【漫画脚本版】じんろーCO!(カドコミ漫画原作コンテスト【ナツガタリ'26】参加)

本尾 美春

第1話「はじめまして、人狼部」

『じんろーCO!』第1話「はじめまして、人狼部」

登場人物


真昼(まひる):主人公。高校1年生。ふわふわした髪のトロくてチョロい女の子。嘘をつくと声が震え、目が泳ぎ、語尾が消える──本人いわく「嘘をつくとき、『わたしは嘘をついてます』って全身で放送しちゃう」体質。色んな役を演じることに憧れている。


東雲 雫(しののめ・しずく):黒髪ロングのクールな少女。2年生。人狼部(申請中)部長。全国レベルの実力者だが、本話ではそれを知るのは読者だけ。


夕凪 燐(ゆうなぎ・りん):2年生。小柄で騒がしい。派手な戦術とロマンをこよなく愛する。


宵野 栞(よいの・しおり):1年生。眼鏡、三つ編み。ルールと規定の番人。振り回され型の常識人。作中では基本「宵野さん」と苗字で呼ばれる。


※COコスチュームについて:この世界の競技人狼では、役職をCO(カミングアウト)する際、対応した衣装を着用する文化・規定がある。占い師CO=とんがり帽子とローブ、人狼CO=狼の耳と尻尾。「衣装を着る=役を名乗る」「衣装を脱ぐ=役を捨てる」が本作の視覚言語の核なので、着脱の芝居は毎回丁寧に描いてほしいです。


1、全国大会・会場ホール(プロローグ/完全三人称)


薄暗い競技ホール。スポットライトの下、円形のテーブルを囲む高校生たち。観客席は固唾を呑む沈黙。卓上には各校の名札と、つまみかけのお菓子の小皿(※世界観の小ネタ。目立たせなくてよい)。


審判「それでは──夜が明けました。占い師の方、結果の報告をお願いします」


一人の少女が立ち上がる。とんがり帽子に星のローブ、腕に水晶玉──占い師のコスチューム。伏し目がちで、おどおどと不安げ。


占い師の少女「え、えっと……昨夜は、東雲雫さんを占いました。……結果は『人狼』、です」


ざわつく卓。名指しされた東雲雫──黒髪ロングの少女は、目を伏せたまま微動だにしない。


村人の少女、椅子を蹴って立ち上がる。


村人の少女「ちょっと待って! おかしいでしょそれ!」

占い師の少女「な、なにがですか……?」

村人の少女「雫はあんたの白進行で通ってたはずよ! 二日目にあんたが占って『村人』って言ったじゃない!」


※読者向けに卓の脇か枠外に小さく図解:「同じ相手に二回占い→結果が村人→人狼。ありえない矛盾=この占い師は偽物」


村人の少女「つまりあんたは偽占い師! なんで今さらそんな見え見えの……」


──ふ、と。


占い師の少女の肩から、力みが抜ける。


占い師の少女「当たり前じゃない」


顔を上げた彼女は、別人だった。


おどおどした気配は消え、口元には不敵な笑み。とんがり帽子を指先でつまんで放り、星のローブの留め具を外す。


※ここ、豹変の1ページ。前コマまでの「怯えた小動物」と同じ顔とは思えない目つきで。帽子とローブが宙を舞う。


占い師だった少女「もう──占い師の役は、おしまいなんだから」


はらり、とローブが床に落ちる。


村人の少女、顔から血の気が引く。


村人の少女「っ……なんで、本物を吊っちゃったのよ……あんた、狂人……!」


※枠外注釈(小さく):狂人=人間だが人狼陣営の勝利を目指す役職。占い師を騙って場を撹乱する。


(ナレ/地の文)昨日処刑されたのは、対抗でCOしていたもう一人の占い師──本物だった。


村人の少女(モノローグ)(残りは5人。人狼2、人間3。まだ人間の方が多い、まだ──)


