第3話

どうも、村人です。ポートタウンで勇者御一行と会ってから三週間が経ち、小さな村、ローアに来た俺は、また、勇者御一行と会いました。…意識してるつもりは無いんですが、二回も会ってしまいましたね。しかも、勇者一行なんと、13人いるんですが。勇者っていう役割がやはり人を惹きつけるのでしょうか。と言うことでメンバーを見てみましょう。

勇者、武道家、魔法使い、賢者、旅芸人、

商人風の男性、

ガタイがとても良く威圧感のある男性、

冴えない雰囲気のおじさん、

イケメン、

堅物そうな男性、

the、遊び人みたいな女性、

長身で美人な女性、

高貴な雰囲気の女性。

…なんとも荘厳な雰囲気すら醸し出してきてまね。流石に仲間を増やすスピードが速すぎるのではないですかね。傍から見たらもはやギャグに見えます。勇者の人望というものはすさまじいものですね。というか、何かが足りない気がするのですが。まあそんなことより、これで街を散策して勇者一行にそれとなく会いに行きましょう。まだ、二回目なのに行動をテンプレ化してますね。

単調な自分のミーハーさに嫌気がさしましたが、それよりも好奇心が勝り勇者一行を見に行くことにしました。

まず、広場には勇者と長身でお堅い雰囲気の美人な女性、遊び人風の街中では少々はしたない恰好をしている女性がいました。早速話を盗み聞しますか。野次馬根性というものは、恐ろしく、さっきまで感じていた負い目などは綺麗に消し去られていました。

「勇者さん、二人きりで出かけませんか?」

早速猛烈なアプローチを始める遊び人風の女性、控えめに言って魔王討伐の旅には向いていないのでは無いでしょうか。これでは知性がある魔族に対する囮にしかならないのではないでしょうか?

「だ、駄目です!勇者様はここにいて下さい!」すかさず止める長身の女性。

「え、なになに、貴方も勇者様のこと狙ってるの??」目を輝かせる遊び人。もう、絶対コイツの目的は魔王討伐では無いでしょう。これが仲間で本当に大丈夫なのかと勇者の事を身勝手にも案じてしまいます。

「そそそ、そんなわけはないだろ!第一、妾は武士であるぞ!武士たるもの、そのような恋愛にうつつを抜かすなどあってはならぬ!」いや、武士だから恋愛が駄目とはならないのでは?取り敢えず武士さんは絵にかいたような堅物で遊び人は絵にかいたような遊び人だと自分の中で結論付けました。

「え、じゃあなんで武士さんはなんで来たの?」そう言ったのは勇者です。…この勇者は女性はすべて出会い目的で旅をしてるとでも思ってるのでしょうか?…文面だけならそう思うのですがなんだかそういう意味じゃなくて単に言い方がすこぶる下手なだけにも見えます。

「医者殿に頼まれたからであります!」武士さんはピシッと返事をしました。

「あぁ、あのおっさんね。確かにあの人はちゃんと真面目に勧誘しそうね」

あの冴えない雰囲気のおじさんはどうやら医者らしいですね。

正直、医学なんてものは魔法の下位互換というイメージが強い世の中だから珍しい。

「僕も真面目そうだから一向に迎えたからね。実際あのお医者さんが勧誘した君は前衛としてだいぶ貢献してくれてるし。」勇者も同意を示しました。

…しかし、医者さんですか…。次は医者を見に行きたいですね。


医者を探しに武器屋に行くと、細身でやつれた雰囲気の男性と商人風の男性がいました。

「す、すいません、この武器買うお金、少し貨してもらえませんか?」どうやら医者は手持ちの金が少し足りないようで商人に頼んでいるようです。

「なんで出さければいけないんだ、私はお前の財布じゃないぞ」ふてぶてしく言い放つ男。よくいうよ、勇者の前ではあんなにへりくだっていたのに。

「え、でも商人さんなんだし金持ってるんじゃ」やはりあの男性は商人らしいですね。

「金を持っているからといってそんな、ただで人に物を奢る奴がどこにいる」今、私の目の前にいます。恰幅のいい商人と痩せぎすなお医者さんだとマフィアと債務者にも見えてきます。

「せめて君に価値があれば話は別だがな」「す、すいません、場違いなお願いをしてしまい。」商人に対し医者さんは平謝りになっています。

なんか、これ以上見ているのも辛いので武器はまた今度見ますか。


お次はまた広場、今度はイケメン、高貴な雰囲気の女性、魔法使いの3人がいました。

「姫さま、私が貴方を守って差し上げましょう」と、イケメン。この男も遊び人属性がある気がしますが気のせいでしょうか。それに対し姫さまと呼ばれた女性は「いえ、私は大丈夫ですから勇者様を支援して下さい」と落ち着きながらも朗らかな笑顔で言いました。

