42皿目 劇場。

 学校から帰って来た太郎の爆弾発言に、だれもがびっくりした。

 ご存知の通り、太郎は忘れ物キングの称号を持っている。加えて、スーパーマイペース。

団体行動では、いつも置いてけぼりを食う。目につくもの全てに好奇心を寄せてしまい、寄り道をするからだ。協調性がない訳ではないが、気がつくとひとりで何か別の事をしている。自己中心的なのだ。父親譲りの性格であることは疑いの余地もないが、太郎のそれは、私を遥かに凌がしている。

 家族でお出かけすると、いつの間にか姿が見えなくなっている。目にしたものに気をとられ、私たちのことなど意識の中から抜けてしまうのだ。そんな訳だから、目的地に着くまでに、かなりの精神的労力を必要とする。目が離せないのだ。

 太郎はもう4年生。もっと、手のかからない子どもに成長してほしい。甘やかしすぎたのだろうか?

 妻は言う。

「ほんとに幼稚なのよね」それは、あきらめの口調。童顔、チビ助。身長や容姿と精神年齢は比例するのだろうか?太郎は道を歩く時、普通に母と手を繋ぐ。そして、母の顔を見上げながら、嬉しそうにテクテク歩く。その姿は園児のころから、まるっきり変わっていない。「もう、4年生でしょ。自分で歩けないの?」妻がため息をもらす。

 手を繋ぎながら歩く行為自体は、変ではない。ただ、繋いだ手から、母に身を委ねる雰囲気が存分に伝わって来るのだ。それは、幼い動物に備わる防衛本能の一種、守ってもらえるように、可愛く振舞うあの仕草だ。しかしながら、手を繋いでいないと、いつの間にかいなくなっている。まったく変わった子どもだ。

『自己中心的マザコンの忘れ物キング。ダメ男フェロモン満載の知ったか少年』そんな太郎が、あろうことか、学級委員に選出された。

 大丈夫か?4年1組。それでいいのか?4年1組。どこへ連れて行かれるかわからんぞ。

 30人学級、立候補7人の中で、15票。どんな手を使ったのかしらんが、自民党を大勝させた小泉劇場も真っ青だな。


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