第9話

どうも、村人です。

今回は要塞都市ビルギッツという町にやって来ました。

この町はかなり新しめな町で魔王軍との抗争の最前線の基地として作られました。そのため、町の検問もかなり厳しくここに来るのも一苦労でした。

俺からしたら絶対に住みたくないですね。

まあ、そのようなことは置いておいて。

今回も勇者さん達と出会いました。

今回は

勇者

武道家

賢者

僧侶

医者

武士の女性

旅人

軽戦士

ピンク髪の女性の近衛兵

黒髪の男性の近衛兵

騎士の男性がいました。

前回見た時からは一人消えていますね。実は今回は前回見た時からかなり時間がかかっていたのですが一人しか人数は減っていませんでした。勇者パーティは一応人間にとっての希望なので人が減っていないのはいいことだとは思います。

実は、俺がしばらく勇者と合わなかった間に魔王軍の四天王と呼ばれる方達は二人が殺されており、その中には魔法使いさん達を殺した四天王も含まれています。これでいよいよ旅も大詰めに来ている感じがしますね。

そんなこんなでここまで来ると見に行くのも人が多すぎて難しくなってきましたが広場に賢者さんと軽戦士くんの二人が誰にも絡まれていないのを発見しました。

…あの、いくら賢者さんの話が長いからってなんで見事に空いちゃったんですか。

避けようとするのも気が引ける、というかもう近づいてきてしまったので避けることも出来ないです。

後から、周囲の人が避けていた理由がただただ話しかけるには恐れ多かったというのが判明して、さらに周りの幸運を呪うことになるのですが、それはここに記すべきではないでしょう。

「あら、ごきげんよう。この度は魔王軍の四天王二人と相見えることになって大変だったのよ。なんてったって四天王には因縁がある人が多いからね私たちは。まず最初に戦うことになったのがゴレアスっていう四天王で、これは武闘派のでっかい熊みたいな方で」

でっかい熊ってなんだかすごい語弊がありそうな感じですね。

「で、その熊が猪突猛進タイプでして」

「そうなのよ!それで魔法使いの...誰だっけとりあえずその子の仇ーって」

「名前は覚えておきましょうよ...」

思わずここで口を挟んでしまいました。

「いや、そんなことよりその熊があまりにも戦慣れしててね」

そんなことよりも名前を忘れられてそんなことですまされる魔法使いさんが不憫で仕方がないのですが...。

「それで、何されても見たことがある攻撃だな、みたいな振る舞いなんですよ。もう、その余裕がこちらの焦りを生んで大変で」

…覚えている内容を頑張って記そうとしましたがここが限界でした。

途中から軽戦士くんが先回りし始めてるあたり何回か同じ話はされているのでしょう。

「いやー、ここは勇者さんが華麗に攻撃に合わせて」

「…そこ僕なんですけど」

「あら、これはすみませんね。それでここは軽戦士くんが華麗に攻撃に合わせて…」

もう、ここら辺から少し記憶がどっか行っていたのですが戻ってきた時に

「ここでなんと!あの湯豆腐が活躍して結果見事にライムワーク」

どこの湯豆腐が活躍したんですか。

「と、とりあえず勝てて良かったですね!」

なおも話が続くので無理やり遮ってみようとしました。

これに対し賢者さんは

「はい!」と一言。

「では、貴方に神の御加護があらんことを」

と言い去っていきました。

…あれって会話スキップ出来るんですね!

「ごめんなさいね、村人さん。あれで仕事にはストイックに取り組んでるんですよ、一応。」

軽戦士さんがこっそりとそう補足をしてからすぐさま賢者さんを追って走っていきました。

...確かにあんなにずっと話してて自分の功績をあまり言ってこないのは(単に俺が覚えていないだけかもしれませんが)ストイックと言えるのかもしれませんね。

次に行ったのは酒場です。旅が始まってかなり経ちましたがそういえば説明していなかったのでここで説明しますと冒険者というのは酒飲みが多いため必然的に情報収集をするならここかギルドが最適になります。

