第3話
🎙️ ラジオ「深夜の海辺物語」~望月親父の武勇伝~
DJ: 皆さん、こんばんは。深夜2時をまわりました。
「深夜の海辺物語」のお時間です。今夜は特別ゲスト、
湘南の海の家の大将、望月さんにお越しいただいております。
望月: よろしく。まあ、大将なんて大層な・・・、
ただの海の家のオヤジですよ。
DJ: いえいえ、ご謙遜を。実は望月さん、
若い頃は〇〇界隈で知らない人はいない伝説の人物だったとか?
望月: あー・・・、そんな昔の話を(苦笑)
―――まあ、90年代の話ですけどね。
DJ: 90年代! J-POPの全盛期、バブル崩壊、
「東京ラブストーリー」や「愛していると言ってくれ」
―――熱い時代ですね。どんな伝説が?
望月: いやあ...当時は「砂浜のシャーク」なんて呼ばれてましてね。
海の家の客引きじゃあ、俺の右に出る者はいなかった。
一日で300人は呼び込んだもんです。
そしてパンパンに人が詰まった過密電車の中で、
シコティッシュって叫んでやったものですよ・・・。
DJ: 300人!それは凄い数字ですね。秘訣は?
望月: 秘訣?そりゃあもう...(間)...シコティッシュ理論ですよ。
DJ: し、シコティッシュ理論?
望月: 若い男どもの心理を読み切るんです。
5秒美女を見つめたら、もうそれは恋。
そのタイミングで「うちの店、美人の看板娘がいるんだぜ」
って囁くわけです。
そうなるともう、サザンの勝手にシンドバッド、胸騒ぎの腰つき(?)
DJ: なるほど...(困惑)
望月: でもね、当時は俺も若かった。
今の娘ぐらいの歳の女性にもモテたもんです。
両手に花、夜の巴投げ、そして繰り返される昆布巻き(?)
DJ:ハッハッハ・・・(困惑)で、そんな望月さんがどうして海の家を?
望月: 20歳の時、運命の出会いがあったんです。
今は亡き女房とね。彼女がこの海の家の娘で・・・俺は客として来て、
一目惚れしちゃった。そこからはもう客、客が駄目なら同僚、
あの手この手ですよ。
DJ: ロマンチックですね。
望月: まあ、先代の海の家の、親父さんには、
「このゴブリンが!」って言われたし、
塩かけられましたけどね、あれは伯方の塩だった(笑)
時にはチベットソルト・・・岩塩、やってくれやがりました。
DJ: 痛そうですね(驚愕)
望月:でも1年かけて口説き落として、
結婚と同時に海の家を継いだんです。
DJ: そして今は娘のマコトさんが・・・。
望月: そうそう、マコ。あの子は女房そっくりでね・・・、
だからこそ心配なんですよ。夏の海には本当に魔物がいる。
俺みたいな若い頃の男共がウヨウヨしてる。
若い男ってのは簀巻きにしてもまだ溢れて来る、
猿の王国なんですよ。
DJ: それで今日の「シコティッシュ警戒論」に?
望月: まさに。親父の勘ってやつですよ。
でもマコが「自分は大丈夫」って言うなら・・・、
まあ、信じてやろうかと、たとえ日本刀で斬りかかり、
そいつの家に対戦車ライフルをぶっかまそうとね。
DJ: 娘さん思いの優しいお父さんですね(困惑)
望月: 優しい? 俺が?(大笑い)
まあ、マコが幸せならそれでいいんです。
海の家も、いつかは任せることになるでしょうしね。
ディジタル世代だアナログ世代だっていうけど、
両手に花、夜の巴投げ、そして繰り返される昆布巻き、
何しろ何しろ、これのこれもんで、シコティッシュですよ(?)
DJ:なるほどなるほど、そうですね(意味不明)
素敵な話をありがとうございました。
さて、お時間となりました。
望月さん、最後に若い男性陣にメッセージを。
望月: そうですね...(真剣な声で)恋は素晴らしいものだが、
節度を持て。そして何より、相手を大切にしろ。
それができない奴は・・・・・・。
DJ: は、はい?
望月: 俺がシコティッシュにしてやる。
DJ: え、ええ...(汗) 皆さん、お聞きの通りです。
それでは今夜はこの辺で・・・。
望月: あ、最後にもう一つ。
マコ、お父さんは今日も君を見守ってるからな。
*
彼女は望月真琴、
だから勇太がマコちゃんと言うらしい。
ここの看板娘というか、天使だ(?)
この界隈では有名な看板娘、が正しい。
後に知ることになるのだが、彼女の笑顔目当てに、
遠方からやってくる常連客も少なくないのだとか。
彼女の周りには確かに神聖な光輪が、
見えるような気がしてならない。
背中に翼生えてないけど―――。
見えるんだよね(?)
「海の家でのバイトか・・・」
独り言を言いながら人知れず、
モブオーラナイーヴテンションを静かに上げていると、
背中からスッとコワモテが現れ、
低く、野太い声が俺の鼓膜を震わせた。
恐る恐る振り返ると、そこには筋骨隆々とした中年男性が、
威圧的に仁王立ちしている。
身長は百八十センチを超え、
日焼けした肌には無数の傷跡が刻まれている。
元漁師らしい貫禄があり、まさに海の男の典型という気がする。
彼の手は長年の労働で硬くなった海老の殻のようにごつごつしており、
その大きさだけで十分な威嚇効果を持っていた。
がしっ、とその手で肩を掴んでくる。
「おい少年、いきなりマコを品定めか」
ってか急に出てこないで、こわい!
「う、うわぁ! そんな眼で、み、見てないです!」
俺は慌てふためきながら弁解したが、男性の疑いの眼差しは和らがない。
「嘘つけこのすけこましシコティッシュ野郎、
夜は神の宝庫にして、おそろしい物語の入口、
そして朝大量に生まれるシコティッシュ(?)
五秒可愛い女を見つめたらもう、
頭の中はスケベな妄想でいっぱいなんだよ。
『連絡先教えてくれませんか』『今度一緒に映画でも』
『僕と付き合ってください』——そういう妄想をな、
もちろんそれはカモフラージュ、
それをなんつーか、知ってるか、シコティッシュ、なんだよ(?)
イーグルアイ、ウルフアイ、すなわち、
シコティッシュ生産機(?)」
五秒でそんなことを考えられるようなら、
陰キャなんかしてるわっきゃない(?)
というか、冷静に考えて、この人は一体何を言っているのだろうか。
本当に、本当に、お前は何を言ってやがんだ。
ヤカラなのか、走り屋なのか、あおり運転の常習犯なのか(?)
「いや、そんなこと考えてませんって!」
「ほう、それじゃあお前は男じゃないってことか?」
「男にもたくさん種類がいます」
「むっつりスケベと隠れすけべとか、
ステルスすけべ、とかのことだな」
とりあえず、すけべと言いたいおっさんのことはさておいても、
確かに、彼女の美しさに心を奪われたのは事実だが、
それをそんな風に言われると、困る。
彼女を、とらえどころなく滑り去るような、
そういう軽薄な視線で見ていたわけではない。
否定はできない、感じ方は人それぞれだからだ。
でも、俺のそれはこんな子もいるんだなという、
純粋な天使認定の眼差しだ。
第一、もしそんな視線を向けて、キモイなどと言われたら、
俺は一生立ち直れない気がする(?)
モブってね、言われなくても言われるかも知れないと、
恐れるもんなんですよね、
そこにつけて陰キャのダブルパンチ、悲嘆と狂気の永遠ループ(?)
これでもし中二病を患っていたら、毎日が黒歴史の月曜日(?)
「ちょっとお父さん、巧くんをびっくりさせないで!
お父さんみたいにデリカシーのない人じゃないんだから!
ごめんね、馬鹿だけど許してあげてね」
そっかー、俺も望月さんには、人に見られてるんだー(?)
って、お父さん?
