#8 星

 #8 星





「都会で見れる星ってさ、実は十個くらいしか無いんだぜ?」


「……へぇ」


「…いや、嘘だけど」


「ふぅーん」




 今日はペルセウス座流星群の日、らしい。


 しかも新月なので、絶好の観察日、らしい。


 が、どれだけ目を凝らしても流れ星は見えそうにない。




 俺は家のベランダで、真白と一緒に夜空を観測していた。



 部屋の電気も消して、スマホ画面も見ないようにして暗闇に目を慣らす。


 夜空を見上げ続けて、かれこれ三十分ぐらいは経っただろうか。



「………見えないな」


「……そうだね。ちょっと期待してたのにな」



 真白は、一生懸命、空を眺めていた。


 部屋からの明かりはないから、遠くにある街灯の、そのほんの少しの光で、横顔が浮かび上がっている。




 ……いや、ほんとに絵になるよな。こいつは。



 何もない夜空を見上げてるだけなのに、真白の青い目はきらきら光って見えて。


 それだけで、なんだか神聖な景色のような気すらする。




 ……スマホ触りてぇな。


 流れ星見ようぜ、と誘ったのは俺だけど、なんか……。



 空を見上げ続けるのって何気に体力いるし、首も痛くなるしな。



 最初の五分くらいで挫折して、今はもう、ほんとに切実に、スマホに触りたくなってきていた。


 けど、真白は夜空を見上げるのに熱中してるし…。



 誘った俺が、もうやめようよ、と言うのもダサいしな。と意地を張ってしまって、


 スマホ触りたいから部屋戻っていい?


 の一言が言い出せず、結局、三十分も粘ることになってしまった。




 あー……、でも。ほんとに綺麗なんだよな。こいつの顔。





「ねっ!悠仁、見た!?」




 こっちを嬉しそうに振り返った真白と、がっつり目が合った。



「……流れ星、ちゃんと見た?」


「ああ、いや?まぁ、うん?見たよ?」


「……」


「………?」




「…悠仁さ、僕のこと見すぎじゃない?」



「いや、そんなこと無いと思うけどな?」






「……ふぅーん。じゃあ、いいけどさ」




 真っ白い髪の房が、耳のほうから頬へとすっと垂れた。


 どこか挑戦的に、見透かすように細められた目から見えた輝くような青い瞳が。


 その瞬間。



 意味深な笑顔が、どうしようもないくらいに、目に焼き付いてしまった気がした。








 さっさと帰って寝ろ。




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