55皿目 虫。
チェックインはゆったりとしたソファに座り行われ、部屋に案内されてから、館内の施設とその利用方法の説明を受けた。
今回、ネットで探して見つけたこの旅館。検索画面で目を引いたのは、クワガタ獲り体験プランという謳い文句だった。さらに、野天風呂を貸し切れるというサービスも魅力的だった。
クワガタ獲りは二日目の夜に申し込んだ。貸し切り風呂は決められた時間帯の中で、35分間利用できるという。私は食後の時間に予約した。口コミサイトで好評だった『おがくず風呂』も妻の為に二日目の夕方に予約を取った。そして、私はみんなを迎える為に、再びビーチに向かった。
ビーチに着くと、妻と子供達は引き上げる準備をしていた。私は荷物を持ち、妻に予約した諸々の事を説明しながら、旅館までの道のりを歩いた。
ビーチ脇の公衆のシャワーで砂を落とさせたが、完璧とはいかず、そのままでは旅館の玄関が汚れてしまうので、裏口から入らせてもらう事になった。裏口の横に浮き輪を三つとビーチサンダルを干してもらい、まず子供達から館内にあがらせようとした時、太郎が唐突にしゃがみ込んだ。なにかを食い入るように見つめている。
どうした?太郎?さっさとあがれ。うしろがつかえているぞ。
「うわぁ!コクワガタのメスだぁ!」太郎が叫んだ。
なに?コクワガタのメスだって?こんな所に?
太郎がそれを捕まえようと、膝をつき手を伸ばした。この時、私は頭の中で、クワガタのメスがどんな姿だったかを思い出していた。さらにいくつかのキーワードが脳内を駆け巡った。
『旅館』『裏口』『昆虫』『メス』『姿』『形』『色』『夕暮れ』
キーワードから導きだされた答えは、危険な香りがした。
いかん!太郎!そいつはもしかすると・・・・G!
私は急いで太郎の腕を掴んだ。そして、太郎の手の先にいるモノを見た。予測が正しければ・・・そいつは・・・
しかし、それは、まぎれもなく、クワガタのメスだった。思い違いだった。私は大きく息を吐いた。
「明日、たくさん捕まえられるから、そのままにしときなさい」
こんなところにもクワガタがいるなんて・・・翌日の夜に申し込んだクワガタ獲り体験は、とんでもなく捕まえられるのだろうと、期待に胸を膨らませた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます