47話 絶対絶命


拳と拳がぶつかり合うたびに、大地が悲鳴を上げた。


「――速いな、坊主」


マグルスが、口の端に笑みを浮かべた。


「だが、まだ足りない」


「くっ……!」


マークの拳が弾かれる。巨躯に見合わぬ速さと膂力に、防戦を強いられていた。


――ビビットのところに、行かなきゃいけないのに。


その焦りが、拳に乱れを生んでいた。


***


「舐めるなよ、坊主」


マグルスの拳が、マークの脇腹に突き刺さった。


「がはっ……!」


吹き飛ばされ、瓦礫の山に叩きつけられる。


「なかなか粘るじゃないか。だが――」


マグルスが、悠然と歩み寄ってくる。


「この程度で、俺を止められると思ったか」


「くそ……」


マークは、震える足で立ち上がった。全身に、鈍い痛みが走る。


***


再び、拳を構える。だが、明らかに動きが鈍っていた。


「まだやるのか」


「……当たり前だろ」


マークは、血の滲む口元を拭った。


「ここで、負けるわけには……いかねえんだよ」


「意地だけで、勝てるほど甘くない」


マグルスの拳が、再び唸りを上げた。


「がっ……!」


避けきれず、まともに食らう。体が宙を舞い、地面を転がった。


***


「立て」


マグルスの声には、侮蔑の色すら滲んでいなかった。ただ、純粋な力の差を、突きつけるような響きだった。


「……」


マークは、なんとか片膝をついた。視界が、霞んでいる。


――くそ、まだだ。


――こんなところで、終われるかよ。


だが、体は正直だった。何度も立ち上がろうとして、その度に力が抜けていく。


***


「悪いが、そろそろ終わらせてもらう」


マグルスが、拳を大きく振りかぶった。


「これで、決着だ」


巨大な拳が、マークへと迫る。


「――っ!」


避ける力すら、残っていなかった。


拳が、目の前に迫った、その瞬間――


***


遠く、崩れた瓦礫の向こうから、微かに声が聞こえた気がした。


「――マーク!!」


聞き覚えのある声だった。だが、それが本当に届いたものなのか、それとも自分の願望が生んだ幻聴なのか、マークにはもう判別がつかなかった。


拳が、目前に迫る。


「……ビビ、ット……」


かすれた声で、その名を呼んだ。


意識が、暗転する寸前――マークの拳に、微かな痺れが走った気がした。

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