第46話 ルミシール開発

 無事に冬場を乗り切ったある日


 ドルジから返事があって雪が溶けた頃に店を弟子に任せてこちらに来てくれるらしい。


 これでドラゴン素材の武具が作れるだろう、立派な鍛治工房を作っておくとしよう。


 さて、ルミシールの再開発に取り掛かるとしよう。


 近づいてみたが以前のような嫌な気配は無くなっている。


 イシリス様は大丈夫だと言っていたが緊張しながら封印を解いて門を開けてみた。


 中を見てびっくりした、地面以外何も無かったのだ建物の残骸はおろか石ころ一つ無かった。


 呪いに侵食された物質は全て浄化されて塵になったのだろう。


 不思議な光景だった、城壁の中は真っ平で草木も無く砂漠の様な光景だった、遠くに水たまりが見えるがオアシスの様に緑があったりはしない。


 しかもこの広い空間が全て教会のイシリス様像の前に立っているような神聖な空気に満たされている。

(世界樹とか生えてきそうな感じだ)


 とりあえず魔動車を出して水たまりの近くまで行ってみた、近くで見たら泉が湧いていたのでアイテムボックスから耕運機を取り出し周辺を耕して畑を作った、そこにイシリス様からもらった種を一粒づつ丁寧に蒔いてそこに泉の水をかけて今日の作業は終了した。


 壁の中を見て回ったが本当に何も残っていなかった地下にあった下水道の設備すら塵になったみたいだ。


 神聖な空気に満ちているが生命が存在していない不思議な土地になってしまっている、このまま普通に開発するのは無理なのでは無いだろうか?


 イシリス様から最初は俺が育てた方がいいと言われたので素直に貰った種を育ててみてから考える事にして泉のそばにテントを張った。


 持って来た食材で野営をしてみて分かったが・・


 暗くなったら泉が僅かに発光していた。

 慌てて鑑定したが普通の水だった。

(普通に煮炊きに使ったし、グイグイ飲んだが特に問題は無いようだ。)


 日が沈むとまだ結構寒いのでテントに引っ込んで日課の魔法の鍛錬をして毛布に包まって寝た。


 朝になってテントから出てびっくりした、昨日蒔いた畑が一晩で青々と植物が茂っていたのだ。


 用心して半分しか蒔かなかったのだがこの様子なら全部蒔いても大丈夫だろう、泉の水で顔を洗ってから朝飯を食って泉の反対側も耕して丁寧に種を蒔いた。


 これでイシリス様から貰った種は全て蒔いた、昨日蒔いたところにも泉の水をあげて今日の作業は終わりにした。


 霊草って言うぐらいだからきっと霊薬の元になる植物なのだろう、育て方とか増やし方を一切聞いていないのだが収穫とかはどうすればいいのだろうか?


 雑草の如く勝手に増えたら楽なのだが、一晩で茂った成長速度に期待して周辺を少し耕しておいた。


 発光する泉の側で今日も野営した、夕べも魔法の鍛錬をしていて違和感があったが魔力を小さく圧縮しようとすると抵抗がある、どうも周辺に拡散しているみたいなので逆に思い切って拡散させてみた。


 拡散させた魔力をどうやら霊草が吸収しているみたいだ、魔力探知で周辺を見てみたら泉にも霊草にも魔力が込められて居るようだ。


 ちょっと寒いが外に出て浄化の魔法を緩く広範囲に使ってみた。


 驚く事に使った範囲に霊草が芽吹き始めた。

(なるほど、だから最初は俺が育てた方が良いわけか)


 浄化を撒きながら泉の周りを一周してから就寝した。


 それから2日ほど泉の周辺を耕運機で耕しながら浄化をばら撒いて緑の部分を増やした、広大な砂漠の中にオアシスが出来た感じになったのでしばらく放置してから様子を見に来る事にして門を閉じて結界を張り直してジャルドに戻った。


 折角来たので4つの集落も見ていく事にした、各集落のまとめ役になっている家を回って無事に冬を越せたか?困った事は無かったか?要望などを確認して回った、開拓地で良くある凍死者も餓死者も出ずに冬を越せたようだ、教会も上手く機能していて病人や怪我人に対応してくれているみたいだ、労いのために名目はイシリス様へのお供えと言う事で各教会にワインを1樽づつ置いて来た。