「おや、それは心強いですね。」イケメンは少し微笑みかけて気障っぽく言いました。

「そうよ、代わりに私が魔法で守ってあげるから、貴方は勇者と一緒に前線で戦いなさい」魔法使いはキツい口調で言いました。

「おお、なおさら心強い。じゃあ、ピンチの時は頼んだよ」イケメンはふてぶてしくも見える笑みで魔法使いに口説くようなことを言いました。

「あら、その前にあんたがくたばってないといいけどね」

「そ、そんな、縁起でもない事を」魔法使いのキツい発言に高貴な雰囲気の女性は窘めるように言いました。

「いやいや、どんな状況下でも前衛が出来なくては戦士として失格だからね。勿論、私がすぐにくたばるなんてことはないさ」イケメンは少し格好つけるようにして言いました。ただでさえ無駄にまぶしい男なので最早薔薇が見えてきました。

このやりとりに対する興味は完全に尽きたため、俺はそっとその場を離れました。

次に向かった酒場には武道家とガタイのいい男性がいました。

「おう、お前さん!また会うとは奇遇だな!」どうやら武道家さんは俺のことを覚えてくれていたみたいです!前回少し話しただけですし、向こうはたぶん多くの人に話しかけられてきただろうに覚えてくれていたというのはとても嬉しいです。

「知り合いか?」ガタイのいい男性は武道家さんに向かって問いました。落ち着いた雰囲気の男性です。

「あぁ。四つ程前の村でも見た気がするんだが」武道家さんはガタイのいい男性のほうに向きなおって言いました。俺はあれから二つ目の村なのですが勇者一行は多くの村によっているようです。

「え、えぇ多分そうですね。」

「しかし、なんでこんなところにいるんだ?」武道家さんは野菜炒めを食べてから聞きました。

「実は家を建てる場所を探していまして」

「おぅ、そうなのか。お前はなんか知ってるか?…っとあぁそうだそこの少年は知らなかったな。コイツは僧侶のダフだ。」

「えっ僧侶なんですか!?」

「あぁ」いや見えない。全くそうは見えないです。2メートルはありそうな巨体でどっしりとした姿はいかにも前衛です。

「で、質問の事だが、俺には分からない。」僧侶さんは簡潔に述べました。

「あ、あぁ。有難う御座います!」二人とも探そうとしてくれたみたいで嬉しかったです。俺は村にいた時はあまり悩みを聞いてもらうことなんてありませんでしたから。俺が感慨深さに浸っていると、

「折角だし少し話していこうや」と武闘家さんが言ってくれました。

「あ、有難う御座います」と快諾して30分程話しました。その間気さくな武道家と時折面白いことを言ってくれる僧侶のお陰であまり飽きませんでした。「それでお前さん、もうすぐ夜だが大丈夫か?」「あ、そう言えば!」

「じゃあ気をつけてな!」「縁がある事を祈ろう」武道家と僧侶に別れを告げた俺はもう一度広場に行きました。

夕方の広場は趣き深い物がありますね。

そしてそこでは旅芸人と賢者がおりました。

どうやら二人で道行く人にお話を聞いているようです。

「あの…すみません。この辺りで何か強そうな敵を見ませんでしたか?」と賢者が聞いてきました。何か強い敵と言われても勇者一行にとっては何が強い敵なのかが一定くれないと分からないです。まぁ、どちらにしろ僕からしても強い敵というのはいなかったはずです。

「いや、見てないですが。」

「そうですか。」と気を落とす賢者。何か懸念すべきことがあったのでしょうか。と、その時

「おや?」と突然声を上げる旅芸人。

「そういえばあなた、ポートタウンで話しましたね。」どうやら覚えててくれていたようです。この間、村で少しだけ話しただけなのにすごい記憶力です。俺は勇者一行というステータスがなければ多分覚えていませんでした。

「あれ、お知り合いですか?」賢者さんは旅芸人に向かって話しかけました。どうやら賢者さんは僕のことを覚えてはいなかったようです。そちらの方が普通の反応なのですが少しガッカリしました。

「えぇ、以前にあったことがありまして」

「あら、そうでしたか。あなたは色々なところ旅してる割によく人を覚えられますね」

「まぁ、人の顔が見たくて、旅をしている側面もありますからな」

話し込む2人に対し、僕は考え込んでいた。何かが足りない様な…。

「あれ、そういえば!」

「「? どうかなさいました?」」突然声を上げた僕とそれに戸惑う二人。だけどそんな二人の視線など僕には一切気になりませんでした。そう、先程少しだけ感じていた違和感の正体が分かったのです。

「そういえば、気弱そうな青年はどうしたんですか?」そう、勇者一行にいた青年がいなくなっているのです。それを言ってしまった後からタブーだったかもしれないと不安になった俺は二人の様子を伺いました。よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの賢者。ドンマイと言わんばかりの旅芸人。…なんとなく運命を察したのですが。その後、案の定生き生きと語り出した賢者の説明は一時間半ぐらいに及びました。よく好きな物を語るときにそれを話したら二時間にもなる、なんて言葉を聞きますが普通にあったことを話すだけで一時間半は人間離れしています。物静かそうな見た目だから油断していましたが相当な話好きだったようです。

その間の情報を要約すると、盗みを働いて追放された…それだけでした。それだけをすっごく詳しく一時間半説明したのです。よく舌が回る方だと思いましたが、必死に聞いていた僕は目が回ってきました。なんとか、聞き終えた俺はすっかり日が暮れた空を眺めながら宿に向かおうとしていました。

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