依頼その1 後編 霧峰を安心させよう

 昼休み、拓篤陸介は1人廊下を歩いていた。相変わらず、この学校は休み時間になると、騒がしい。 

 迂闊だった、と拓篤陸介は思っていた。

 −−俺としたことが、あんなにあっさりと。口から、ぽろっと悩みを言うだなんて−−。

 くそっ。

 「あっ拓篤!霧峰さんどーだったんだよ」

 表面上は、仲良くしている奴の1人・貴城成彦が。

 爽やかで、弓道部の主将で、いい奴。というキャラをしている。実際、かなり優しい性格だからか、女子にはかなりモテているらしい。

 「…大丈夫そうだった。」

 少し、俯いてからそう言った。

 この時の拓篤は、飾っていなかった−−ように思える。

 なぜかって?さあ、何でなんでしょうねえ?

 「そう。そんで、1人だけで戻ってきたのか?」

 「いや、荷物取りにさ。」

 「霧峰さんの?」

 「そ。」

 そこで、貴城とは別れた。

 拓篤は後ろにかけられていた霧峰の、リュックを取り教科書を入れた。

 ずっしりとした重さだ。

 拓篤は、何も言わず涼しい顔で、エレベーターホールまで行った。

 −−さすがは、私立高校。設備はかなり、充実していますこと。

 エレベーターは、四階に着いた。

 そういえば、昼は購買がすごいんだっけかー、と拓篤は思いながら、エレベーターに入ろうとした。 

 が、人が多い。

 ぎゅうぎゅう詰めだ。

 これでは、とても乗れたものじゃない。

 −−ったりぃ。

 心の中で、また毒を吐いた。

 仕方なく拓篤陸介は、階段で一階の保健室まで向かった。

 保健室に、入った。

 扉を静かに開けて。−−寝ているのかな?と思っていたが、どうやら。

 違うらしい。

 話し声が、聞こえた。

 「−−私、便利屋に入るよ」

 少し、強がっているかのような口調だった。

 拓篤は意外だった。

 霧峰は、絶対に入らないと思っていたから。まあ、それは自分もではあるが。

 −−今、のこのこと出ていくのは、まずい。拓篤の直感が、そう言っていた。

 拓篤は、薬品が入っている棚に、背中を預けた。

 「まじっすかあ!?」

 やはり、高羽はうるさかった。

 −−てめぇ、少しは静かにしやがれ。まあ、発狂した俺が言うのも何だけれど。

 そうですよ、お兄さん。自分の方が、うるさかったのに何言っちゃってるんですう?

 自嘲気味な、笑みをした。

 というか拓篤は、自分を偽り、高い地位を得ていた代わりに笑顔が、自然にできなくなっていた。

 少し、捻くれているというか…。

 拓篤はもう少し、2人には姿を見せないで2人の会話を、聞いていた。

 「どして?どしてー?」

 「高羽くん…が、なんか楽しそうだったし。こんなこと言うのも、アレ…だけどさ、高羽くんと、話せて…まあ、少しうざったいけど。うざったかったけど、なんか…少し…楽しかったから。」

 霧峰は、恥ずかしそうに笑っていた。

 それが癪に障った。

 とても、癪に障った。

 −−高羽なんてやつに、そんな顔見せるなよ。という思いさえあった。

 だが。

 拓篤は、まだ様子を伺っていた。

 「うざったいってのは、まあ確かに傷ついちゃっつけど。やったぜいこれで、ゲームクリアだ。」

 そして、ガッツポーズ。

 −−なんだ、てめえ小学生のガキか何かか?

 霧峰は、呆れているのだろうと思っていた。だが、何ということでしょう!

 笑っていた。

 楽しそうに、笑っていた。

 −−あ。

 拓篤が、少しショックを受けたと同時に、霧峰と目が合った。

 「拓篤くん」

 「んにゃ?」

 ベッドに向いて座っていた高羽が、こちらを見る。

 「よ、よう」

 少し、気まずかった。

 −−さあて、どうしようか。と拓篤が頭を抱えたと同時に高羽が、拓篤に話しかけた。

 「拓篤ちーはさぁ、どうするんにゃ?入るっちゃ?便利屋」

 相変わらずすぎるハイテンションだ。

 −−語尾がなんか、行ったり来たりしてるぞ。お前と拓篤は、思ってから言った。

 せっかく霧峰に近づけたのだ。このチャンスを逃すわけには、いかない。

 −−それに、俺の悩みも叶っちまったからな。嫌だし、認めたかねーけど。

 拓篤は、口を開いた。

 「入るよ、便利屋にさ」

 嘘っぽい笑いを浮かべながら。

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