 うちのシスターさん達は分かっているのでイシリス様に感謝して自分たちで消費するはずである。


 難しい教義も戒律もないイシリス様に感謝することと困っている人を助ける事以外は普通に生活しているだけなのだから、もちろん結婚も問題無いのだがまだみんな独身だ、孤児院を出たばかりなので焦るような年齢では無いのだが早く幸せを掴んでもらいたいものだ。


 領内を軽く見て回って街道を魔動車で帰った、街道も特に問題無い様である、不覚だったのは街道の分岐点の集落にはなんと温泉が湧いていたのである。


 だから宿屋を作った様で商会で美味しい所を逃してしまった、もっと良く調べておけばよかったが開発の許可も出したのでここは任せる事にしよう、上手く開発して人を呼べる温泉地にしてほしいものだ。


 ジャルドに戻って家族と過ごしながら水路の横に水車小屋を建てた、ドルジが来たら鍛治工房にしてもらおうと思って動力付きで住居も兼ねた少し立派な工房を作った、炉はどの程度の物が必要なのかわからないので本人に発注してもらおう。


 領内の農業用水路を整備したりしながらひと月程過ぎた頃ドルジが愛用の道具と荷物を持って列車でやって来た。


 早速工房の建物に案内して必要なものの聞き取りをした、準備が出来るまでは商会の一室に住んでもらう事にした、宿屋を手配しようと思ったら


「落ち着かないからいらん」

 との事で商会の一室で妥協してもらった。


 この領はドワーフの数が少ないので大工衆のドワーフと一席設けたら、軽く拳で語り合ってから仲良くなった、どこかで同じ様な事があったがこれがドワーフ流の交流なのだろうか?


 大工道具なども製作してくれる様でナミブの工房に発注せずに済んで要望も細かく伝える事が出来るので効率が上がるだろう。


 ちなみに素材になる竜の骨と鱗を渡したら唸っていた、普通の鍛治で使う炉では加工は難しいようで特別な炉を発注していた、無論費用は商会持ちで最高のグレードでお願いしておいた。


 家具とかも揃えて住める様になったので奥さんを迎えにポルトに一度帰って行った。


 炉の方は大工衆にお任せである。


 俺はルミシールの様子を見て来る事にした。


 1週間ほど出掛けて来る旨を家族に伝えて旅立った、ナーニャとプールがそろそろ発情期なので一緒に来る事にした様だ、今までは不在の事が多かったので念のため避妊薬を飲んで俺が帰って来るのを待っていたから妊娠しなかったのだが周りがみんな子持ちになったので自分たちも欲しくなったみたいだ。


 その辺で適当に作って来なかったのは多分商会のみんなが協力してくれたおかげだろう、2人も俺の子供が欲しいようなので発情が来たら今回は避妊薬無しで注ぎ込んでやろう。


 到着して門を開けたら大変な事になっていた、砂漠の様だった壁の中が一面緑色になっていたのである、しかも真ん中辺りに1本木が生えている、これは本当に世界樹とかが生えて来たのでは無いだろうか?


 この世界に世界樹があるのかは知らないが知識の中には万能薬の元になったりする効能があるようだ。


 いらぬ争いの元になりそうな代物である。

(うーむ、どうも面倒くさい予感がする是非イシリス様に聞いてみたい)


 霊草の使用法とか効能も分からないのに・・


 とりあえず順調に成長している様なので見なかった事にして門を閉めて帰る事にした。


 途中街道の分岐点にある温泉に一泊して行く事にした、風呂はほとんど毎日入っているが温泉はこの世界に来てから初めて入るので楽しみである。


 4人部屋を確保して温泉に入ってみた、控えめに言っても最高である。


 が、しかし飯も部屋も普通の宿屋だった。


 ソニアの宿屋は無理としてもポルトで俺が住んでいた宿ぐらいのグレードは欲しかった、全く残念である。

(買い取って俺が経営したいが領主が取り上げるような事は流石に出来ない、大人しく潰れるのを待とう。)


 ニーニャもプールも発情期にならなかったので普通に宿泊してジャルドに戻った。


 来て欲しい時には中々来ないイシリス様である、とりあえず教会にお祈りしておいた。


 もしあの木が世界樹だったらどうしよう。


 不安が募るヴィットマンであった。

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