第5話 青年のそれ
アキヒコは、よかったら・・・と近くの椅子を差し出しながら悠太との会話を止めないように目で促した。
それに気づいた悠太も軽く会釈して椅子に腰かける。
「自分、家族と仲良くて。特にばあちゃんっ子なんです。」とまた話し出す悠太の顔はとても自然だ。
家族仲が良いことを堂々と発信し、『友達のような関係です』なんていう親子のインタビューを見かけると、親は親であり、それ以上でも以下でもなかったアキヒコは不思議な感覚に包まれたものだ。
ただ、今目の前にいる青年のそれは何の違和感もない。
「だから、正直一人暮らしも寂しいんですけど、ばあちゃんのケガも心配だし、家には余分な部屋もないので」と悠太は続ける。
「まだ妹も中学生なんで、順番的には自分ですよね。いずれ仕事が落ち着いたら家を出ることにはなってたんですが。急だとやっぱり慌てちゃいますね」
「妹さんが!?いらっしゃるんですね」と悠太の話をじっくり聞いていたアキヒコはてっきり一人っ子や末っ子のイメージをしていただけに驚きを隠しきれない調子で口をはさんだ。
それを聞いた悠太もなぜ驚くんだろうと一瞬訝しげな表情を浮かべながらさらに続けた。
「家探しって難しいですね。自分、就職して一人前になったかなぁと思ってたんですが、正直1日で何も進展しなかったです」と膝に手をやり肩を落とした。
うん、やっぱり弟気質。
いや、兄妹という『長男長女』なんてのは一人っ子と変わらないのだろう。
アキヒコは勝手な持論に1人納得し、一呼吸した。
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