#17 漫画
#17 漫画
「悠仁ってさ、好きな漫画とかあるの?」
…………。
幼馴染に言うような内容ではない。
「特にない」
「えー、ないの?」
……やめろ。
……くっ。そんなに純真な目で見てこないでくれ。
「こんなに漫画置いてるのに?」
そう言って、真白は部屋に備え付けの本棚を指差した。
そっちか。
……まあ確かに、漫画は五百冊ほど置いてるけど。
いや、うん。そりゃそうだよな?
まーさか、幼馴染がそんな理由のわからない事を聞いてくるはずがないじゃないか。
「……まぁ、確かにな。それなら、ワンピースとか?」
「えぇ?ほんとに?」
「ああ、うん。続いてるだけあってオススメだぞ?」
「でも、百冊くらいあるじゃん?」
言いながら、真白はワンピースの一巻を取り出してくる。
「まぁ、確かにな」
一巻を開きながら、
「……夏休み中に読み終わるかな?」
と聞いてきた。
夏休み中、か……。
「確かに、夏休みも、…もうすぐ終わるもんな」
気づけば夏休みも、とうに折り返し地点を過ぎてしまった。
あとほんの二週間程度で、始業式だ。その後は、いつも通り学校に通う日々が始まる。
高校一年の夏休みは、もう終わってしまう。
俺の人生で一度きりの、『高校一年生の夏休み』が、終わってしまう。
思い返してみて、悔いとか、無かっただろうか。
……わからないな。
彼女とかはいないし、女っ気だって無かった夏休みだった。
こうして真白という幼馴染がいてくれていたから、多分。
人生の中で、この夏休みの過ごし方を後悔することはないと思うけど。
「真白、アイス食べるか?」
「え?うん、ありがと!」
なんとなく。
アイスを食われるのだって割にあうと思えてしまうような、そんな、純粋無垢な笑顔だった。
綺麗な顔だちっていうのは、ほんとに得だよな……。
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