コマ:卓を囲む5人の俯瞰。村人サイドに3つの白いシルエット。


だがその白いシルエットの一つ──狂人の少女が、ゆっくりと人狼側へ歩いて位置を変える。


コマ:白3・黒2の構図が、白2・黒3へ塗り替わる。


村人の少女(モノローグ)(違う。人間3のうち1人は、あっちの味方。ほんとうの村人は──たった2人)


狂人の少女「そういうことよ」


そのとき。それまで一言も発していなかった東雲雫が、静かに席を立った。傍らの衣装ケースを開ける。取り出したのは──狼の耳と、尻尾。


しん、と会場が凍る。


雫は髪を整えるような自然な手つきで、狼耳を装着する。氷のように冷たい声。


雫「人狼CO」


続けて、卓の向かいでもう一人が狼耳を着ける。こちらは楽しくてたまらない、という笑顔で。


相方の少女「人狼CO♪ ──PPいこっか」


※枠外注釈:PP(パワープレイ)=人狼が正体を明かし、狂人と合流して投票数で押し切る決着手段。狼2+狂人1=3票。村人2票では止められない。


村人の少女、崩れるように椅子に座り込む。


村人の少女「……いつから。いつから、仕組んでたのよ……」


狂人の少女はローブを拾い上げもせず、ただ雫のほうへ流し目を送る。


狂人の少女「──ね。ぜんぶ、あなたの言った通りになったわ」


※雫は答えない。ここで回想の挿入コマを一枚だけ:二日前の議論中、雫が発言する何気ない横顔。セリフは入れない(あるいは吹き出しを白抜きで潰す)。「この盤面の脚本家は雫」とだけ伝わればよく、手口は明かさない。


審判「──投票の結果、人狼陣営の勝利です」


拍手が会場に響く。健闘を称え合う選手たち。その中で、雫だけが静かに狼耳を外し、ケースに仕舞う。


最後のコマ:立ち去る雫の目のアップ。歓声も拍手も映していない、狩りを終えた狼の目。


(ナレ)──そして、翌週。


(ナレ)運命的な出会いが、一人の少女を待っていた。


暗転。


2、高校・演劇部の部室(放課後)


※ここからカメラは真昼に寄る(三人称・真昼寄り視点)。プロローグの薄暗いホールから一転、西日の入る明るい部室へ。説明ゼロで始めること。読者にはまだ、この子が誰かも、何をしに来たかも教えない。


開幕コマ:いきなり、演じている真昼の顔のアップ。


真昼「──ならばこの首、差し上げましょう」


引きのコマ。演劇部の部室。机を寄せて作った即席の舞台に、制服のままの真昼が立っている。台本を胸に、まっすぐ背筋を伸ばして。周りにはパイプ椅子の上級生が数人。


真昼「けれど憶えておいて。あなたが奪ったのは、王女ではなく、ひとりの女の生涯です」


すっ、と真昼が伏し目になる。西日が横顔にかかる。


※ここは大ゴマ推奨。「役に入っている真昼」を、この話でいちばん綺麗な絵で描いてほしいです。後の崩れ方との落差が本話の肝なので、ここでの真昼は堂々として、少し大人びて見えるくらいで。


しん、と静まる部室。──ぱち、ぱち、と拍手。


演劇部の先輩A「……え、上手くない?」

演劇部の先輩B「中学どこ? 演劇部いた?」

真昼「い、いえっ、独学ですっ」


※前コマまでの王女はどこへやら、素に戻った瞬間、姿勢も表情もふにゃっと崩れる。同一人物と思えないくらいでいい。


先輩A「独学でこれ? うちの新入生、当たり年じゃない?」


先輩A、真昼が机に置いた台本を何気なく手に取る。──ぶわっと、無数の付箋。


※コマ:ボロボロに使い込まれた台本。上端から色とりどりの付箋が何十枚もはみ出している。


先輩A「うわ、すご……何これ、全部あなたが?」

真昼「あっ、それは、その……やってみたい役に、印をつけてて」


先輩A、ぱらぱらとめくる。付箋のページを追う。


先輩A「王女……はさっきのね。魔女、探偵、悪の女幹部……通行人B? 喋る犬!?」

真昼「はいっ!」

先輩A「なんで端役にまで貼ってあるの?」

真昼「え、だって……やってみたいので」


※真昼、心底不思議そうにきょとんとしている。ここは説明させないこと。この一言と付箋の絵で、彼女の願いは伝わります。


先輩A、先輩Bと顔を見合わせて、ちょっと笑う。悪意はまったくない、微笑ましいものを見る笑い。


先輩B「面白い子だ。──じゃあ、次エチュードいってみよっか。台本なしね」


※枠外注釈:エチュード=台本のない即興劇。


真昼「え、えちゅーど」

先輩B「即興のお芝居。設定だけ渡すから、その場で作るの。役者の基礎体力みたいなものだから」

真昼「や、やります! やらせてください!」


真昼、ぐっと拳を握る。目がきらきらしている。


先輩B「設定はね──『あなたは花屋の店員。閉店間際のお客さんに、本当は売り切れているバラを、あると言い張って引き留める』」

真昼「ばら……ある、って言う……はい!」

先輩B「はい、スタート」


真昼、すう、と息を吸う。背筋が伸びる。さっきの王女と同じ、役に入る所作。表情が「店員の笑顔」になる。


真昼「いらっしゃいませ! バラをお探しですか? はい、ございま──」


──ぴた。


※コマ:真昼の顔。笑顔のまま、そこだけ時間が止まったように固まる。


真昼「ござ……」


目が、泳ぐ。


真昼「ござい、ま…………」


声が、震える。


真昼「…………ないです」


※沈黙のコマ。真昼、自分の口を両手で押さえる。


真昼「あっ、ちが……売り切れです、ごめんなさい、いま嘘つきました、すみません……!」


深々と頭を下げる真昼。数秒の沈黙のあと、部室にどっと笑いが起きる(※あくまで和やかな笑い。この部を意地悪に描かないこと。)


先輩B「あはは、正直すぎでしょ! いいのいいの、もう一回。今度は『あります』って言い切るだけでいいから」

真昼「は、はいっ!」


真昼(モノローグ)(大丈夫、大丈夫。さっきの王女さまはできたんだもん)

(『あります』って、四文字。言うだけ。言うだけ──)


真昼「バラ、あり……」


※コマ:真昼のアップ。汗。視線が左下へ滑る。


真昼「あり、ま…………あるわけないじゃないですかぁ……!」


半泣きで机に突っ伏す真昼。笑い声が上がる。


先輩A「もうダメだこの子」

先輩B「ふふ、素直なのはいいことよ」


──先輩B、笑いをおさめる。そして真昼の前にしゃがみ、目線を合わせる。


先輩B「ねえ。……台本、暗記してきたでしょ。何ページも」

真昼「……はい」

先輩B「あれだけ演れる子が、なんで『あります』の四文字が言えないんだと思う?」

真昼「…………」


真昼、答えられない。


先輩B、困ったような、けれど優しい顔で。


先輩B「あのね。演技はね、嘘とはちょっと違うんだ。書かれた本当を、生きるっていうか……」


先輩B、言葉を選ぶ。選んだうえで、それでも言う。


先輩B「──あなたの場合は、たぶん、その前の段階かな」


※コマ:真昼の顔から、すとん、と光が消える。さっき王女を演じていた顔と、同じ顔とは思えないくらいの、無表情。


真昼「…………はい」


先輩B、慌てて。


先輩B「あ、才能ないって意味じゃなくて! 時間かければ絶対──」

真昼「はいっ、ありがとうございました! あの、また、考えます!」


真昼、ぴょこんと頭を下げ、台本を胸に抱えて部室を出ていく。笑顔で。──その笑顔が、上手すぎるほど自然なのが、逆にいたたまれない。


※ここ、先輩たちが「あ……」と手を伸ばしかけて止める1コマがあると、この演劇部が悪者じゃないことが読者に伝わります。


ドアが閉まる。



3、同・旧校舎の廊下(夕方)


夕陽の差す廊下を、とぼとぼ歩く真昼。台本を胸に抱えている。笑顔はもう、ない。


真昼(モノローグ)(……知ってた)

(誰かが書いてくれた言葉なら、いくらでも言えるのに)

(自分でつく嘘は、ひとつも言えない)

(嘘をつこうとすると、からだ全部が「いま嘘ついてまーす」って放送しちゃうんだ)


真昼、立ち止まって台本を見下ろす。はみ出した付箋。


真昼(モノローグ)(……わたしじゃない誰かになるのって、そんなに、いけないことかなあ)


──そのとき、ドアの向こうから、声。


声(燐)「私が占い師よ! 昨夜、あなたを占ったわ!」

声(栞)「嘘です! 私こそが本物の占い師です!」

声(燐)「対抗CO!? 上等じゃない、水晶玉はひとつ……つまり本物もひとりぃ!」


真昼、足を止める。ばっと顔を上げる。


真昼(モノローグ)(──お稽古の、声……?)


ドアの上の看板:『人狼部(申請中)』


真昼(モノローグ)(じんろう……オオカミの劇団、とか……?)

(対抗? シーオー? ……よくわかんないけど──)


コマ:ドアの磨りガラス越しに、とんがり帽子のシルエットが二つ、揉み合っている。


真昼(モノローグ)(こっちの劇団のほうが、なんか、たのしそう)


真昼、ドアに手をかける。がらり。


見開き推奨:部室の全景。

窓際で、とんがり帽子+ローブ姿の燐と栞が、一個の水晶玉を両側から引っ張り合っている。壁にはハンガーラックいっぱいの衣装──狼の耳、尻尾、帽子、ローブ、リボン。中央には円卓。卓上にはトランプ大のカードと、お菓子の山。


燐・栞「「…………」」


水晶玉を取り合う姿勢のまま、ぎぎぎ、とドアのほうを向く二人。


真昼「……あ、あの! 見学……いいですか!」


一瞬の静寂ののち。


燐「「「────いらっしゃあああああい!!」」」


※燐、水晶玉を放り出して跳んでくる(栞が慌ててキャッチ)。


燐「見学!? 入部希望!? 入部希望よね!? やったー! 5人目ーー!!」

栞「燐先輩、落ち着いてください! まだ見学って言ってます!」


燐、真昼の両手を握ってぶんぶん振る。


燐「あたし夕凪燐! 2年! で、こっちの眼鏡が宵野栞、1年! あなた1年? 1年よね? タメじゃん栞!」

栞「自己紹介の手順というものが……宵野です。えっと、あなたは……」

真昼「ま、真昼です! 1年です! ……あの、ここって、演劇部の……ええと、支部、みたいな……?」


燐と栞、顔を見合わせる。


燐「んん? 演劇ぅ?」

真昼「だ、だって、さっき……『私が占い師よ!』って、お稽古してたから……」

栞「ああ……あれは稽古というか、騙り筋の発声練習というか……」

燐「ま、半分当たりよ半分! ここはねえ──騙して騙されて食べたり食べられたりする、汁婆式合意形成ゲーム『人狼』を極める部!」

栞「一語も正確じゃない説明やめてください。……真昼さん、人狼ゲームはご存じですか?」

真昼「な、名前だけ……オオカミ役の人が、隠れてて……みんなで探す……?」

栞「概ね合ってます!」


栞、眼鏡を直し、すっと姿勢を正す。(※この子は説明モードに入ると背筋が伸びる。後の占い師適性の予告。)


