第22話 ユン少佐と再開



 リリーが市長宅にセールスに行っている間、僕は酒場で一休みしながら適当な男を物色している。細長い暖炉で焚き火の爆ぜる音と、暖かな空気に、思わずまぶたが重くなるが、今は一分でも惜しいときだ。

 空爆まであと45時間。ジョアンがミサイルを迎撃してくれることにはなっているが、もしもそれが失敗して向こうの世界の時空の穴が破壊されたら、こちらのソラリムの世界は消滅してしまうのだから。


「あいつら一体なんだったんだ? 変な飛び道具持ってたよな。俺の鎧に傷がついちまったよ」

「ああ。魔術師がとっさに魔法かけてくれなかったら、こっちにも怪我人が出てたぞ」

 大声で話しながら酒場に入ってきたのは、仕事終わりの衛兵たちのようだった。一体何があったのだろう。

 別にどうでもいいが、その二人のどちらかの精をもらおうと、話しかけてみた。


「衛兵さん。どうかしたんですか」

 僕がにこやかに近づくと、僕を認めた衛兵は二人ともでれっとにやけて僕を見た。

 彼らの性欲メーターがぐんと上がる。

 汗の匂いにフェロモンの匂いが混じるのがわかった。


「いやな。さっき町の門でひと悶着あったんだ。変な格好した奴らが無理やり入ろうとしたから、衛兵が止めると武器で脅しをかけてきたんだ。近くに居た魔道士がとっさに睡眠魔法をかけて眠らせたから誰も怪我しなかったがな。今はそいつら地下の牢に入れてある」

 その男は馴れ馴れしく僕の腰を抱いて引き寄せた。

「変な格好って、どんなですか?」

 僕が聞くと、彼の説明した姿は先程見たC国軍兵士のものに酷似していた。

 あの兵士たちもこの町に降りてきたのか。


 時空の穴が向こうから閉じられてしまって、帰れなくなった彼らはしかたなく降りてきたのだろう。そのままにしておくか少し迷った。

 理由わけもわからず異世界に来てしまった彼らに少しだけ同情してしまう。


「その変な奴ら、もしかしたら僕の知り合いかもしれないんです。会わせてもらえませんか?」

 僕が聞くと、一人は頷いたが、もう一人の衛兵は難しい顔をした。

「一般人を罪人に会わせることはできないなあ」

 渋い顔をする衛兵の手を取り、僕のお尻を触らせる。

 途端にその男は相好を崩して僕のお尻を揉みだした。

 別の一人が呆れた顔をした。


「会わせてくれたら、三人で楽しいことしたいなあ」

 僕のその言葉が決め手になって、三人で地下牢に行くことになった。

 酒場を出て三人で首長の城に向かう。

 こじんまりとした街の内部は、池を囲むように桟橋が飛び出して、そこが通路になっている。30メートルほど歩くと、石造りの城の入口が見えてきた。

 その正門横の扉を開いて、地下に続く階段を降りる。

 糞尿の匂いが鼻についた。そして汗と血の匂いも。

 地下の湿気の中にいくつか牢が並ぶ。

 その一つに数人の兵士が囚われていた。

 まだみんな眠ったままだ。ユン少佐の顔を見つけた。


 まずは二人の衛兵を眠らせるか。でもいっぺんに二人に魅了の術をかけると乱闘になってしまう。今ここで騒ぎを起こすのはまずい。

 でも、相手が二人だけならやりようがあるのだ。


「お口とお尻でいい事してあげますよ」

 僕は一人の衛兵の前にひざまずく。もう一人は僕の後ろに回った。

 その状態で前の男の股間を解きながら、後ろの男にお尻を拝ませてやる。

 魅了の術にかかった男が、僕のお尻にキスし始める。


「おいおい、あんまりがっつくなよ」

 僕の前の衛兵がそう言って笑った。

 余裕を見せているその衛兵のものをフェラして気持ちよくさせてやる。

 後ろの衛兵が僕の腰を両手で掴んで、腰を入れてくる。

 彼の肉棒をお尻の力具合で速やかに射精に導く。


「おいおい、もう一発目発射かよ。随分溜め込んでいたんだな」

 僕の前の衛兵は冷やかすが、彼ももうすぐのようだ。

 いきそうになるのを焦らして口を離す。すると彼のが大きく息を吐いた。

「お前、すごいテクニシャンだな。かわいい顔してこっちはプロみたいだな」

 そう言って見下ろす男に、これくらいしか取り得ないですから、と答えてやる。


 更に数分後には、後ろの男は五回目の発射を終えて、カクンと眠りに入る。

 前の衛兵に不審がられる前に、僕は彼にお尻を見せて、魅了した。

 

 二人分の精をたっぷりもらって、サキュバスの食事は満腹終了だ。

 さっき二回搾り取られた分以上に回復できた。


 さて、それではと牢に向き直ると、ユン少佐と目があった。

 やっとお目覚めのようだ。

「お、おまえ。あの時の男の娘サキュバスじゃないか」

 驚きの声を彼女が上げた。

 僕は彼女の牢の前に進んだ。

「帰るに帰れなくなって困ってるんでしょ。ここがどこかわかりますか?」

 僕が聞くと、お前にはわかるのか、と焦った声で少佐が叫んだ。


 僕らのやり取りで、他の兵士たちも目を覚まし始めたようだ。

 知った顔の女性兵士も一人いた。確かワンとか呼ばれていたかな。

 それ以外は五人の男の兵士がいるだけだ。みんな、銃器は取り上げられて丸腰だった。


「ソラリム‐プロジェクトって聞いたことないですか?」

 アメリカの情報員だったカークが言っていた言葉を聞いてみた。


「ゲームの話か? オンラインゲーム。そういえば、そのゲーム内の男の娘サキュバスがお前そっくりなんだったな。実際お前はサキュバスのようだし。どうなっている?」

 彼女の顔には焦りと、さらに疲労の色が見て取れた。

 雪山で遭難しそうになりながら、やっとこの町まで降りてきたところだから。


「僕も詳しいことは知らないんですけど、アメリカの情報員から聞いた話では、この日本で時空の穴を研究していたようなんです」


「時空の穴だと。それが、あのデータセンターにあったあれのか?」

「そうですよたぶん。その穴はこの世界、ソラリムに繋がっていたわけです」

 僕が答えるとユン少佐は信じられないと首を振った。


「帰りたいのなら、協力してもいいですよ。僕の邪魔をしないのなら」

 C国軍は今まで敵対関係にあったわけだけど、言ってみれば同じ地球人として、このソラリムでは仲間とも思えるのだ。


「この世界から出れるのか? 元の世界に帰れるのか?」

 ユン少佐が絶望の中で、少しの希望を認めたような目で僕を見る。

「僕も帰る必要がありますからね。六時間毎に五分間だけあの穴を開くことになっています。次は四時間後です。今から戻れば間に合うでしょう」

 ユン少佐は腕時計で確認する。

「言っておきますが、穴の向こうには僕の仲間が見張っています。武器は持たずに、彼らの指示に従ってください」

「解った。言う通りにすると約束する」

 彼女は素直に頷いた。

 

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