第7話勉強合宿!

「x=-1,3と、、、」


俺と神崎、桐谷は今日も図書室でテスト勉強をしていた。


もう、残り一週間を切っているので、三人とも一層気合を入れて取り組んでいる。


俺の方も、はじめは定期テストに消極的だったが、赤点を取らないよう頑張っている神崎を見ていたら、自然と前向きな気持ちになれた。


いつもは40位前後で落ち着いていたが、今回の俺は一味違う。やるからには学年一位を目指したい。


ちなみに、桐谷は学年で15位以内をキープしているらしい。俺より高いのが悔しい。




午後六時になると学校の図書室が閉まるので、三人で帰宅する。


これが、ここ最近のルーティーンだった。


しかし。


「今日さ、うち親いないから泊っていきなよ。勉強合宿!」


突然、神崎が言った。桐谷を誘ったのだろう。明日は土曜日で学校はないからな。


「それいいわね、紗代の家行くのは初めてだから緊張しちゃう」


なんと微笑ましい、女子高生二人の会話なのだろう。


我関せずと、俺は一人でスマホを見て歩いていると、突如神崎が残酷な言葉を言い放った。


「あ、もっちーもくるよね?」


「!?いやいやいや、俺男だぞ!?」


「まあ、もっちーは私に手出す度胸とかないだろうし、大丈夫かな」


「ええ、、、?桐谷はどうなんだよ、俺がいたら嫌だろ」


「もちろん不本意ではあるけど、家主の紗代が誘うなら仕方ないわ」


おいおいおい、まじかよ......こいつら無警戒すぎるだろ。俺が肉食系のチャラい男だったら、余裕で食われてるぞ!?


とはいえ、女子高生二人と一つ屋根の下で寝られる日は今後の長い人生の中でも、二度とないことかもしれない。しかも、内一人は学年でもトップレベルの美少女ときた。


なら、答えは一つだ。


「俺も行かせてください」


「やった~!」


神崎は嬉しそうに飛び跳ね、桐谷に何やらひそひそと耳打ちしている。


桐谷は、よかったわね、と俺に言ったにしては声量の小さい声で言った。


ま、まあ、勉強合宿だし。何も起きないだろう。事案になったら人生終了だ。


一旦、解散してそれぞれ着替え等準備してから神崎の家に集合することに決めた。




俺は家に帰って親に友達の家に泊まるとだけ伝え、再び家を出た。


間違ったことは言ってない。だって、俺と神崎はまだ友達なのだから。


俺は桐谷と待ち合わせ、一緒に神崎の家に行くことにした。理由は俺一人で行くのは緊張で心臓が爆発しそうになるからだ。




学校の最寄りで集まった俺と桐谷は、適当なお菓子を買って電車に乗った。


「なあ、本当に俺が行ってもいいのだろうか」


俺は不安になって、桐谷に聞かずにはいられなかった。


「まあ、いいか悪いかで言えば、ダメでしょうね」


「ですよね、、、」


いけないことをしようとしているのだと、改めて自覚した。


健全な高校生の付き合いではないだろう。


むしろ、俺が普段憎しみを抱いてきたリア充と同じことをしているのだ。


自己嫌悪に陥ろうとしている俺に、桐谷がでも、と続ける。


「でも、好きでもない男を、女の子は家に上げたりしないはずよ」


「そういうもんか、、、?」


「そういうもんよ」


「じゃあ、神崎は本当に俺のこと好きなんじゃ」


「そうやって調子に乗るのは良くないわね」


「肝に銘じておきます。師匠」


誰が師匠よ、と軽くチョップを受けた。


そんなことをしていると、神崎の住んでいる家の最寄りである××駅に到着した。


すると、神崎が改札の向こうで迎えに来てくれていた。


ああ、私服も似合ってて可愛いなあ。


にやけないようポーカーフェイスを意識して、俺は神崎の家へと招かれた。


「ようこそ、わが家へ!」


「本当に一人なんだな。親御さんは大丈夫か?」


「うん。友達とお泊りするって言ったら、いいよって言ってくれたよ」


「俺と全く同じ言い方だな」


「じゃ、勉強始めるわよ。何のためのお泊りか、忘れてないわよね」


と、桐谷がカバンから教科書と筆箱を取り出して言った。


「そうだね。頑張るぞー!」


女子二人の熱量についていけない俺は、ひっそりと英単語を暗記することにした。




一時間後。時計は八時を指していた。


ーーーグー。

誰かの腹の音が鳴ったようだ。赤面の具合から察するに神崎だろう。


「なあ、飯どうする?」


「私が作るよ!」


神崎が勢いよく挙手して言った。


「私も手伝うわ」


「俺も手伝う」


「もっちーは勉強してなよ。料理できないでしょ?」


図星だった。確かに料理は全くできないが、手伝うくらいならできるんじゃないか。


そう思って言おうとしたが、できないやつが無理に手伝っても邪魔になると判断し、おとなしく勉強することにした。


「では、お言葉に甘えて、、、」




「できたよー」


神崎と桐谷は、そう言って料理を運んできてくれた。


「お、オムライスか」


とても綺麗な仕上がりとなっていた。ナイフでオムレツ部分を割れば、中からとろっと卵が出てきそうな素晴らしいオムライスだ。


何より、JKが俺のために作ってくれたオムライスというだけで、それは特別な価値を持つ。


「いただきまーす」


三人で食卓を囲み、オムライスを食べた。


「二人とも料理上手なんだな。今まで食べたオムライスで一番うまかったぞ」


「それは褒めすぎ。オムライスくらい、もっちーも作れた方がいいよ?」


と、褒めたつもりが逆に心配されてしまった。たまには、自分で料理してみよう。


「食べ終わったなら、お風呂入ってきなよ」


忘れていた、風呂の存在を。まさかクラスの女子と同じ湯船に浸かることになるとは。もちろん一緒にじゃないけど。


「え、俺からでいいのか?」


「うん。もちろんだよ」


「私たちの入った後の残り湯をどうこうされるのが怖いのよ」


急に桐谷が刺してきた。クリーンヒットだ。


「わ、私はそんなこと思ってないからね!?もっちー!」


「先に入らせていただきます、、、」




ーーー続く。

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