俺としてはまだただの村人であるのですが、情報というのは何よりも大事なので大体寄るようにしています。

そして、その酒場には僧侶さんと武士の女性がいました。

「これはどうも」

俺の存在にすぐに気づいた僧侶さんが声をかけてきた。

「おや、どこかで見たことがある気がしますが...」

「たまにいる人だな」

武士さんの疑問に対して僧侶さんが簡潔に返します。

「あ、そういえばたまにいますね」

...たまにいるって、どういう覚え方をされてるんでしょうか。

「そういえば、今日は武道家さんはいないんですね」

いつも会う度に酒場にいるイメージでしたが。と書くと、もうすっかり追いかけになってしまっていますね。

「あの方は今日は気分が優れないということで」

「ああ、そうなんですね」

「あの方は最近ずっと調子が良くないみたいで今日もバターとマーガリンを間違えていました」

...それは調子が良くても間違えるやつだと思うのですが。

「あとは戦闘の時普段は前衛だから進んで前に出るのに、最近は暫く前に出ないことが増えたとかですかね」

「それは致命的じゃないですか」

「そうだな」

「そうですね」

思わず声に出してしまいました。しかし、戦闘に参加しないというのはそれほど致命的なことです。なにせ、仲間がいなかったら一方的に倒されるということですから。

「自分で言うのもなんですが私達は、強いですから何とかなっています。ですが、これが続くようでは困ります」

「とは言われましても...」

「まあ、いたら気に留める程度でお願いします...」

「はあ...」

「後、最近はどうだ?」

話が一段落したのを見計らって僧侶さんが口を開きました。

「どうだ、とは」

「愚問であったな、ここまで来ている時点でそれなりにやれているのは間違いない」

「だからなにが...」

僧侶さんは時折話が掴めないことがあります。ただ、そういう時に限ってなんか大事そうなことを言ってそうな気がして困るのです。

「鍛錬についてだ」

「ああ、そのことですか。それなりにやってますよ、それなりに」

「そうか」

「凄いですね、たまにいる人」

「...名前は覚えてくださいよ、名前は」


そうして、酒場を出たあと、次に向かったのは防具屋です。尚、防具屋は特に内容は無かったのですが、このままだとただのストーカーでしょう?

いや、ただのストーカーですね。


そうして、次に勇者一行にあったのは道具屋の前でした。

ここでは切らしていた毒消しの草を買い足そうとしました。

「いいや、理解できないね」

「貴方がおかしいのよ」

「そうやって自分と違ったらすぐ異端呼ばわりするのか?」

「今、そこにいる人達に聞いてみなさい?誰も泣いている女の子に『邪魔だ、退け』って言うのが正しいとは言わないわよ」

なんか、凄い毒気のある会話が飛んできました。どうやら男近衛兵と女近衛兵が言い合いをしているみたいです。これは是非とも毒消し草を買いたいところですね。

「ちょっと、そこの君。泣いてる女の...」

「流石にもう少し言い方は改めますね」

こういう時に限って話を振られますね。まあ、良くあることでしょう。

「ほら、やっぱあなたの道徳がなってないのよ。これからもそんなんじゃ苦労するわよ」

「お前にだけは道徳を語られたくない!」

やけに強い剣幕で男近衛兵がいいました。

「もう...まあいいわ。これ以上はみんなの邪魔になってしまうし」

そういうと女近衛兵はその場を立ち去りました。

「いやー、先程は巻き込んでしまってすみませんね」

声をかけられて横を見ると勇者御一行でおなじみの

旅人さんが話しかけてきました。

「いえいえ、全然気にしてないですよ」

「ほら、あいつ周り見えてないからさ」

「悪かったな、周り見えてなくて」

どうやら会話が聞こえていたらしい男近衛兵さんが参加してきました。

「ああ、ごめん。てか周り見えてないのは俺もだったわ」

「まあ、俺も悪い事をしたとは思っている」

「本当だよ!俺正直疑ってるからね」

「え、何をですか?」

「あの旅芸人が死んだ時の戦闘はあの村の娘の振りをした魔族の仕業だと考えられていたがその割には俺たちが分断されたタイミングを的確について来てたりしてて内部に不穏な空気があるってやつだろ」

「えっと、ぼかしたんだけどな...」

「いいよ、いいよ。隠すことでもないさ」

「隠してもいいんじゃないですか...」

裏切り者探しってもっと秘密裏に進むものだと思っていたのですが...。

「とにかく、疑うなら好きにすればいい、じゃあな」

そういうと男近衛兵は去っていきました。

「ああ、全く...。お時間取らせてすみませんね」

そういうと旅人さんもゆっくりと去っていきました。

因みに毒消し草は品薄でした。


次に来たのは都市の入口付近でした。

そこには勇者と武道家さんがいました。

「やっぱり最近なんか悩んでることありますよね?」

「いや、まあな」

どうやら二人で話し合い__愉快な野次馬たちを添えて__をしているみたいです。

「実は俺の故郷の村に魔王軍が迫ってきているらしくて」

「そうですか...。」

俺も聞いたことがありました。武道家さんの故郷はここから西。魔王の拠点はここから北東。さらに魔王軍の軍勢はこの近くにも迫ってきています。

さらに魔王軍は四天王が二人消えていますがそれも一時的なものであり、この勇者御一行を含む人類側の損失と強さで言ったら互角ぐらいですがこっちは二十年ぐらいはかけないと取り戻せなさそう、まぁ細かいことは分からないのでざっと言いますが、