「いっとくがな、マコ、夏の海には魔物がいるんだよ、
見てみろ、ゴブリン、そしてホフゴブリン、ゴブリンキング(?)
甲子園のようにな。いわば、ゴキブリホイホイよ(?)
ネオン管に封じ込まれた七色の焔さながらの、貪欲なシコティッシュ、
娘を守るのは父の最重要課題にして神聖なる任務、
あわよくば男というのは腰を振り始めるケダモノだからな(?)」
シコティッシュ多いな、このおっさん(?)
あと、ゴブリン好きだな、おっさん(?)
一拍置いた―――から。
色んなことを聞かなかったことにした、
というか―――しておいてやった(?)
だって、そういえば望月っていうのが雇い主で、
勇太の親戚の名前だということを思い出したからだ。
少女時代と父に固着するインセスト的香りをふと思い出す。
フロイトの『トーテムとタブー』で読んだような、
原始的な家族構造への回帰。
そこには現代社会が忘れかけた、血縁の絆の重さと同時に、
その束縛の息苦しさが同居している。
彼女の父親と思ってしげしげと顔を改めて見てみると、
どことなく、彼女の面影がうっすらと重なって見える。
特に目元の形や、笑う時の口角の上がり方。
しかし、父親の粗野な言動とは対照的に、
彼女には上品さと知性が宿っている。
「まぁマコが言うなら、この男はそうではないことにしよう」
バシン、と背中の経絡秘孔めがけて叩いてくる(?)
そうではないことにしようって言った傍から、
ファーストな先制攻撃(?)
ドアノブに鞄が引っ掛かる、呪いを掛けた(?)
その一撃は思ったより強く、肩甲骨の間に鈍い痛みが走る。
しかし、それは単なる暴力ではなく、
どこか親愛の情を込めた男同士の挨拶のようでもある。
漁師町の男達の間では、こうした身体的なコミュニケーションが、
日常的に行われているのかもしれない。
―――いや、それはねえな(?)
この人は間違いなく、参観日には絶対に来ないタイプの父親だが、
運動会の綱引きでは必ず最前線に立つタイプだろう。
そんな印象を受けた。
「さあ、給料分しっかり働いてくれよ!」
「ゲホゲホッ! は、はい・・・」
お父さんが言う。
というか名前知らないから、お父さんだな、と思う(?)
家族面談とか、参観日では絶対に見ないけど、
アイスが少なくなった時、
コンビニなんかでついてくる小さなスプーンではないけど、
家でカレーなんかを食べるスプーンでアイスを食べた時に、
引っ繰り返る現象のように、
公園とか、河原では見るかも知れない類のお父さん(?)
太陽が昇るにつれて、砂浜の温度は上昇していく。
足元の砂は既に熱を帯び始め、裸足で歩けば火傷しそうなほどだ。
海の家の周辺には、パラソルやビーチチェアが並び始め、
早起きの海水浴客達が場所取りを始めている。
「ぼちぼち人が増えてきたな・・・」
始発でやって来てもう八時をまわったぐらいだろう―――か。
なんでこんなにうじゃうじゃ人って奴はいるんだろう、
ムスカ大佐のように人がゴミのようだ―――と思う(?)
勇太が手揉みしながら言う。
友達だけど、嫌いじゃないけど、もっと考えような、お前(?)
いや実際わからないでか、と思う。
勇太の仕草は計算高く、媚びるような笑顔を浮かべ、
その上、彼の目は常に彼女の方を向いており、
まるで鉄粉が磁石に引き寄せられるように、
彼女の一挙手一投足を追っている。
その視線には下心が透けて見え、
見ているこちらが恥ずかしくなるほどだ。
ああなったらお終いだな、と思う(?)
「ヘヘヘ、じゃあ俺はマコちゃんと―――」
「お前は俺とキッチンだろ! この野郎、
お前みたいな奴は強制労働なんだよ、ラーゲリなんだよ、
地獄を見せてやるぜ(?)」
「そんな、お父様、戦時中みたいなナンセンスは嫌よ、
出生率低下を招くカードはナンセンス文学よ(?)」
友達だけど、何で急にオカマ言葉(?)
