依頼その3 中編①
榴ヶ谷高校、食堂に拓篤はいた。
拓篤と、加山と、伏見と、貴城のいつもの4人と、そしてなぜか澤村泰輝が。
−−思った。
拓篤は思った。
なぜ、澤村泰輝が俺らと一緒に食べるのか?と。貴方いつも、三石尽八とか加藤和成・佐浦弥彦とかの真面目男子組で、ご飯食べてるでしょ!?と思った。
拓篤・伏見・特に加山が気まずそうだった。というか、気まずかった。
特に加山が。大事なことなので続けてね!リピートアフターミー、特に加山が澤村と面と向かって座ってるから気まずそうだった!ヘイ、セイ!
−−OK、OK。一旦落ち着こうぜ?
心の中が非常にうるさいことになっている拓篤をよそに澤村が口を開いた。
何か、説教されるんじゃないか?と伏見・特に加山はびくびくしていたため、非常にビビった。
「加山ってさ。なんでいつもグラビア誌学校に持ち込んでんの?スマホで見れば良いのに。」
拍子抜けである。
加山はもちろん、拓篤・伏見−−めずらしいことに、貴城も驚いていた。
同時にこうも思った。
−−あんたみたいな真面目な人が、グラビア誌とかっていう単語使っちゃダメだって!と。
加山が変に得意げな顔になって言った。
「紙の良さがあるんだよ、紙には紙の良さってやつが!」
「ふーん。え、何?切り抜き的な」
「え、まあそれもあるわ」
心の友見つけちゃった!みたいなテンションになっている加山に拓篤は、告げる。
本人が、TPOという単語を忘れていそうだから、告げる。
「加山。ここ食堂だから。そゆ話題話すのやめようぜ」
「え?−−あ」
今更、である。
加山は今やっと、自分を見る女子たちの目が冷たいことに気づいた。
−−いたたまれないが、これに関してはフォローする気も失せる。
「お疲れ様」
とだけ告げておく。
放っとくのもひどいからだ。
それでは、みなさまお待ちかね。定食Aセットを食べようと割り箸を割ったその時だった。
うるさい奴が来たのは。
「拓篤ちー!みっっけぇぇぇっ!イェイ、やったね!」
振り向いた。
あまりにも、うるさかったのと朝うるさかった奴の声とあまりにも、似ていたから振り向いた。
そこにいたのは、高羽優希だった。
−−は?
拓篤は思った。
なんでこのバカが?と、続いて思った。
しかもなんか、後ろに霧峰いるし。とも思った。
面倒臭い予感しか、しなかった。
そしてなぜか。
悪い予感は、いつだって当たるのがお約束というやつなのである。
「昼食中申し訳ないんっすけどぉ、拓篤ちーのこと。借りてくのよおん」
−−え。
拓篤は固まったし、絶対に行かないとも思った。というか、そう決意した。
「ごめんね、本当に拓篤くんの力がいるの」
霧峰のその一言で、その決意は崩れ去ることになるのだが…。
あれ?と拓篤は思った。
「ちょっ、一回霧峰だけ来て」
呼び出しだった。
「は?」
「いいから、一回!」
拓篤は理解ができないという様子の霧峰を連れて、一旦食堂の外に出た。
「わーお、何何〜?密会的な〜?やぁらしぃー!」
後ろで、そんなことあのバカが言っているが、無視だ。
無視こそが、最善の選択だった。
「あの、拓篤くん一体何を…」
怯えた口調で、霧峰は尋ねた。
「…あのさぁ」
苛ついている口調だった。
自分でも、びっくりするくらいには苛ついた口調をしていた。
「霧峰も昼飯食べてた中で、あのバカは来たの?」
拓篤はチラッと高羽を見た。
高羽は拓篤の目線に気付き、ピース。
−−ピースじゃねえよ、バカじゃねえの?そう言いたくなる気持ちを抑え、拓篤は霧峰に面と向かった。
「うん」
−−だと思った!
