第8話
どうも、村人Aです。
今日はハーフベルグという町に来ています。この街の特徴はなんと言っても人族と魔族と言われる方が共存していることですね。
と、ここで念の為説明します。
この世界では、人間たちと魔王が争っています。そしてその魔王は、「魔物」と呼ばれる生物と「魔族」と呼ばれる種族を従えています。ですが、実は人間と魔族は元々敵対する理由は無いのです。ならなぜ戦っているのかと言うと○○人至上主義的なかんがえやなんやらが色々あった結果、もうどうしようも無くなったからです。で、どうしようもなくなったこの状況をどうにかしたいと思った人達と、「観光」客によって成り立っているのがこの町という訳です。
ということで恒例のメンバーを紹介するやつです
勇者
武道家
賢者
僧侶
医者
武士の女性
生真面目そうな青年
軽戦士
ピンク髪の女性の騎士
黒髪の男性の騎士
背の小さい少女
背の高い男性です
…なんということでしょう!メンバーが変わっていません。これはそろそろ安定してきたということでしょうか。
とりあえず本日は適当に街を散策しておきましょう。
…本日は本当に勇者一行と仲良くなりたいみたいなことは思わないでいこうと思っています。
…本当に本当ですよ!?
と何故か俺が虚空に向かって弁明していると前から賢者さんと背の小さい少女が現れました。
「あら、旅人さんお久しぶりです」
「こんにちは!私リリーっていうの!」
賢者さんが挨拶をし続いて少女の方も挨拶をしました。
「あ、お久しぶりです、えっと、今日はどうされましたか?」
「あ、えっと今日はですね…」
そこから賢者さんは10分ほど話をしました。いつものマシンガントークです。
「…という訳で私たちはこの村に来たわけです!」
「なるほど、つまり魔王の住処に行く道の途中にあったから来たのですね。」相変わらずこの人の話は時間の割に内容が薄いです。
「一つ質問いいですか?」ふと気になったことがあったので質問をしてみました。
「……あっ、はい!!なんでしょうか?」珍しく賢者さんの反応が遅れました。いつも滅多に話を止めることがなかったために少し新鮮です。長旅の疲れが溜まっていたりするのでしょうか?
「それってわざわざこの街である必要があったのですか?」
聞いてから一泊置いて少し大きな音が響いた。どうやら賢者さんが咳き込んだ音のようだ。
「す、すいません、その…長旅の疲れが少し…。だから、有名な宿のあるこの町に泊まろうって話になったんです。」
「私、初めて知った!!」
少女が何故か食い気味で言う。
「あら、ごめんなさいね、貴方が寝ている時に決めたからね。」
申し訳なさそうに言う賢者さん。
「でも、隣町なら温泉とかがあるし、そっちの方がおすすめですよ」
少し得意げに俺は言いました。隣町の温泉は知る人ぞ知る秘境と言った感じですからね、僕もこの前来た時にたまたま知ったぐらいですし。
「この町、もっとみたい!」
「そうね、折角ですしこの町を探索してから行きましょうかね。」
気に入ってくれれば嬉しいですね。
その後はさらに20分程追いマシンガントークが始まり、連れの少女が飽きたようで半ば強引に止めてから僕は彼女達と別れて歩き出しました。
その後、俺が町の酒場に顔を出してみるといつものように武闘家さんと僧侶さんとそれから、今日は騎士さんも一緒にいました。
「おう、またお前さんじゃねーか」
「久しぶりだね」早速武闘家さんと騎士さんがお出迎えしてくれました。
「お久しぶりです」それに俺も笑顔で返します。
正確には返そうとしたのですがどうしてもあるものが目に付いて驚かざるを得なくなりました。
そう、それは騎士さんの横に並んだ大量のお酒の空き瓶です。
「ど、どうしたんですか、それ」
俺は思わず聞き返してしまいました。
「それがな…」
騎士さんの話を聞くこと20分。はい、今回やけに賢者さんの話が短いと思ったら第2ラウンドがありました。幸いなことに隣に二人も止めてくれる人がいたのでそこまで長引かずには済みましたが。
とりあえず騎士さんの言っていたことを要約すると、
旅芸人さんが死んだ魔王軍襲撃の事件、ちょうど騎士さんが加わった直後でかつ、タイミングよく勇者が狙われていたから勇者から裏切り者ではないかと疑われている、という訳みたいです。
賢者さんよりも、中身があったことに最早感激しております。
と、話が逸れてしまいました。
「全く、折角名を轟かせられるチャンスだと思ったんだがな…」
「だが、それ以外となると誰がいるか?」
考え込む騎士さんと武闘家さん。
「なら、あの小さい子しかいないんじゃないですか?あの子襲撃された村で拾ったんですよね?」
「確かに…」「それがいるが…」
騎士さんと武闘家さんは仲良く首を捻る。
「だが、怪しい所あったか?」
「かといってそちらにも怪しい所はないが…」
武闘家さんにそれまで静かだった僧侶さんが返す。
「ただ、この件に関しては心配しなくて大丈夫だ、他の話題に移ろう」
