同族の好で助けてくれたのだろうか。一踏みされたら死んでしまうので、抵抗せずに声をかけてみる。
「ガォウ、ガォウ、ガゥ」(助かったよ、)
多分踏まれるようなことはないけど。ライオンはその声をきっかけに、なんの意味と取ったのかわからないが、森へと帰っていってしまった。どうやらこの湖は傷を癒す効果があるらしい。あのライオンは敵ではないだろうから、この安全で回復可能な水場にしばらくいない手はないだろう。グゥゥと腹が鳴った。気づかぬうちに数日立っていたりして、、この腹の減りようならあり得るが、回復の泉に使っていたのでもっと長くても生きていられそうだ。だが、水自体で腹は膨れないし、死なない程度だった。とにかくなにか食べないと次は本当にやられてしまうとそう考え、とりあえず跳ねたバッタを口にする。ボリボリボリと食べる。次はカエル。ムチャムチャ。この泉は生き物をよく呼び寄せるようで視界に貼るだけでも事足りない。すばらしい。ここに住み着いてしまいたいくらいだが、他にどんな危険があるかも知れない。一通り腹が膨れたら歩き出す。こんないい泉ならもっとたくさん危険もあっていいだろうに、、と思いながら、後ろめに湖を眺めつつあとにしたのだった。腹がまた減ってきた。体は不思議と軽いままだが、ぐううと音を立てている。獲物を探して木を組まなく見ては、枯れ葉から除く手足はないかと注意する。あのトカゲが怖いのだ。あんな大怪我をさせられたらそれはもう怖い。怖くなってしまったが、でもおそらく今では勝てるだろうと思うので食欲に任せてあたりをリサーチする。木に登ってぶらぶら探していると、超大物を発見。先程の相手と比べるとでっかい。お腹が空いた。食べたいな。ぐっと前足に力を込めて筋肉を伸ばし準備万端。尻尾を木の上から鷲掴みならぬライオン掴みし、宙吊りに掴み上げる。ぐるんぐるんと体を左右に揺らし暴れている巨大なトカゲでも、なんとか持ち上げた。そのまま尻尾を噛んだ。硬い鱗を砕き、筋肉の層に突き刺さった歯を更に突き立て、首をしゃくりあげちぎる。さらに揺れが激しくなるが、耐えて攻撃を加え続ける。尻尾の3割くらい食べたところで、脚を噛まれそうな距離に口がぐわっと近づいた。脚を引いたら、バランスを崩し脚がずり落ちてしまった。枝に引っかからぬよう一度手を離す。まずい、バランスを崩したら重心の低いやつにペースを握られてしまうと思い、咄嗟に尻尾を股に挟んで見えたところを掴むようにして拘束した。枯れ葉の音がして二匹は着地し、取っ組み合いになる。尻尾をかろうじて掴んでいるだけのライオンのほうが動きにくく不利だ。しかし、立ち上がる前には反撃の一撃を見舞われるだろう。尻尾を掴んでいた手に力を込め、胸元まで引っ張り上げる。重い感触のあと、つきあがる視点に驚いた。移動したのは自分のほうだったのだ。相手の力のほうが強かった、トカゲの地面の保持の力を侮っていた。だが、それで出し抜かれるようなライオンではない。地面を擦った背中だが、勢いそのままに加速させる。脚を解いたが、今度は素早く腹を囲い、トカゲに覆いかぶさるようにしてから技を仕掛ける。尻尾を肩に担ぎ上げ、圧迫していく。暴れるトカゲに耐える足が痛む。やつの背中に生えるトカゲが鋭く刺さり傷口を広げる。さすがだ、だがスパイクで自傷しないように可動域の限定された尻尾だったのが敗因だ。とため、そして勢いをつけて横に力を流した。頑強な繊維の切れるの切れる硬い音がする。やはり、こいつの弱点は横だったのだ。勝利を確信し、決定の一撃を加える。バチンッと腱の切れる音の後、一瞬トカゲが硬直した。その隙を見逃さず、トビ跳ねて首を抱え込む。あと、しばらくの格闘の末ライオンはトカゲに勝利したのだった。
