48皿目 天気は快晴3。

 「れぇ、お米は5合炊いれれ」

 運動会前夜。酔っぱらって帰って来た妻が、米を研ぐ私に向かって言った。

「5合?多くない?」

「おににり、らくさんつくるから」

 その6時間後、『おににり』は私が作ることとなった。なぜなら、妻が二日酔いになるからだ。


 午前の競技が終わり、お弁当の時間となった。少し前に飲んだドリンク剤が効いてきたらしく、元気になってきた妻。お弁当を食べられるだろうか?

 昼食は家族でとる。体育館と教室の一部が解放されたが、快晴のもと、校庭でお弁当を広げる家族が目立った。しかし、運動場のまわりにできる木陰のスペースは限られており、多くの家族でごった返していた。私たちもレジャーシートを広げた。四方には、同じマンションに住む家族や太郎と花子のクラスメートの家族が所狭しと陣取っていた。隙間なくびっしりと張り巡らされたシート。お隣りのお弁当に、手が届きそうなぐらいに近い。

 各家庭が大きなお弁当箱を広げた。あちこちで子ども達の歓声があがった。みな楽しみにしていたのだ。我が家も、数年前に買った大きな重箱を真ん中に置いた。

 「じゃ〜ん!!」私はもったいぶりながら蓋をとった。

「うわぁ〜い!タコさんだぁ!サクランボもあるよぉ!!!」花子が声をあげる。

 天気は快晴。家族の団らん。どこの家庭も笑顔が溢れていた。幸せのひと時。そんな和やかな雰囲気の最中・・・

 「これっ全部、お父さんが作ったんだよね!!すごいねっ!」

 花子の放ったこの一言が、まわりの空気を一瞬にして凍らせた。

(えっ・・・?お父さんが・・・?あれ・・・?ママは・・・?)

 妻は野球帽を目深にかぶったまま顔をあげない。周囲の視線がちらちらと我が家を突き刺した。さらに各家庭から『好奇心』という名の偵察衛星が、そこら中に打ち上げられた。

 衛星はまず、あかわいん家の家族構成を偵察した。

 パパ、ママ、アニ、イモウト、イジョウナシ、アリフレタカゾクコウセイ。

 衛星はその後、中心に置かれたお弁当にカメラを向け、お弁当の出来映えをチェック。

 イジョウナシ。イロドリアザヤカデ、オイシソウ。

 衛星がデータを分析しはじめた。

 オトウサンハリョウリスキ、インショクギョウニジュウジスル。

 ブンセキカンリョウ。

 衛星は自国にデータ分析の結果を送信しはじめた。

 『アカワインケニ、イジョウハアリマセン』

 なごやかな空気が辺りに戻った。周囲も箸がすすみはじめた。しばらくの間緊張していた妻と私も、ほっと一安心。付近は再び笑顔に包まれた。

 太郎がタコさんをとった。花子が唐揚げをとった。私はきんぴらをつまんだ。妻がおにぎりに手を伸ばした。

 おっ!食べられるのか!?大丈夫か!?朝からも何度も吐いていたというのに・・・ドリンク剤が効いたのかな?

 母がおにぎりを口にする姿を見て、花子がうれしそうに叫んだ。

「ママァ!もうだいじょうぶ?は治ったの!?」

 周辺各国が慌ただしくなった。新たな衛星を打ち上げる準備をはじめたのだ。

 気温25度。西の風、風速1メートル。湿度20%。天気は快晴。打ち上げ準備よし!

 『好奇心2号』発射!!

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