きれいなうつつ

垪和終佳

きれいなうつつ

手を引いて抜け出せなかったこのせかい 迎えたかった朝に怯えて


指一つ刻んだ痕は消せなくて、変わらぬことを今も祈って


光さす、痛みの先には誰も居ない。君の残像焼き切らむと。


届かず、手。その手を塞ぎ、わたしの一切 歌に宿して


無効の音――今でも心の声を枯らす。それでも響く、残された声


その断末私は未だ聞くことが出来ないながらも君を想って


苦しみを融かして貴方に伝えたい貴方の心で昇華されゆく


もういないあなたを愛すこの想い 向かうはあなたか、もしくは偶像


壊れゆく想いを無言で見届ける 確かに想った過去があるから


「またね」とも言わず世界を遺してく

   ──私が消えたら君も消えてく?


かなしみを抱えたわたしの このいのちあなたの眼には輝き映れば


過去のこと掴むその手も切り落とされ、ただその刃に苦しめられて


苦しみも生きてることのその意味も 意味を剥がされ、命に縋る


漂いを掴んで貴方に見せるのは、疲れてしまってただ死に進む


演劇は暗幕が下り過去の中ひかりはすべて私の内側

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きれいなうつつ 垪和終佳 @ha_gaaaa

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