第33話 魔族が住み始めたら、本当に魔王城と呼ばれ始めた
ヴェルナが正式に残った翌日、地上のニュースは朝から騒がしかった。
【《魔王》湊、魔族個体を庇護】
【人類圏との敵対意思か】
【多種族武装勢力形成の可能性】
食堂の端末を見て、湊は眉を寄せた。
「武装勢力って、誰のこと?」
全員が黙った。
湊が周囲を見る。
レナ。
ルゥ。
シエラ。
ヴェルナ。
フィア。
ミノタウロス。
ピィ。
「……俺たち?」
「今気づいたの?」
レナが呆れた。
ヴェルナは腕を組む。
「外から見れば、かなり危険な集団だ」
「でもミナは料理人だよ」
ミナが困ったように笑う。
「私を基準にしないでください」
その日の配信は、開始三分で視聴者数が過去最高を更新した。
『魔族いるってマジ!?』
『本当に加入したの!?』
『魔王軍完成してて草』
『人間、獣人、妖精、アンデッド、魔族、ミノタウロス、フェニックス』
『属性盛りすぎだろ』
湊はカメラを持って食堂へ入る。
「今日は新しく住むことになった人を紹介します」
ヴェルナが顔をしかめる。
「私を配信に出すのか」
「嫌なら映さないよ」
「……いや」
少し間を置いて、ヴェルナはカメラの前へ立った。
「ヴェルナだ。魔族領西辺、黒角族出身。現在はここに滞在している」
コメント欄が止まった。
数秒後、一気に流れ出す。
『普通に喋ったあああ』
『魔族って会話できるの!?』
『教科書と全然違う』
『いや当たり前だろ知性種だぞ』
『角かっこいい』
ヴェルナが小さく眉をひそめる。
「人間側では、我々は喋らないと思われているのか?」
「一部ではね」
レナが答える。
ヴェルナは呆れたように息を吐いた。
「魔族側では、人間は毎朝戦争計画を立てていると教えられるぞ」
湊が言う。
「俺、朝はだいたいパン食べてる」
『草』
『戦争より朝飯』
『魔王の日課:パン』
配信の空気が緩んだ。
その後、ヴェルナは魔族領の文化について話した。
食事。
家族。
交易。
子どもの教育。
戦争とは関係のない、普通の暮らし。
視聴者の反応も少しずつ変わっていった。
『魔族にも普通に街あるんだ』
『そりゃあるだろ』
『敵ってラベルだけで何も知らなかったんだな』
配信終了後、ヴェルナはしばらく端末を見ていた。
「変な気分だ」
「何が?」
「昨日まで、人間は敵だと思っていた」
「今日は?」
「……少なくとも、全員ではない」
ルゥが横を通りながら言う。
「私も同じだった」
シエラが頷く。
「我もだ」
フィアが胸を張る。
「フィアは今も半分くらい人間嫌いなの!」
「半分残ってるんだ」
「残ってるの!」
SYSTEMが静かに通知を出した。
【異種族間相互理解:成立】
【
【SP+68】
湊は表示を見た。
「共同体」
「城ではないのか?」
ヴェルナが聞く。
「SYSTEMまで城って言わなくてよかった」
「そこなのか」
その夜。
地上の複数国家が、Sanctuaryについて初めて公式協議を始めた。
議題名は、
【
湊本人は、その頃ちょうど、増えた住人用の靴箱を作っていた。
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