第48話 直すべきなのは避難所であって、住民じゃない

再起動方法は、ひどく面倒だった。


湊の【迷宮改変】は使えない。


E-07を中枢へ接続する方法は却下。


残るのは、人の手で壊れた設備を一つずつ直すことだった。


「普通の修理だな」


「我が主が最も苦手とする種類の問題でございます」


「言い方」


アデルが旧式回路を解析し、レナが魔力暴走を抑え、ルゥが崩落箇所を探す。


湊は運ぶ。


配線。


部品。


工具。


水。


かつてASTRAでやっていた、ただの荷物持ちだった。


「なんか懐かしいな」


レナが振り返る。


「嫌じゃないの?」


「何が?」


「また荷物持ってる」


湊は少し考えた。


「必要だから持ってるだけだし」


昔とは違った。


命令されているわけでもない。


見下されてもいない。


誰かが楽をするためだけでもない。


E-07が何度も止めようとした。


「非効率です」


「うん」


「私を接続すれば三十分で復旧します」


「でもE-07いなくなるんだろ」


「人格保持は任務に不要です」


「俺たちには必要かも」


E-07は答えなかった。


六時間後。


魔力炉が動いた。


一パーセント。


三パーセント。


七パーセント。


照明が一列ずつ点灯する。


枯れていた給水管から、水が落ちる。


空調が低く唸る。


【SANCTUARY NODE:EMERGENCY ONLINE】


「完全復旧じゃないな」


「十分でございます」


アデルが言う。


「少なくとも、この場所は再び誰かを迎えられる」


E-07は自分の胸へ手を当てた。


「……私も残存しています」


「よかったな」


「はい」


短い返事だった。


だが今までで一番、人間らしく聞こえた。


SYSTEMが通知を出す。


【外部Sanctuary:緊急復旧】


【住民継続性:維持】


SPは増えなかった。


代わりに、別の表示が現れた。


【RESTORATION NETWORK:1/??】


「これ、他にもあるってことだよな」


アデルが頷く。


「恐らく世界中に」


その直後。


E-07が地下深部を向いた。


「一件、訂正があります」


「何?」


「当Sanctuaryの住民信号は、私ではありません」


全員が止まった。


「私の分類は管理個体です」


E-07は暗い最深部を指した。


「住民信号は、さらに下層から発生しています」

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