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概要
あの日届かなかった一貫は、今も握られている。
佐倉源六、55歳。頼れるものは、一丁の柳刃包丁と、長年磨いてきた腕だけ。
王都の大市場、最果ての魚廃棄場の隣に、源六はぽつんと店を構える。名は『サクラ食堂』。
誰もが「毒魚」と恐れて見向きもしない魚を、源六は迷いなく捌き、極上の一貫へと変えてみせる。天涯孤独だった少年カイはその腕に惚れ込み、貴族の令嬢テンは隠れて店に通い詰める――そんな小さな食堂は、少しずつ、王都の片隅で噂を呼び始める。
だが源六には、この世界に流れ着く前――昭和の下町で交わした、たった一つの約束があった。
あの日届かなかった一貫は、今も握られている。
ギフトなし。無双なし。それでも人の心を動かす、不器用な男の異世界飯物語。
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