第12話



 (夢‥‥? これは夢?)

 (‥‥そうなのね)

 (だってお母さんがいるのだもの)



 どうして私が、お前に行かないでくれと言えないのかい?

 私は止めるよ。自分の子の破滅が見えているというのに

 行かないでくれと言わない母親はいないだろう。



 (‥‥そうだ。母は。家を出ようとしていた私に、こう言って涙を流しながら止めた)



『ああ

 地の生み出す豊かなものから遠く離れた所

 この後、お前はそこに住む

 天の露からも遠く隔てられて。

 お前は幻を頼って生きてゆく。

 しかしお前は希望を奪われる。

 いつの日かお前は嫉妬と復讐心に駆られて

 自分の首からくびきを振り落とす‥‥‥』



 (母は信心深い人だった。当時の私は迷信深いのだと思っていたけれど‥‥。時おり、こうして予言めいたものを受け取ることがあった)



 見えるよ。‥‥ああ、悲しい結末だ。

 これは回避できない運命なのかい? ダメなのかい?

 こんなにも純粋で優しい子なのに。

 これではあまりにもこの子が可哀想過ぎる。

 ああダメだよ。私が、そんなお前の側にいてやれないなんて‥‥。



 (そして母はこう祈ってくれた)



 これは私は持っていた祝福。

 お前が結婚する時に贈ろうとしていたものだよ。



『娘よ。私の愛しい宝物。お前に祝福させておくれ

 ああ、私の子の香りは

 主が祝福された野の香りのようだ

 どうか、神が

 天の露と地の生み出す豊かなもの

 穀物とぶどう酒を

 お前に与えて下さるように


 お前からは多くの子が生まれ

 多くの孫たちにお前は囲まれることになるだろう

 主の御心で結ばれたお前たちは

 生涯、互いを慈しみ合い

 かけがえのない一対の伴侶になるだろう

 娘よ、私の愛しい子よ。幸せにおなり』



 (母は祝福を口にした後も、なおも私が出て行くのを止めたが、私の決意が固いと見て、諦めて最後にこう言った)



 もしお前とその人が幸せになるのなら、この祝福はお前のものだ。

 しかし、お前の愛した男が、お前以外の女を愛すると言った時、その女が正しく善良な娘だったのなら、このお前の祝福をその娘に渡しておやり。

 お前は納得しないだろうが、恋が報われる為にはもうそれしかないんだよ。

 身がちぎられる思いをするかもしれないが。いいかい。それでもお前は愛することを選ぶんだよ。


 大丈夫。お前がどんなに遠くの場所へ行ってしまっても

 私はここでお前のために祈っているから、お前は一人ではないよ。

 忘れないでおくれ。私はいつだってお前を愛しているよ。

 神様もお前を愛していて‥‥。


 ‥‥そうだね。次に言うこれも決して忘れないでおくれ。

 たとえ呪いの定めが示された後でも、お前の心次第で運命は変えられるということを。

 いいかい。お前は自分の運命を選び取ることができるんだよ。


 祈りなさい。–––––私の愛しい娘。












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