第4話 トモダチ
今日は不運だな、同族どもに囲まれちまうなんて。とんだヘマをしたもんだ。三体のライオンに囲まれたことなんて、生まれて初めてだし、これからも、この先もあって数回のピンチくらいやばいだろうな。
「グルルルルゥ、、」と鳴く。野生のものは必死に生きるしかないのだ。生き死にと隣合わせだから勇気というものは散々親から見習ってきた。
グァンと飛びっかろうとした一瞬の硬直のあと、ガサガサと茂みからもう一匹現れた。雄なら雌狙いで、と考えたがそいつはなんと人間だった。魔物の前の人間。どう考えたって食われるしかない。人間だってピンキリだが、食われないやつは少数で、殆どが弱者だ。やはり、この雄をまだ狙う、と決め再び硬直する。先に動いたのは、人間だった。やつの投げたい石が何度か雄にとんでいったが、大したダメージには結局ならない。バカなのか、こいつは。だが、都合がいい。
ドン、と前足で地を蹴り、180度の回転のあと雌ライオンに突っ込む。首元に口が届くが、それは相手も同じこと。標的を足に変更し、噛みつく。同時に両腕を掴み、更に首元ににじり寄る。強力な力で手を振り払おうとしてくるが、顔を寄せ抱きつくようにして離さない。左手の爪による振り払いで、胸の皮膚がえぐれるが気にしない。両足で踏ん張り、顎を上げさせ思いっきり噛みついた。勢いそのまま押し倒し両足も使い拘束しようとするが、もう一匹の横槍が入る。噛みついたところに腹部を狙った噛みつきが来る。暴れようとする雌ライオンの首を後ろに反らせるように押し込み、片足でその腹を蹴り、勢いのまま距離を取る。離れていく一匹目のライオンが見え、同時に二匹目のライオンの野生の目が視界に入ってきた。どんどん近づいてくる顔、足の踵から地面につき、移動が終わると同時に強力な力で乗りかかってきた。少しでも抵抗しようと脇を全力で押し上げる。が、努力虚しくヤツの爪が方に届き、力は全く安定せず、ゆっくりと噛みつきの軌道が顔に近寄ってくる。グゥゥ、兄者、母、兄弟より先に死ぬことになるなんてまっぴらなのにな、、ぐぐ、グゥゥと最後の力を振り絞る。一瞬相手の動きを止めることができたが、むしろ自分の力が抜ける感覚が襲ってきた。じわじわと距離が縮まり始める。くそ、・・・
無心に押し続ける、、 、 、 ぐっと覚悟を決めたその時
ドン、と大きくライオンの体が揺れた。体制を崩して手を話したようだ。首を振ると、そこには首に大きく傷をつけられた、ライオンが倒れていた。ドサッと音がして、その方向に駆け寄る。そしてそこには、片足を失った人がいた。
「・・・・」
「、、、はは、は、 、呑気な面してんなぁ、後ろ見ろやぁぁあ!」
後ろを振り返ると、大きな口を食いしばり跳躍する寸前のオスライオン。また、目のフチには雌ライオンに駆け寄る、一匹目の雌ライオンがいた。キレていた。完全にたてがみが逆だっているように見える。血管が浮き出、興奮状態の極地にいるように見える。ドンっッと声もなく飛び込んだオスライオンの速度は先程より遥かに早い。後ろに倒れ込もうとしたが、このままでは人間は殺される距離にいた。が、人間のほうがすごかった。やつは片足で体制を整え、矛を向け、オスライオンを矛で顔から受け止めたのだ。やつは矛を牙で砕こうとするが、勢いの付いた体は簡単に止まらず、砕けが矛ごと柄が体の中に侵入した。やつの口を塞ぐことができた。体にの買ったヤツの後ろ足から尻尾の方をくぐり抜け脱出し、ヤツの真横へ跳躍、馬蹴りを首元に御見舞した。矛が首に刺さったオスライオンはダメージを受けたようで、逃げていった。オスライオンも仲間も失った雌ライオンもまた、逃げていった。
「なんとかなったようだな、変なライオンくんよ」
「グルアァ」
言葉はわかるが、喋るのは難しい。ライオンの世界で育ったので、頭ではわかるようになっていても、口はついていかない。人間の出血が激しい。このままではもう時期意識を失うだろう。
「ん、、この出血は気にするなよ、すぐ止まるから」
無理を言うなと思うが、なんと10秒後には血が止まってしまった。
「え、病気はどうだって?俺はあんまり風邪は引かないんだ。」
理由のわからないことを言っているので無視をする。しばらくの間食料の面倒は見てやらないとダメそうだ。
「そうだな、しばらくは世話になる。俺の名前はルース。しがない旅人だ。お前は、、ただのライオンの変異ではないな。何者なんだ?」
「・・・グルアァ」
「はは、そうだな。喋れないよな、あと育てからライオンじゃこの周辺のことしか知らなそうだ。それじゃ、俺でもよく知ってるよ、ふふ。じゃあ、適当に”ガウ”とでもよぼうか」
「ガル」
「それじゃあ。ガウ、しばらくよろしく頼む。」
そうして、謎の人間との関わり会いが始まった。
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