武道家さんの故郷の村を守る為にはここで武道家さんが離脱するしかないということです。

俺は冷水を浴びせられたような気持ちになりました。

「正直ここで武道家さんかいなくなると...一応あの騎士の方か近衛兵コンビに前衛は任せられそうですけど」

「まぁ、そうだよな。」

「ただ武道家さん一人いるだけで救われる村があるのも事実ですから」

「そうか」

どうやら勇者としては武道家さんを送りだす気でいるようです。

「まぁ、俺としてもここで離れたくはなかったんだが」

「ええ、分かっていますとも」

...本当に勇者はわかっているのでしょうか。

「一応後任は育っている」

「後任、ですか?」

きょとんとしている様子の勇者。武道家さんは初期の頃から勇者と共に旅をしている存在。そんな勇者が知らないとなると旅をしている時以前の話でしょうか。

「ああ、じきに分かるさ」

なんだか意図的にぼかしているような感じのする武道家さん。

「そうですか、楽しみにしてます」

勇者さんもそれに対し、深くは追求しないという姿勢を見せました。

「僕たちは、倒しますよ」

勇者は改まった様子で言いました。そして手を差し出しました。

「ああ、待っている」

武道家さんは力強く握り返しました。

そうして二人はその場から去っていきました。野次馬達は大変な騒ぎです。そんな中俺は武道家さんの言葉がやけに頭の中から離れなかったのでした。


次に勇者御一行と会ったのは都市の路地でした。

そこには勇者御一行の騎士さんと旅人さんの二人がいました。

「あ、たまにいる人だ」

「たまにいる村人だ」

「やっぱりたまにいる人で覚えられてるんですね」

「事実たまにいますからね」

旅人さんが当然といったように言いました。

こちらとしては町に出た魔物みたいな括りで言わないで欲しいのですが。

「そういえば医者のやつが最近様子がおかしいみたいだけどなんか知らない?」

騎士さんが唐突に聞いてきました。

「いや、まだ会ってないし分からないですけど」

「あー、たまにいなかったか」

「たまにいなかったってどういう言葉ですか」

「まあ、今、いるんじゃないかってピリピリしてるから」

俺の質問には答えずに旅人が言いました。

「そういう話を簡単に人にもらすのは感心しないなぁ」

「それはアイツに言ってくださいよ...」

「とにかく、医者さんの件については俺は何もわからないです」

と言って俺はその場を去ろうとしました。

「お、噂をすれば、医者のやつだぞ」

騎士さんが指差した方向には確かに医者さんがいました。

「おーい!元気ですか!!!!」

明らかにあの人の前で元気とは言えないような大声で旅人が言いました。

「あー、元気じゃないかな...」

「どうして元気じゃないんですか?」

俺は思わず質問しました。

「こら!ぶっ込んじゃ駄目でしょ!!」

そのハイテンションで言われても説得力に欠ける気がするのですが旅人が言いました。

しかし、真にぶっ込んでくるのは彼ではありませんでした。

「実は...君たちとはここで離脱しようと思っているんだ」

俺は水をぶっ掛けられたような気持ちになりました。

「いや、そこの村人くんはまだ一緒に旅してないけど」

騎士さんが凄く場違いなことを言いました。

「実は僕、医師の免許を持っていないんだ」

尚も続く爆弾発言。今日だけ一日が一時間にでもなったのでしょうか。

「お前、ヤブっぽいなと思ったけど本当にヤブだったんだな」

驚きすぎのせいか10代前半ぐらいの見た目の旅人が40はいってそうな医者さんに上から目線な口調になっています。

「恥ずかしながら28年間生きてきて一度も取れていなかったんだ」

訂正。全然いっていませんでした。

ただこの世界では医師免許なんてあってないようなものです。何故ならこの世界には回復魔法があるからです。

「ただいなくなった戦力は...」

「それ以上言うな!」

言いかけた騎士さんを旅人が止めた。

「まぁ、そもそも僕どうせあまり戦闘に参加してないから」

医師さんが浮かない顔で言いました。

「あぁ、すみません...」

「まぁ、とにかく!頑張ってくださいよ!」

「うん」

旅人の励ましに頷く医師さん。

「じゃあ頑張るぞー!」

唐突に声を上げる旅人。

「応」

「はい」

「あ、はい」

一応俺も一緒に声を上げました。

こうして三人はその場から去っていったのでした。


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