「いっとくがな、勇太、
お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!
あと、ここは戦場なんだよ(?)」
「イエスマム(?)」
「働くか?」
「イエッサー(?)」
勇太が軍隊式の敬礼をして見せる。
こういう機転の利いた対応ができるのも、彼の長所の一つだった。
しかし、ここは軍隊だったのだろう―――か・・。
それじゃあ巧、お前もキッチンに来いとボスが仰る、
なるほど、軍隊だ(?)
―――ので、処刑台へ向かう囚人のような表情を浮かべ、
とろとろ、ついて行こうとしたら、
マコちゃん・・・じゃなかった、
望月さんが肩を叩いて声をかけてくる。
古い有刺鉄線がウィンドハープのように鳴る。
高き架橋をわたりはじめる夏ゆく、
脈、こめかみ、心臓の美しき眩暈のような量感・・・・・・。
この瞬間、時間が引き延ばされたような感覚に陥る。
望月さんの指先が俺の肩に触れる瞬間、
その接触点から電流のような感覚が全身に走る。
彼女の手の温もり、微かに感じる脈動、
そして石鹸の香りに混じった彼女固有の体香。
「お父さん、巧くんはわたしと一緒に呼び込みに行くよ!
で、ほら、巧くん、いきなりで申し訳ないけど、
そこのアイスクーラー持ってほしいの、うんそう、
ちょっと重いけど」
指差された、釣りにでも使いそうな、
クーラーボックスを持つ。腕にずっしりときた。
クーラーボックスは業界仕様の大型のもので、
表面は紫外線で少し色褪せた青色。
角の部分には擦れた跡があり、長年の使用を物語っている。
持ち手は黒いナイロン製のベルトで、
手に馴染むよう少し毛羽立っている。
これ、紐があるからそれを両肩にまわして抱えるか、
担ぐのよ、と望月さんがジェスチャーを交えて教えてくれる。
彼女の説明は丁寧で、手の動きも優雅だ。
まるでバレエダンサーの流れるような仕草で、
クーラーボックスの正しい持ち方を実演してくれる。
その際、彼女のエプロンの裾が軽やか舞い、
白い布が陽光の中で透けて見える。
「結び目の紐がほどけていないかを持つ前にチェックしろよ」
とボスはそう言い、ひとしきりそれを見たあと、
じゃあマコに任せる、と言ったあと、
「巧、シコティッシュ―――はするなよ。
お前が汁男優になることを応援はできても、
シコティッシュの世話まではしてやれないからな」
するかあああああ!
気を取り直す。
どちらを選んでもいいようなので抱えて持つ、
いきなりの重労働である。
重量は推定二〇キロ程度。両腕に食い込むベルトの感触が、
これから始まる労働の厳しさを予感させる。
しかし、不思議と嫌な気持ちはしない。
むしろ、望月さんと一緒に働けることへの期待が勝っている。
何だか靴磨きをする少年の労働シーンを思い出す。
ディケンズの『オリヴァー・ツイスト』や、
『大いなる遺産』に登場する労働階級の少年達。
彼等が抱えていた生活の重圧と、それでも失わない希望の光。
中を見ると、ジュースや、かき氷や、アイスの棒、
それに冷えたおしぼりまで至れり尽くせりに入っている。
ここまでするからには相当の売り上げが見込めるのだろう。
氷の結晶が容器の内壁に付着し、キラキラと光っている。
ペットボトルは結露で濡れ、触れると冷たい水滴が手に付く。
ほかのプラグをふさいでしまうACアダプタを想像する。
軽量化、コンパクトの時代にも単純労働がなくならない理由を、
大学生達は絶対に見るべきこの問題(?)