ああ、あぶないところだった。あのとき、尻尾を掴めていなかったらどうなっていたか。ライオンは絶命したトカゲから口を離し、息を整えた。浅はかな考えだった、尻尾を持ったまま食べたなら、足を噛まれるのは当然。はじめから取っ組み合うべきであった。次はないぞ、と反省しながらトカゲに口をつける。まだ尻尾がまるまる残っているが、お腹いっぱいなので早く林の外に出る。あのライオンの主に会いたいが、ルースのことも気になるのだ。また全身に傷負ったが軽傷なので問題ないだろう、と考え積もった葉っぱを音を立てながら踏んで置いていく。20分ほど歩いたら、森が晴れて崖に出た。方向がわからなくなっていたのでしょうがないが、ぜんぜん違うところじゃないか。一度嘆いたらもう終わり、道を引き返し、今度は上側へ北西を当てにする。5分ほどあるいたところで鼻を刺激する捕食者の香りがした。間違いなく、大物だと思わせる強い血の匂い。狩りをしているのか。もう終わったのか。すぐに静止しあたりに耳を澄ませる。ガサ、ガサと一歩一歩進んでいる音が前からする。ちらっと見えた、恐ろしい光景が。冷や汗が流れるが、冷静になろうとする。ゆっくりと後ろに下がる。ガサ、ガサという音がやや早くなった気がする。その影はいまだやや近づいていく。その口に加えられるのは赤く染まった、黒い筒。化物。怪物。悪魔。悪の権化。いくら罵倒してもたりないような身を震え上がらせる生き物の腕なのは明らかだ。それを見ただけで汗が吹き出て、足は下がろうとして、体は背中を向けようとする。ガサ。全身の毛を立てるようにして、背中を丸め巨大に見せ力を込めて飛びかかった。その物体は動かず、こちらを見つめるのみ。その額に腕を突き立てる。勢いを生かした、強力な一撃、なはずだった。爪は皮膚を裂けず、指は額の硬さに負ける。ライオンは痛む手を引き、その口唇に着地し回し蹴りを食らわせる。ドンと音を立てて揺れた、のは自分の足のみ。圧倒的な存在でこちらの攻撃は意味をなさないのだ。足を滑らし、地面に腰をついた。ライオンは顔を無駄なく近づけ、口のものを離してきた。全身が震え、離脱したくなるが相手の前であるから、手を伸ばし全身を固めながらも受け取った。その唇が動いた。その声は低い、がとても響いている。森の精霊の声のようだが流行りとても怖い低い声でもある。こういったのだ。「
、、、、その、、その肉が、、とても怖い、御前も怖いが、、俺も怖い、、、土産にやろう」震えが止まらず、ライオンはゆっくりと意識を奪われた。
プ〜ン、高い変化のない音が耳元に止まったことで目を覚ました。そこはむしばっかり。ライオンは目覚めてから一時、屍体の気持ちになったのだった。その肉を持ちながら、走る。この肉、魔像の足、を噛みちぎるなんてどんな化物なんだ。しかしあいつは俺を襲わなかったのはなぜだ。いとも簡単に食べることができただろうが、見つけた時、しばし戦っていたので魔像が近くにいる可能性あったからなのだろうか。
魔像は今はどこにいるのか。いや、とにかくここを離れないといけない。慌てて足を動かし躓く。ドン、と胸から飛び込み眼の前に転がったのは魔像の足だった。黒い影がその足を覆い、広がっていく。影はあっという間に4mの高さに達するほどになりライオンの目の前に実態と持って立っている。驚くほどに輪郭の鮮明な影が少し首をか曲げた気がした。煙がたかれるように膨らんだそれは一気にこちらに流れてきた。その前足はデカくてまるで魔像のよう、鼻も、牙も、大きさも、、、。焦りも通り越し余裕が出てきて、雄叫びを上げて取っ組み合う。紫のただの煙にしかできない出現だったのにその力はまるでライオン、いやそれ以上の力で抑え込んでくる。ここで負けるわけには行かない、煙なんかに、魔像でもなんでもただの煙なんだぞと自らを鼓舞し、一層力がこもる。じわじわと押し返し、間が埋まったので蹴り上げ煙を中に撒いてやる。一度割れたら中身もなく、鎧を食い破るように家から破壊した。バラバラと落ちる結晶を見ながら、動き出している肉を手に取る。宙に投げ上げ、踵落としから、正拳落とし、連打で絶命さる、こんなものは今決着しないと命取りになる。重なる打撃で薄っぺらくなったそれを胃で溶かしてから、歩みを再開した。道中、あんなゲテモノを食べたからお腹が痛くなりそうだった。そうならないようにしたつもりだが、再び動き出す様が頭をよぎる。腹を擦りながら枝を掴み、沼を越えてゆき林を抜けたところは草原だった。ライオンはどこまでも旅していく。
百獣の王 @hjkhj
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