重々しくなっていた空気を払拭するかのように僧侶さんが努めて明るい声で話す。
「そうだな、そうだ。そういえばそこの少年はそこにいるのと一緒にトロルを倒したんだってな、凄いじゃないか」
武闘家さんが言いました。
「でも…それは最初に騎士さんが先に戦って気を引いていたからですよ」
「だが、あそこで君が助けてくれなかったら私は危なかったかもしれない」
「それは言い過ぎですよ!俺の役は誰でも出来ましたって」
「まあ、それはそうとして、お前さんのその剣はどこで買ったんだい?」
騎士さんとひたすらどちらが凄いかを話し合っていると武闘家さんが話を切り出しました。
「これは、僕がいた村で安く売ってた中古品ですよ」
「やっぱそうなんだ」
騎士さんの「やはり」という発言は少し失礼なように感じるかもしれませんが俺の持っている剣は元々廉価品だった上に中古で更にかれこれ5年ぐらいは使っていたため割と刃こぼれが目立つ有様になっているので新品と言われた方が傷つくレベルです。
「良かったらここで新しいの買ってあげようか?」
騎士さんがなんてことないように聞いてきました。
「大丈夫なんですか、その、お金とか」
「まあ、剣一本ぐらいはなんてことないよ」
「そうだな、丁度ここの向かいが武器屋だから会計は俺が済ますから行くといい」
「武闘家さんまで…。ありがとうございます」
こうしてそこそこいい値段の剣を抱えて俺はまた歩き始めました。
やはりこの場所は人と魔族が一緒にいるからか他ではなかなか見ないような建物も沢山あります。そういえば何気に最初に勇者一行とあったサーカスもレアな建物でしたが、サーカスぐらいのパンチのある建物を沢山見ると心無しか少し疲れてきました。そんなこんなで休憩することにした俺が次に着いたのは洒落たカフェでした。そこには人だかりができており何事かと思い真ん中を見てみると武士風の女性と王様の近衛兵の女性でした。確かに勇者一行って何故か顔がいい人が多いので人だかりができるのも納得でしょう。ここは野次馬根性が発動しましたがこの人だかりと一緒になるのも何か癪に触るので窓際の席で聞き耳だけ立てることにしましょう。なんか、一番酷いことをしているような感じですが敢えて深くは気にしないようにしておきます。
「にしても、なんなんですか、貴女の相方の兵士は」
少し息の荒い武士さんが言いました。
どうやらあの近衛兵の態度が気に入らないようです。
はい、なんか、一周まわって恋バナチックになってますね、これ。具体的に言いますと状況説明がやたら細かいです。そら、人も集まりますよ…。
「まあ、あの人はいつもそーゆー人ですから」
日頃の行いにすっかり諦めているのかあっさりした口調で流す近衛兵さん。
「だからといっていつもいつも何処かほっつき歩いてて、何処に行っていたのか問い詰めてもどこ吹く風、特に激しく運動した形跡もなさそうなので敵方と内通していてもおかしくないですよ!」
もはや半分決めつけにかかっている武士さん。
はい、これ見方によっては夜遅くまで外出している近衛兵(男)を心配しているようにしか見えないのですが。これもしかしたら本当にそういうことなのかもですね。
「まあ、その可能性は私も考えましたけれど…。一応仕事自体はまともに…してるのか…?」
「ほら!まともにやってないじゃないですか!!」
「声が大きいです、あんまり騒ぐと無駄に目立つ…って、なんですかこの数は!?」
どうやら野次馬に気づいたようです。少しの間話していた間に周りに僕を含めて20人ほどが集まっていました。
「こ、これは退却ですよ!」近衛兵さんの言葉で野次馬に気づき途端にパニックになる女武士さん。流石にこれは迷惑になってしまったなと少し反省しながらも俺は軽やかにその場を後にしました。
その後暫く街を歩いていると道の隅の椅子で座っている男の近衛兵と生真面目そうな青年がいました。
「いやー、めんどくせー」
「いやー、本当に」
男近衛兵が唐突に言い放ちそれに青年がすかさず同意しました。
「なんかさ、本当にやりたくてここ入ったんじゃないんだけどさ」
「うん」
「王様がさ、ここ入れって。王様の側が一番警戒されてるから一番楽な仕事だと思ったのに!どうしてここに来なきゃ行けないんだ!」
「ああ…」
もう、だったら逃げればいいのにと思うような愚痴を言っている男近衛兵。それを話半分のような感じで聞いている青年。そして、隣の椅子で休憩している俺。
「だからさ、結局近衛兵だって自由なんてないからさ、自由にいきたいのよ、自由に。その点さ、あんたはいいよなニートだろ?実質」
「一応旅人っていう立派な職業ですよー。というか冒険者のギルドにも一応いますよー。」
生真面目そうな青年…まあ、ここまでの流れで生真面目そうだったのは第一印象だけでしたが…は旅人さんのようです。…また、旅人という職業は何をしているのか考えてみましたが出てはきませんでした。やっぱり実質ニートみたいな物なのでしょうか?