でも確かにこんなのを女性に持たせられないという気はした。
―――それだけでも手伝う意味はあるという気はした。
ちなみに望月さんはエプロンを外して、
首からボードをぶら下げている。
そのあと、海の家のキャップを二つ持ってきて、
その一つをかぶせてくれた。
キャップは少し大きめで、額の上で安定しない。
しかし、望月さんが被せてくれる瞬間、
彼女の顔が至近距離に近づき、息遣いまで感じることができる。
彼女の吐息は微かに甘く、
朝食に食べたであろうトーストのバターの香りが混じっている。
これでどこからどうみても不審人物・・・。
にはならなくて済みそうだ(?)
ボードには、イチオシのかき氷と、海の家のPR文だ。
文字の隙間には小さなイラストが描かれており、
可愛らしいタコやカニの絵が散りばめられている。
全然関係ないけれど、地元の道路の看板で、
『神様は一人息子を与えたほどに世界を愛された』
というキリスト文があるのだけれど、
あれって逆効果で、ルサンチマンを刺激するのではないか(?)
ましてや、真夏の海辺で、汗を流しながら働く俺達の蟻人間にとって、
そうした宗教的メッセージはどのような意味を持つのだろう。
まったくもって、虚無、ブッダ―、すげー何もねえ、ノンである。
ハルキムラカミが標語に難癖をつけていたエッセイを思い出す。
もちろん、それあなたの意見ですよね?
そしてお前のそれも個人の意見ですよね、と返そう(?)
しかし、砂浜に出るとやはり眩暈がするほど暑い。
熱中症で毎日のように、
バッタバッタストライクバッターアウトが起きているという、
ニュースを思い出す。
額から流れる汗が眼に入り、塩辛い味が口の中に広がる。
Tシャツは既に汗でしとどと濡れ、背中に貼り付いている。
しかし、真琴が隣を歩いていることを思うと、不思議と苦痛は和らぐ。
海風が吹くたびに、彼女の髪が踊り、その様子を横目で盗み見る。
彼女もまた汗ばんでいるが、それすらも美しく見える。
額に浮かぶ汗の粒が、朝露のように輝いていた。
そして俺は、この未知なる戦場へと一歩足を踏み出―――す・・。
*
📸 Instagram Story - AM 8:30
「海の家キャップお似合い〜!」
「キャップかぶせた瞬間、スタッフ感100倍🤣」
「似合いすぎて、もう海の家の顔です☀️」
#制服 #かわいい #海の家の主役 #朝からテンションMAX
あー、やっぱ緊張してる。
声が上ずってるし。でも一生懸命さは伝わってくる。
この子、多分真面目なタイプだな。
勇太とは正反対。勇太は適当だけど、巧くんは責任感強そう。
「初バイト?」
「あ、はい。海の家は初めてです」
「そっかー。最初はきついかもだけど、慣れたら楽しいよ」
「はい、頑張ります」
素直だな、この子。好感持てる。
でもちょっと待てよ、確か同い年だから、
この子はないな、この子は(?)
敬語もその内やめさせよう。
でもそれまでは、この子と心の中で呼ぶことにする(?)
「巧くん、どこから来たの?」
「電車で3時間くらいのところです」
「3時間!? マジで遠いじゃん」
「各駅停車で・・・・・・終点の方なので」
「よく来てくれたね〜。何でまた海の家のバイトを?」
「勇太に誘われて・・・正直、自分にできるか不安だったんですけど」
「今のところ全然問題ないよ。むしろ丁寧すぎるくらい」
「本当ですか?」
ちょっと安心した顔してる。可愛いな、この反応。
なんだろうな、これ。
「ところで率直に聞くけど、勇太のことどう思う?
正直に言っていいよ」
「え? あ、その・・・・・・」
困ってる困ってる。
男子にとって友情をおろそかにするのは切腹物のことなのだ。
「チャラいでしょ?」
「あ、いえ、そんな・・・・・・」
違います、とは言えないあたりで、
そう思っているんだな、と思う。
「正直でいいよ〜。私もそう思ってるから、
バイト仲間としては信用するけど、
人間としては全然信用していない」
毒舌しすぎたかな、と思ったが、巧くんは笑った。
「…ちょっと、軽いかもしれません」
「だよねー!」
巧くんがクスッと笑った。この笑顔、結構いいじゃん。
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