高羽を殴りたくなる衝動を抑えながら、拓篤は次の質問をした。質問というより、八つ当たり?の方が正しいのだろうか?というか、怒った…?という方が正しいのだろうか。
まあ、とにかく。
強めの口調で霧峰のことを、詰めた。
「…あのさあ、なんとも思わないわけ?あのバカに対してさぁ。ガチで、なんとも思わないわけ?」
「…ま。戸惑ったりはするけど」
怯えた様子で、霧峰はそう答えた。
「霧峰、お前さ。優しすぎるんだよ、つか甘いっつーかさ。」
「…は、はぁ。そうですか」
「『そうですか』じゃないって。何、他人事みたいにしてんの。とにかくさ?嫌なことに対しては、嫌だって言っていいし、あいつに怒ったって良いんだよ。」
かなり、苛ついていた。
拓篤はため息を吐いた。
別に、霧峰が悪いというわけではない。これに関しては、霧峰は被害者だ。
霧峰が口を開いた。
「…依頼内容がさ。私の友達なんっすよ…。」
…それは、断れないわ。
拓篤は急に罪悪感に、全身包まれたような気がした。
「ってゆー訳だからぁっ!手伝ってちょんまげ、拓篤ちー」
「うわっ」
いつの間にか、隣に高羽優希がいたことを拓篤は気づかなかった。
本当にいつの間に、この男は隣いたのだろうか?というか、どこから聞いていたのだろうか?聞かれていた箇所によっては、かなりまずいが…。
「と、言うわけでぇっ!旧校舎に生きんしょーう!」
拓篤は争おうと思っていた。
こいつに付き合わされて、学校生活がおじゃんになるのはごめんだな。と思っていた。
今、巻き込まれたら抜け出せなくなるな。とも思った。
−−だから思い切った。
旧校舎に行こうと前を歩く、高羽と拓篤のことを心配そうに見つめながら先を行く霧峰に、ついていかなかった。
「拓篤ちー?どったん?」
高羽が、そう聞いた。
「…俺さあ」
緊張からか。上手く声が出せなかった。
「どうしたんだっちょ?」
高羽がいちいちうるさいな、と拓篤は思った。
拓篤はもう一度言った。
「俺さあ。もうお前に付き合ってらんねーわ」
高羽は、顔を顰めた。
霧峰もびっくりした顔をしていた。
「…つまり?」
「だから俺便利屋やめるから。お前みたいな輩と付き合ったって、メリット俺にはねーから。」
切り捨てた。
拓篤は、バッサリと切り捨てた。
面倒臭いながらも楽しいと感じていた、感じ始めているような気がしたのに。
それを。
新しい刺激を、拓篤は今までのポジションを守るために切り捨てた。
拓篤は、戻るのだろう。
自身を陽キャだと偽り、心の中に空虚さが残ったままの生活に。
戻っていくのだろう。
だが、その間にもあの2人は仲を深めていき、楽しい毎日を送るのかもしれない。
それがなんだ。
なんだというのだ、と拓篤は半ば開き直っていた。
拓篤と、高羽・霧峰の2人とは完全に別れてしまったのだ。
こうして。
大東寺高校の昼休みは、後味の悪さを抱えながら終了した。
校舎にチャイムが鳴り響いた。
旧校舎・三階にある多目的室。
そこは物置部屋になっていて、やはり少し埃臭かった。
「霧たんさあ」
高羽が、ボロボロになっているソファに、くつろぎながら座っている。
霧峰は、相変わらずガラホを見ている。
板倉愛菜からのメッセージ。これは、一体なんなのだろうか?
「霧たーんっ!聞こえてるのかにゃ?聞こえてにゃいのかにゃ?返答よろぴーくね!」
−−わかりました、わかりました。
今答えますよ!と内心少し苛つきながら、霧峰は告げる。
「聞こえてるよー、何どうしたのー?」
「あんさぁ。」
高羽が気だるげに言った。
「板倉愛菜さんってどーゆー子?何で相談されたのかっちゅーワケとか、わかりますか?」
霧峰は、昔を思い出すかのように言った。
「いつも、明るいよ。何だろ、クラスですぐにみんなの中心になるタイプ。明るくて、優しくて、積極性もあるし。」
実際、霧峰にとって板倉愛菜は、親友であり、恩人だった。
かつていじめられていた自分を、助けてくれたのだ。周りに馴染めなかった自分に、声をかけるのが当たり前…とでも言うようなノリで、話しかけてくれた。
それが、どれだけ嬉しかったか…。
「へー、霧たんと仲良いから、物静か系なのかにゃって思ってたなりー」
高羽の疑問に、霧峰は答えた。
悲哀がその目に映っていたのを、高羽は見逃さない。
「…うん、昔は明るかったんだよ。高1の秋あたり…だったかな。大体そんくらいに、何かあったんだろうけど、1人になること増えてきて…。そんで2年になってから、不登校。でも、今日は来たみたい。」
霧峰はわからなかった。
なぜ、板倉愛菜が今日来たのか、とか。自分に相談があるとは…どうゆうことなのか、とか。
疑問はたくさん出てくる訳である。降って湧いてくるのである。困ったことに。
思わず、ため息を吐いた。
−−なんか、昼の拓篤くんの荒れ具合の影響も、あるにはあるのだろう。疲れた。
「霧たん、板倉さんってさ今いるんっしょ?学校に。あっ、それともなんか部活とか?」
「やってなかったよ、無所属。多分まだ帰ってないと思う。」
多分だよ、多分。と霧峰は付け加えた。
「おっし!」
高羽はソファから、立ち上がった。
寝そべっていた上半身を、腹筋を使って起こした。
「そうなりゃあ、もうあとは、決まりよ」
高羽は、生き生きしていた。
「何が?」
「…何がってそりゃあ−−」
決まってるでしょう?お姉様とでも、言うような口調だった。
「A組に板倉さんがいるっていう確率にかけて、A組に凸るのさ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます