少女は微睡に漂う
バーニーマユミ
きっと振り返る頃には、私はまだオトナじゃなかった。
キリスト教における"七つの大罪"とは人間を罪や悪徳に導く可能性があるとされる、傲慢、嫉妬、憤怒、怠慢、強欲、暴食、色欲ーー…誰しもに備えられている欲求や感情である。
イザベルは熱心なキリスト教徒ではないが、"七つの大罪"なら昨今、
イザベルというのはネット上で使っている偽名であり、本名ももちろん、ちゃんとある。しかし念のために隠しておきたかった。
数ヶ月前、『簡単に大金になる仕事がある、お前がいたら助かる』なんて言葉にまんまとのせられ、ネット上になんちゃってポルノ作品を投稿し始めた。しばらくは無反応だったネットユーザーたちも、イザベルの美貌を認めると着実にフルサイズのデータが売れ始めた。ーー最初は顔にモザイクがあったし、顔は出さなくてもいい約束だったがそうなると、ほとんど売れなかった。仲間のひとりの思いつきで素顔を晒すことになったイザベルは内心、まだ葛藤していた。本当にこの選択でよかったのか、と。自身も周りも19、20歳のまだ
大学はとっくに中退してしまった。アルバイトも今はしていない。行為に及ぶためだけに用意した部屋で、決まった顔ぶれと、カメラの前でただ交わる。ユーザーからの要求に応えるあまり、小さな怪我をすることが近頃は少なくなくなってきた。
イザベルは立ち止まり、手のひらを見つめる。一体、これはなんの罪になるんだろう。
クラブにはしばらく行ってないし、そもそも遊びに出ること自体が久々だった。
黙って家を出た。見知らぬ土地によく知っているはずの友だち達とどうにか部屋を借りたまではよかった。バカみたいにビデオばっかり撮って、バカみたいに団子になって、それでもしばらくは面白かったけど、毎週毎週、数十ドルのために裸になるのは割に合わない気がし始めていた。
あいつらは確かに言った。『簡単に大金になる仕事がある』って。嘘っぱちだ。
この数日、慣れないハードな
横になっても座っていても痛むし、寝つけないならいっそ、イビキのうるさい部屋を抜け、夜を眺めていようかとサンダルを履いて外に出た。
時計も携帯も何にも持たず、ただ夜を歩く。"今"は分からないけども、人はちらほら歩いていて、空は賑やかだった。
クラブの看板が眩しい。その辺を歩いている同年代らしき女の子たちはみんな、素肌を夜風に晒し、変に盛り上がって見えた。
Tシャツにデニムにサンダルーーおしゃれをしようなんて考えは微塵も浮かんで来なかった。
数ヶ月前なら多分、家を出るまでにしばらくかかったに違いない。クローゼットを引っ掻き回して、メイクもずいぶん悩んで。きっとアイメイクに手間取って。
何してるんだろうな。私。もっと簡単に稼いで豪華な生活をしてるはずだったのに。
バカみたい。こんな夜にうずくまってるなんて。
少女は微睡に漂う バーニーマユミ @barney
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