恋心よ死んでくれ

@Amet

私の菫


叶わないのならばいっその事、心なんて壊れてしまえばいいのに。そうしたら悲しみも痛みも感じないでしょう?


ガラス玉のような透き通った瞳、君の瞳と目が合って私は君に恋をした。まるで人の心を見透かしているのではないかと疑いたくなるほど、クリアで綺麗なブルーグレーの瞳に私はどう映っていたのだろう。


王を失った王国は廃れ、輝きを失った。古い伝統に縛られた窮屈な社会で民たちは奮闘し、新たな光を手にするため躍動した。彼らは喜びを得られたのだろうか。


夢は夢で終わってくれればいいのに、現実へと続いてしまった。恋の温度はいくらだろう。恋に焦がれて紅蓮の炎に身を焦がすか、それとも灰色で冷たい海に溺れるのか。息が詰まり、胸が痛い。


いい人というのは、自分にとって都合のいい人だ。だが、自分がこの人がいいと思えばそれもまたいい人となり得る。人は他人に期待する、自分にも可能性があると信じ、あるいは思い込ませてでも前へ前へと進みたがる。貪欲な生き物だ。


痛みさえも試練なのか。それを超えれば楽になれるか。超えてみなければ分からない。だからきっと進むのだろう。キラキラと光る星は他の星々を霞ませる。己が崇める1等輝く光を追い求めて彷徨うのだ。標もなく、手元に灯りもない。ただ輝く何かを見上げて足掻くのである。


無邪気な心、そんなものすぐに打ち砕かれるというのに、慈しみ、愛おしく守ろうと必死なのだ。他に手折られぬよう、胸元に抱きしめようやっと時を凌ぐ。


大切に大切に、今日もまた君を想う。



私の菫、白い花弁が幸福を掴むその日まで。


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