46話 散り散りの戦場


崩落の衝撃で吹き飛ばされたマークは、瓦礫の中から身を起こした。


「……っ、てて」


周囲を見回す。さっきまで隣にいたはずのビビットも、イズマたちの姿もない。


「ビビット! おーい!」


呼びかけても、返事はなかった。崩れた王宮の残骸が、視界を遮っている。


「くそ、はぐれちまったか……」


***


「――逃げても無駄だぞ」


低い声が、瓦礫の向こうから響いた。


見上げると、マグルスが悠然と立っていた。


「継承式まで、あと三時間」


「三時間……?」


「その間に、俺たちアンクル5がお前らを潰す。継承は、行われない」


マグルスが、拳を鳴らした。


「お前は――俺の相手だ」


***


「上等だ」


マークは、拳を構え直した。ベロニカとの修行で得た「覚悟」が、静かに全身を巡っていく。


「ビビットのところに、行かせてもらうぜ。……お前を、倒してからな」


「吠えるな」


マグルスが、地を蹴った。


拳同士がぶつかり合う。轟音とともに、崩れた瓦礫がさらに砕け散った。


***


一方――王宮の別の区画では、イズマとマミが立ち尽くしていた。


「ここは……?」


「厨房の方まで飛ばされたみたいだな」


イズマが、周囲を見渡しながら呟いた。


「――お邪魔虫が二匹、迷い込んだか」


声とともに、蟹のような甲殻を持つ人型の怪物――グラノダが姿を現した。


「俺が相手だ、氷野郎」


「マミ、下がってろ」


イズマは、氷の銃を構えながら告げた。


***


さらに別の区画では、グレンが単身、様子を窺っていた。


「この気配は……」


背後から、鳥の翼を持つ人型の怪物――ブルーシーが舞い降りてくる。


「見つけたぞ、赤い装束の男」


「――ちょうどいい。憂さ晴らしに付き合え」


グレンの拳に、炎が纏わりついた。


***


そして、崩れた庭園の一角では、マミが一人、緊張した面持ちで立っていた。


「イズマ……」


先ほどの戦いで、いつの間にかグラノダとの戦闘に巻き込まれ、はぐれてしまっていた。


「――可愛いお嬢さん、独りぼっちかい?」


泡を纏った蛙のような怪物――バブルスが、ぬめった声で語りかけてきた。


「私は、独りじゃない」


マミは、静かに答えた。


心の奥で、微かな気配が――ローズラが、答えるように蠢いた。


「……ふふ、面白そうじゃないか」


その声に、マミは小さく笑った。


「行くよ」


花の力と、ローズラの力。二つの気配が、静かに重なり合っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る