41話 プラズマ国
修行を終えたマークたちは、それぞれの場所からプラズマ国を目指し始めていた。
「ビビットの国、か……」
異空間を抜けたマークの目の前に広がっていたのは、金属質な建造物が立ち並ぶ、近未来的な国だった。空には、電気を帯びた雲が流れている。
「……ここが、電気の国か」
一人、そう呟く。ベロニカとの修行を終えて以来、その拳には以前とは違う静かな力強さが宿っていた。
***
国の入り口に差し掛かったところで、マークは一人の少年に呼び止められた。
「あの、すみません。もしかして……ビビット様の、お知り合いですか?」
「え……?」
振り返ると、人懐こそうな顔つきの少年が立っていた。肩には、小さな天使の羽を持つモンスターが乗っている。
「俺は、クルット。この子は、相棒のミアル」
「ビビ!」(よろしく!)とでも言うように、ミアルが小さく羽を羽ばたかせた。
「……マークだ。確かに、ビビットとは知り合い、っていうか」
「本当ですか!」
クルットの顔が、ぱっと明るくなった。
***
「実は、ずっとビビット様の噂を聞いていて……。今日、王宮で継承式があるんです」
「継承式?」
「はい。ビビット様が、正式に次の王様になるんです」
その言葉に、マークの胸がざわついた。
「王様……ビビットが……」
「ご存知なかったんですか?」
「いや、知ってはいたけど……」
十年間、ただの相棒だと思っていた存在が、この国では「王子」として扱われている。その事実の重みを、改めて突きつけられた気がした。
***
「なあ、クルット。お前、ビビットのこと、詳しいのか」
「はい。俺、昔……ビビット様に、助けてもらったことがあるんです」
クルットは、懐かしそうに目を細めた。
「まだ小さい頃、川に落ちて溺れかけたことがあって。そのとき、たまたま通りかかったビビット様が、助けてくれたんです」
「ビビットが……」
「王族なのに、偉ぶるところが全然なくて。……本当に、優しい方なんです」
その話を聞きながら、マークの中で、知らないビビットの一面が、少しずつ形になっていった。
***
「今日の継承式まで、あと三日あります」
クルットが、真剣な顔で言った。
「マークさんも、行かれるんですよね? 王宮に」
「……ああ、もちろんだ」
答えながら、マークは静かに拳を握った。
「ビビットに、会いに行く」
「よかったら、俺が案内します。王宮までの道、詳しいので」
「頼む」
こうして、マークとクルットは、王宮を目指して歩き始めた。
***
一方その頃――
イズマもまた、単身プラズマ国に足を踏み入れていた。
「権力のクリスタル、か」
懐から、これまで集めたクリスタルを一瞥する。
「ここにあるってことは……継承式の場所に、間違いねえな」
マイルを失った今、隣に相棒の姿はない。だが、その胸には、以前とは違う静かな熱があった。
「マミ……お前は、来なくていい」
一人、そう呟く。
背後には、それでも黙ってついてくるマミの姿があった。
「一人で行かせるわけ、ないでしょ」
「……好きにしろよ」
イズマは、小さくため息をつきながらも、それ以上は何も言わなかった。
***
そしてグレンもまた、単独でプラズマ国の裏路地を進んでいた。
「全世界政府の気配が、この国にもあるな」
修行を終えたその目には、以前よりも鋭い観察眼が宿っていた。
「継承式……何かが、動く」
炎を纏った拳を、静かに握りしめる。
「アヌーへの雪辱、そのついでに――色々と、探らせてもらうぜ」
四者四様の思惑を乗せて、それぞれの足が――プラズマ国の中枢、王宮へと向かっていた。
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