カフェでおしゃべり 3
(二人はカフェのテーブルを挟んで向かい合っている)
(アイスコーヒーを一口吸う)
「私は中学校に進学。中学時代もいろいろあったなあ」
(静かに話し始める)
「お姉ちゃんに続いて私もセーラー服を着て、ひとつ上のレベルになった感じ、大人に近づいた感じ」
(懐かしそうに話す)
「私のセーラー服のお披露目会したのは覚えてるよね? お姉ちゃんたちと、それから、君の前で」
「君のお母さんが君を連れて私の入学祝いの挨拶に来てさ。君が久しぶりに私のお家でゆっくり過ごしてくれたのが嬉しくて、中学のセーラー服を見せたの。君もお祝いしてくれたよね」
「その中学。中学ではバレーボール部に入ったんだよね。何か打ち込めるものがほしいなって思って」
「今も昔もあまり背が高くなく、運動神経も良くない私ですが、私なりに頑張りました、バレーボール! 体育館で日々の練習、ボールを迎え撃つ! やってみたら面白かったです、バレーボール!」
(元気にバレーボールの動作を真似てみせながら話す)
「そんな私をお姉ちゃんたち、応援してくれた」
「バレーボールも、もちろんいい思い出なんだけど、私としてはやっぱり料理の思い出が宝物だなー」
「えへへ。お料理で君を取り戻したようなものだし、4人での時間と、しっかり結びついていて……」
(少し照れたように笑う)
「家庭科の授業でお料理やお菓子を作るようになって。これもね、打ち込めるものが欲しくて、お家でも作るようになったの」
「それをお姉ちゃんたちに食べてもらって……。あの頃は出来も良くなくて失敗も多かった」
「でも、そんな私もお姉ちゃんたちは暖かく見守ってくれた。失敗作も食べてくれた」
「だけど、特に私の励みになったのは……、君。私のお家から遠ざかっていた君、何かの用事で訪ねて来た君のお母さんに連れられて。私の失敗作、食べてくれて励ましてくれたんだよね」
(ストローでグラスをかき回す)
「それで、今度来てくれたら、美味しいものを食べさせてあげようって、決心したんだから。そして、素敵なお料理とお菓子で、みんなを笑顔にしようって思ったんだから」
「そのあたりから、君が遊びに来る日がまた増えてきて……、また4人になった。また生活に味がついた」
「私のお家に来て失敗作を食べ続けてくれて、それでも励ましてくれて。君なりに私を気遣ってくれたのかな」
(優しく見つめる)
「少し上手になって、みんなが『おいしい』って笑顔になったときは、本当に嬉しかった」
「失敗作でも完成させれば達成感、みんなが笑顔になれば充実感」
「今から思えば、あの頃の4人での時間で、私の生き方の方向が決まったのかも」
「4人一緒、私たちは家族。街を4人で一緒に歩いたよね。学校近くの並木道とか。晴れの日も、雨の日も……」
(遠くなった思い出を懐かしむように話す)
「あ、4人で一緒と言えば、流行りの曲を聴いたりしたよね」
(記憶の中から思い出を掬い上げる)
「ほら、あのダンスも流行したよね。あの、歌に合わせたダンス。手や腕をこんな風に動かしたり、こうして指を立てたりして。あの頃、ちょうどいい感じに似ている服があったから、それ着て踊ったり。懐かしいなあ。あれ、私が中学2年の頃?」
(ダンスの動作を真似てみせながら話す)
「あー、もうひとつ思い出しちゃった。妹も中学に入って、セーラー服を着て、またお披露目会」
(またひとつ思い出したという風に話す)
「でも、君はまだ小学生。ひとりだけ制服がない。君が可哀想って勝手に思っちゃって、君にも着せたんだよね。セーラー服」
「よそのお家からお古で譲ってもらった予備のセーラー服があってさ、それを君に着せて……」
「そうしたら、もう高校生になってたお姉ちゃんも、面白がって中学生の頃のを出して着てさ。4人お揃いで同じ中学校のセーラー服」
「あの時の私、『これが私たち4人のユニフォーム!』ってノリノリで、恥ずかしがってる君を引きずるようにして女子バレーの仲間にお揃い姿を見せに行ったりして……」
(当時の自分の話し方の真似を交えて話しながら、気まずそうになる)
「またしばらくの間、君の足が遠のいて……。今考えると悪いことをしたなあって。はい、君にセーラー服を着せたこと、人に見せびらかしたこと、反省しております」
(頭を下げる)
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