第21話 雪山降りてリフランへ


 時空の穴を通ったとき、周囲がいきなり冬になった。

 男の娘サキュバスは、人間と比べて寒さには強いが、それでもカークからもらった半袖ジャケット一枚では震えが来る。

 振り向くと、時空の穴の向こうにはデーターセンター内部が見える。

 遠くにジョアンとカークが居るのも見えた。

 そして、その球の向こうに、ジョアンの宇宙艇がそびえて見えた。そのそばにはC国軍人たちがいるはずだ。

 僕らは彼らに見つからないように腰を低くしながらその場を離れる。


「穴が暗くなっていくよ」

 凛々子が振り向いて言った。

 カークが操作したのだろう。すぐにC国軍たちが騒ぎ出す。

 僕らは急いで山を降り始めた。 


 まずは此処が何処の山なのか知る必要がある。

 夕焼けのほうが西だから、今は西に向かって山を降りているということだ。

「凛々子さん、山の形とかで、今いる場所見当つきますか?」

 後ろからついてくる凛々子に訊いてみた。

 彼女もソラリムのゲームを長いことやっているのだ。


 後ろの凛々子が立ち止まるのが足音でわかった。

 振り向くと、凛々子が僕を見て言った。

「俺はいまリリーだ。さっきこっちで目覚めたよ。ところで、今どういう状況なんだ?」


 ということは、ソラリムで、いや300年後のソラリムでリリーが眠りに入り、300年前の凛々子の身体の中で目覚めたことになる。

 ややこしいなあ。

 僕は、時空の穴をふさぐために、その穴を通ってソラリムに来ていることを手短に説明した。


「300年前のソラリムだって? 俺も、俺の爺さんもまだ生まれる前じゃねえか。そんな事あるんだな。驚いた」

「それよりも、フリーマン大師に会いに行かないと行けないんですよ。今いるこの場所わかりますか?」

 周囲は徐々に暗くなってきた。早く山を降りないと遭難してしまう。

 リリーは周囲を見回して、頷いた。


「たぶんリフランの東側だな。あそこに明かりが見えるだろ。あれがリフランの街の灯りだよ」リリーが指差す方向に、微かに黄色い明かりが見えていた。

 街の向こうに小さな湖が見える。


「リフランって、盗賊ギルドの町ですか?」

 ソラリムのゲーム内の知識で訊いてみた。

「ああ。でも300年も前だったら俺の知ってる町とはだいぶ違ってるだろうけどな」

 言った後、先に立って斜面を降り始める。さっきまでよりも足取りが軽やかだった。

 僕もすぐに後を追う。雪深い斜面が、徐々に緩やかになり歩きやすくなっていった。

  

 寒い中でも汗ばむ頃、やっと平地に降りることができた。

 この辺は雪は積もっていない。気温も我慢できる程度に上がってきた。

 夜だから、周囲の色は感じられないが、ゲーム内では此処は紅葉のきれいな土地なのだ。


 リフランに着いたときは、すでに周囲は真っ暗になっていた。

 乾いた空に星が瞬いて、南北に流れる銀河が懐かしく思えた。

 このソラリムとサヨナラしたのは一ヶ月前。

 またこの地を歩けるなんて思ってもいなかった。


 街の門を通ろうとしたら、衛兵が僕らを遮るように立った。


「入門税を払ってもらおうか」

 横柄な態度でその衛兵が僕らを見下ろす。幸い衛兵は一人だ。

 僕はいいですよと気軽く答えて、門の横の空き地に誘い込む。

 そこでお尻をめくって見せた。


 魅了の術にかかった門兵が、僕のお尻にかぶりついてくる。

 五回の射精を速やかに終わらせたあと、彼の知識を吸収するために、お尻に指を入れて精液をつけてからそれをひと舐めした。

 更に眠り込んだ男の財布から現金をいくらか拝借した。

 僕らの任務が失敗すれば、このソラリムが消滅することもあるのだ。

 このくらいは許されることだろう。


「相変わらずだな」

 リリーが茶化す。そんなリリーと、このソラリムの地にいるのが嬉しかった。

「そうだ。お前の精液くれよ。ここの女市長に若返りの薬として売りつけるから。その金で雷電の鞭を買いたいんだ」

 リリーの提案は納得できる。男の娘サキュバスの精液は、10年若返りの薬なのだ。

 それを、最近年取って身体の自由が効かなくなってきたここの市長に売れば、1000Gにはなるだろう。

 その金でここの武器屋にある雷電の鞭が買えれば、リリーの戦闘力はバクアゲだし、僕らの任務もやりやすくなるのだ。早速衛兵の知識が役にたった。


 じゃあ、いいですよ、と僕はローブをめくって彼女の眼の前にちっこいペニスをさらした。

 リリーの手で絞られて、空のペットボトルに思い切り発射した僕は、倦怠感でしゃがみ込んでしまう。

 

「もう一度やるぞ。ここの市長年寄りだから、10年分じゃ満足しないだろ。二回分で20年くらい若返えらせないとな」

 しゃがんだ僕の股間に、リリーが追い打ちをかける。

 ここの市長の外見が、衛兵からの知識で浮かび上がるから、拒否もできないけど。

「でもあんまり若返ったら、別人と間違われるんじゃないかな」

 ひとこと反論するが、リリーの手は止まらない。

 ペットボトルの中に僕は二度目の射精をさせられたのだった。


 これは早速、追加で誰かのエネルギーをもらわないといけないな。

 カークにもらった腕時計を確認する。

 核攻撃まであと45時間ほどになっていた。



 

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