第4話 心当たりはなくてもそう言われるとそんな気がしてくる不思議

ゴブリンの群れが消え去った街は歓喜に包まれた。


「やったぞ!」 「街が救われた!」


人々は抱き合い、新たに誕生した英雄を一目見ようと広場へと殺到していく。

その中心でボブは戸惑いながらも、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。


「英雄様だ!」 「ボブ卿、万歳!」


彼の周りを囲む人々は、賞賛の言葉を浴びせかけてくる。




ボブは心当たりが一つもない。


ものすごい速度で景色が変わったと思ったら、あれだけいたモンスターが全滅していた。

それにもかかわらず、「そうか、俺は英雄なのかも?」とでも言いたげな顔で、どこか浮かれていた。

彼は流されやすかった。


幸か不幸か、タロウがボブを投げ飛ばした瞬間を見た者は誰もいなかったようだ。

そのため、ボブは英雄として祭り上げられ、その場にいる誰一人として、この状況を疑う者はいなかった。


タロウは遠巻きにその光景を眺め、深くため息をついた。

このままボブが英雄としてチヤホヤされるだけなら、平和を愛する僕としてはそれで構わない。


だが、今回のゴブリンの騒動がこれで終わるとは思えなかった。


おそらく、森の奥にゴブリンの集落ができているはずだ。

ギルドや兵士たちが調査に向かうとなれば、当然、新しく誕生した「英雄」が駆り出されることになるだろう。


(ボブはあっと言う間にモンスターの餌食だ……)


その想像に、タロウは頭を抱えた。

「どうしたものか……」 彼は再び、深く深いため息をついた。


このまま放っておけば、ボブは死ぬ。

だが、僕が真実を告げれば、平和な日常が壊れてしまうかもしれない。


タロウは自分の行動が招いた、あまりにも厄介な事態に、ただただ頭を悩ませるしかなかった。

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