「ああ、そうだったな、悪い悪い。しかし、近衛兵だって好き好んでやりたいわけじゃないけど旅に出るなんてもっとやりたくないからな。ずっと白にいたい訳」
「あー、なるほど。わかりますわかります。そう考えるともう1人の方って本当に凄いですよね。」
必死に近衛兵さんに合わせようとしているように見えるがそのせいで旅人なのに旅を否定する発言を納得するという可笑しい状況になってしまっています。彼は真面目に話を聞いているのでしょうか?それとも旅人という職業をよく思っていないのでしょうか?
「あれはもう人間じゃないよ、ほんとに。忠誠心しか持ち合わせがないもん。ちょっとはサボろうとかないのかなーアイツ。」
「まあ、そうですねー」
やはり話を聞いてなさそうに返答する旅人さん。
「いやー、マジもうずっとサボりたいもん」
「まあ、いつかは働かなきゃ」
「いやー、めんどくせー」
意外と適当な返答でも会話は成り立つようです。
そんなこんなで二人の会話を聞いてもあまり内容が無さそうだったのでその場を離れ他のところに行くことにしました。
そんなわけでその後もこの町を探索して沢山の出来事に出くわしました。特に町のおじさん達と一緒に寒中水泳して取った魚でパエリアを作った話は一生の思い出に残るでしょう。ただ、それらはまた後で語るとして、ハーフベルグ滞在三日目、もうそろそろ出ていこうと思ってた時、俺は人だかりができているのを発見しました。そこは昨日までは昼でも1人か2人しか通らないような路地裏のはずです。
何かが反応した俺はそこに行ってみることにしました。
そこには勇者パーティの面々がいました。
勇者、賢者、医者、武士さん、旅人、軽戦士、女近衛兵、騎士、少女。
各々緊迫した雰囲気でしたがこんな時でも男近衛兵はサボっているのでしょうか。
「取り敢えず買ってきた団子でも分けるか」
勇者が重々しく軽い内容を発言しました。俺を含む野次馬はあまりにも突然なこの発言に呆気に取られてしまいました。
勇者パーティの方も数名ほど理解してなさそうな人物もいます。ですが賢者さんが率先して勇者の元へ団子を取りに行くと他の方も団子を取りに行きました。
勇者が直々にこういうの買い出しするんだ、などと思っていると少しだけ周りがざわつきます。
人が多すぎて見えづらいですがどうやら勇者が少女の腕を掴んでいるようです。
「ゆうしゃさま、どうしたの?」
困惑したように少女がいいます。
流石に勇者様がただそういう趣味で掴んでるだけとは思えません。
と、思っていたのですが何故かただ勇者がそういう趣味で掴んだのでは無いかと言っている人が沢山居ます。
もし本当だったらともかく、皆守ってもらっているという感覚はないのでしょうか?
「ここは人族と魔族が共存する場所」
勇者が徐に話し始めました。彼は叫んでいた訳ではありませんでしたが不思議と声が響くみたいで周りの騒ぎも収まってきました。
「されど外では未だ人族と魔族の殺し合いが続いている」
この言葉には頷く人も多かったです。ただどちらの種族も微妙な顔をしている人物が何人か存在していました。
「そしてこの町にいるものの中にも他の種族に対してマイナスの感情を持っているものはいるだろう」
この発言には苦い顔をするものも多いですが中には頷いているものもいます。頷いている人は先程微妙な顔をしていた人が多いです。
「だからと言ってそんな人たちもなにかいわれる理由は無いはずだ」
その発言に一気に場の空気が重くなりました。もはや殺意を隠そうともせずに剣を抜きかけているものまでいます。
「しかし、この町で殺し合いが起きることは断固として許せない」
その発言に剣を抜きかけていたものは慌てて手を離し素知らぬ顔をしました。
…いや、流石にそれでごまかすのは無理があると思いますよ。
「こいつは人の振りをしている」
そう言って少女に剣を向ける勇者。
唐突なこの光景に誰も声が出ていない様子です。
というか誰とは言いませんが勇者パーティの医者さんも馬鹿みたいに驚いています。
そして少女の表情は他の野次馬の陰に隠れて良く見えません。
「それならば黙認するつもりだったがこいつは他の魔族と通じていることが確認された」
その発言に一部の野次馬がざわつきました。
少女の表情は相変わらず良く見えません。
「この町いる間、僕の仲間の賢者と僧侶にこのものの力を抑えてもらっていた。だから今このものは力を失っている」
その言葉通り、少女は抵抗しようとしていますがそれは意味を成していません。
「本来であればこのような行為が良くないのは分かっているが僕にも使命がある、申し訳ないが分かってくれ」
そういうと、勇者は剣で少女の首をはねた。
少女は首を失ってからもしばらく抵抗を続けていたがそれも失敗に終わりもう一回、勇者に斬られ、今度こそ倒されました。
皆、この光景を黙って見ていることしか出来ませんでした。
勇者は一連の動きが終わると振り返らずに黙って去っていきました。
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