概要
餌代を削った翌朝、東京の地下が唸り始めた。
俺、三ツ谷朔はダンジョン庁の非戦闘職。肩書きは給餌業務担当、通称「餌やり係」。三年間、毎朝三時に起きて塩だけの握り飯を六つ握り、大手町の地下四十メートルで眠る白い巨獣の皿に並べてきた。それだけの仕事だ。そして年度末、行革でその仕事は「費用対効果なし」と判定され、俺は解雇された。最後の餌やりの日、三年間一度も動かなかった巨獣が初めて目を開け、俺の名を呼ぶ。「明日は、来ないのか」。地方の役場に拾われた俺が小さな魔物を手懐け始めた頃、首都の地下が唸り出す。餌やりは残飯処理ではなく、世話であり、代金だった。切ってはいけない仕事を切った首都と、それを知らずに握り飯を握り続ける男の、乾いた現代ダンジョン譚。
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