栞「村人に化けた人狼を、話し合いと投票で見つけ出すゲームです。人狼は正体を隠すために嘘をつき、村人は嘘を見破る。──言葉だけで戦う、騙し合いの競技です」

真昼「へ、へええ……」


真昼の視線が、壁の衣装ラックに吸い寄せられる。


真昼「……あの、じゃあ、この衣装は……?」

燐「よくぞ聞いた!」


燐、ラックからとんがり帽子をむんずと掴み、真昼の頭にぽすっと被せる。


燐「競技人狼ではね、役職を名乗るとき──COっていうんだけど──その役の衣装を着るの! 占い師ならこの帽子と水晶玉! 人狼なら狼耳と尻尾!」

栞「『じぶんはこの役です』という宣言を、誰の目にも見える形にする……競技規定にもある正式な文化です」


真昼、鏡(あるいは窓ガラス)に映った、とんがり帽子の自分を見る。


コマ:帽子姿の自分と目が合う真昼。ここは丁寧に、静かな1コマで。


真昼(モノローグ)(……役)

(役職。役を、名乗る。役に、なる──)


真昼「……あのっ」


真昼、帽子を両手で押さえて、勢いよく振り返る。


真昼「わたし、入部しま……あでも待って、わたし、嘘つけないんです!! 嘘つくと声が震えて目が泳いで全身で放送しちゃうんです! 騙し合いのゲームなんて絶対向いてな──」

燐「採用!!」

真昼「ふぇ!?」

燐「嘘がつけない? 最っ高じゃない! あんたの『白』は誰よりも信用されるってことよ!」


※枠外注釈:白=村人(無実)側と見なされること。


栞「燐先輩、勧誘に必死すぎ……でも、実はそれ、一理あるんです」

真昼「え……?」

栞「人狼は、嘘をつくゲームであると同時に──『誰の言葉が本当か』を見極めるゲームですから。正直さは、弱点とは限りません」

燐「それにうちの部、部員4人でしょ? 正式な部活は5人からなの! だから看板もずーっと『申請中』! あんたが入れば、うちは今日から本物の部!」

真昼「わ、わたしが入ると……本物に……」

燐「なるなる! なっちゃう! はいこれ入部届! ペンもある! お菓子も食べ放題!」

栞「お菓子は部費です! ……あ、でも競技中の糖分補給は公式に推奨されてます。頭、ものすごく使うので」

真昼「た、食べ放題……本物の部…………」


真昼、ペンを受け取る。きらきらした目で。


真昼(モノローグ)(誘われてる。すっごく誘われてる。……えへへ)


※チョロさの見せ場。悩む素振り0.5コマで即サイン。


真昼「よろしくお願いしますっ!」

燐「うおおおお5人目ぇぇ!! 今日から正式! 人狼部!!」

栞「申請書類は明日出します! ……ようこそ、真昼さん」


──と、そのとき。


部室の奥、衣装ラックの陰のドア(準備室)が、静かに開く。


声「──騒がしいと思ったら」


コマ:逆光気味に、黒髪ロングの少女が現れる。


読者は知っている。プロローグの、あの狼だ。


燐「あっ、部長! 聞いて聞いて、5人目! 5人目が来たの!」

栞「東雲部長。新入部員の、真昼さんです」


雫、本を片手に、静かに歩み寄ってくる。真昼、あわてて頭を下げる。


真昼「ま、真昼です! よろしくお願いします! あの、わたし、なんにもわかんないんですけど、がんばりま──」


顔を上げた真昼と、雫の目が、合う。


コマ:見つめ合う二人。無音。


真昼(モノローグ)(──わ)

(きれいな人。それに、なんだろう……この人の「よろしく」を聞く前なのに──)


雫「……東雲雫。部長をしています。よろしく」


ふ、と目を細める雫。口元だけの、静かな微笑。


真昼「は、はいっ! よろしくお願いします、東雲先輩!」


真昼、ぱあっと笑う。つられて燐と栞も笑う。夕陽の部室、円卓、衣装ラック、四人。


──その和やかな1コマの端で。


最後のコマ:真昼の笑顔を見る、雫の目のアップ。


プロローグの最後と同じ目──ではない。狩りの目でもない。ただ、何かを推し量るように、じっと。


(ナレ)このとき真昼は、まだ何も知らない。


(ナレ)目の前の先輩が、どんな「役者」なのかも──


(ナレ)自分がこれから、どんな舞台に立つのかも。


第1話・了

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