第01話 03
“
そのような経緯を経て、わが家は大学の友人たちの溜まり場となっていった。そう、通学できる距離に住んでいる友人たちにとって、気軽に
そんな折、友人たちは耳にしたのだ。県外からこの大学に通おうという、奇特な人の噂を。それだけではない、なんと家を借りて、独り住まいをするらしいと。……その風聞は、まるで伝染病のごとくに広まった。噂は錯綜し、混線し、迷走した。百花繚乱な
これはのちほど聴いたのだが、友人たちはほぼ予測どおり、闖入者であるおれに対して期待を寄せ、また一方では身構えていたそうだ。なのでおれが、快く門戸を開き、招いてくれたことに、いたく感激したという。彼らは彼らで、都会の人間に対する偏見を、人づきあいを嫌い、淡泊な交友関係を好む、そんな人間像をいだいていた。だがそれは、良い意味で裏切られた。予想に反して来訪者は、人見知りをしない、付き合い易そうな人柄を具えていて、本当に良かったと、皆は感想を述べていった。おれはおれで、仲間外れにされてしまわぬか気を揉んでいたのだから、お互い様だ。すぎたことは水に流そう。……さて、随分と遠回りをしてしまったのだが、入学初日以来、おれの家に客が絶えた日はない。必ず誰かしらがいる。おれのプライヴェートは、皆無も同然だ。しかしおれはまったく気にならなかったし、疲れていたら放置して、自室に戻ってしまっても問題ない。みな騒ぐだけ騒いで、満足したら勝手に帰っていく。いちいちもてなそうとするから、気疲れしてしまうのだ。肩のちからを抜いて、ほどほどの加減で付き合うことが、関係が長持ちする秘訣だろう。皆もそれは承知していたし、また最大限の配慮を示してくれた。おれ自身としては、皆が来てくれること自体に喜びを見いだす
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