雨宿りの図書室
レブラン
君の事が……
僕は雨の日が嫌いだ。
傘をさしても空から降り注ぐ雫が地面に落ち、跳ねたのちにズボンにかかるからだ。
学生である僕は学校に行かないといけないのだが、家から学校までの距離は歩きでに十数分ほどだろうか距離はそれなりにある。
その間にどのぐらい濡れるかは容易に想像がつく。
「まだ雨降ってる……」
天気予報では今週いっぱいは雨だという。
教室の窓から外を見れば空は曇り、土砂降りで雨が降り注ぐ。
今は放課後なのだが、止みそうにない。
「仕方がないから図書室行くか」
傘はあるが、濡れるのが嫌だから小雨になるまで待ってみる。
図書館に入ると、数人が机の上にノートを広げ無言で勉強していた。
空いている椅子に鞄と傘を置くと適当に本を選ぶ。
「ウエルアシア大陸物語? まあこんなのでいいか」
読んだ事も見た事もない分厚い本。
席に戻ると、本のページを捲る。
書き上げる音や教科書を捲る音、雨が降り注ぐ音。廊下では帰ってない他の生徒の声。
「きみ、きみ!」
「ん?」
そう僕の事を呼ぶのは黒髪ロングの女子生徒。腕には図書委員と書かれた腕章。
「もうきみしかいないよ。戸締りするから」
僕は周囲を見渡すと、彼女と僕以外いなかった。
「あ、ごめん。ついつい読みふけってた」
「結構集中して読んでたね。確かそれってウエルアシア大陸物語?」
「よく知ってるね」
「私、これ大好きなの。きみも好きなの?」
「どうだろ? 今日初めて手に取って読んだんだけど、まだ序盤だけど中々面白いと思ったよ」
「序盤となると魔法使いのウイリアスが旅に出るところだね」
「まさかウイリアスが事件に巻き込まれるなんて」
「あれは驚いたねって、もう閉めなきゃ」
僕は慌てて本を元の場所に戻すと廊下をでた。
「さて、私は鍵を返すから気を付けて帰ってね」
「あの。明日も来ていい?」
「ええもちろん」
あれから僕は足しげく通う事になっては彼女と時間ギリギリまで感想を言い合った。
そんなある日――。
「私の仕事は今日でお終いなの」
「え?」
「引っ越しでね。親が転勤だから一緒に行くの」
次の日の放課後、僕は図書室に行くが彼女はいなかった。
僕は受付にいた別の図書委員の人に声をかけた。
「どうしたの? 呼び出して」
「好きです! あの図書館で話してから楽しくて」
「……ごめんなさい」
彼女は微笑んだ。
振られて悲しい気持ちはあったけど、僕の心は晴々とした。
外を見てみると降っていた雨も止んでいた。
明日は晴れるだろう。
雨宿りの図書室 レブラン @reburan
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