第47話 特産品

 ルミシールの状況を見てそっ閉じして帰ってしばらくした頃。


 領内の開発は進んでいる。


 もう面倒なので領主の強権を発動させて壁の中の再開発を理由にして全員追い出した。


 低所得者向けの住居は準備しておいたが入居者はほとんど居なかった、開拓すれば自分の財産を得る事が出来るチャンスなので財産を持たない連中はほとんど開拓地の集落に移住済みで自分で開拓した土地で種蒔きをしている。


 用意した住居に住んでいるのは何かしら理由があって働けない者達で保護が必要な人達だ。


 問題なのは壁の中で商売をしていた連中で、これ以上放っておいたら他の土地から来た商人に対して完全に出遅れになってしまうので無理矢理追い出した。


 領主の言う事も聞かないような連中なら正直居なくなって欲しいので強権を発動させてみた、ジャミールの残党の可能性もあるのである。


 ジャミール滅亡の時に向かってきた様な連中が残っていて足を引っ張ろうとしている可能性もある。


 王族を徹底的に狩らなかった帝国首脳部にも責任があるが、恐らくどこかに生き残っている血縁者がいるのだろう、財務卿あたりが何か悪巧みしていそうな感じである。


 猶予は十分に与えたが今まで立ち退かなかったのだからあとは知らん!


 商売を続けたいなら屋台でも借家でも方法はいくらでもある、ここを去るなら追うつもりは無い。


 代わりは幾らでもいるしどうしても必要な物を扱う店は壁の中には無い。


 壁の中は領の直轄地として中には備蓄倉庫と避難所として使える広場兼訓練所などの軍の施設のみにした、今まで使っていた水路は予備として使えるように水を止めて再整備した、下水道も酷い状態だったので浄化して全て埋め立てて再度作り直した、あくまで防災用の予備なので浄水場も作って別経路の水も用意した、騎士団とブレイバーズの手が空いている時に少し畑の面倒も見させる事にした。


 耕して大豆と小麦の畑を作っておいた、余分に耕しておいたので他にも勝手に何か作るだろう、今までも兵舎の周りで自分たちで食う野菜とかを作っていたマメな連中なのである。


 ヴィットマン辺境伯領は盗賊あがりの戦奴部隊が先に出来て有名になってしまったので騎士団があまり偉そうにしていない変わった領なのである。


 騎士団に戦奴が稽古を付けているので普通の騎士では絶対やらない様な汚い手を使う騎士が誕生している、対人戦は生き残った者勝ちと言うのを叩き込まれている。


 集団戦でも盗賊相手に訓練している様なものなので手口は熟知していて盗賊狩りにも無類の強さを発揮している変わった騎士団だ。


 ブレイバーズの勇猛さは帝国では有名なのでうちの騎士団も戦奴だと見下したりする奴はいない。


 そんな感じで結構有力な軍備を有する領になっている、騎士団ももう少しで目標の200人に届く、次の動員には騎士団も連れて行けるだろう。


 壁の中の再開発は終了した。


 壁の中は緊急時の避難場所として使う事にして、立ち入るのは収穫祭の時ぐらいだろう。


 追い出した商人達は半分程度はいなくなった、残った商人は確保しておいた良い場所で商売を再開している、残った商業地区の土地は他から来た商人に開放して場所を埋めた。


 これで開発はほぼ終了した、後はじわじわと開墾された土地が増えて行くだろう。


 ご新規さんに来て欲しいが帝国内にはスラムが無くなった状態なので厳しいだろう。


 ジャミールから開放した西方諸国も領内の再整備で人が足りないので呼び戻すのに必死だ。


 東方から呼びたいがジーラッドが健在で国境を塞いでいる限りは無理だろう。

(いっそやっちまいたいが大戦争になりそうだしなあ)


 当然軍備も進めている、ドルジが作った鎧と武器もほぼ行き渡った、騎士団には騎士鎧、ブレイバーズにはスケールアーマー、兜は共通で俺考案のものを全員に配った、盾や大盾、武器も全てドラゴン素材を使った高級品だ。


 ブレイバーズの装甲兵員輸送車も更新した、砲は75ミリにして魔法陣を差し替えて瞬発榴弾、遅発榴弾、徹甲榴弾、貫通性能は低いが徹甲弾の4種類を撃てる様にした。


 騎士団には支援用の装甲車とバイクを準備した、馬より早いし補給も楽になった。


 うちの騎士達は他の騎士団みたいに馬にこだわらないので機械化する事が出来た。


 ジーラッド聖皇国と戦争になっても蹴散らすのは楽だが、問題は統治の方だ宗教で洗脳されているので多分統治出来ない。


 土地だけあっても民がいなければ荒地が増えるだけである。



 話しは変わるが今回の発情期でナーニャとプールが無事に懐妊した、やんちゃ娘達が急に大人になってびっくりしたが本能が強い種族なのでこれが普通らしい。


 それと、ブリュンヒルデが懐妊した。

「我を孕ますとは、ヴィットマンお主超越者だったのかえ?」


 どうやら人が竜を孕ませる可能性があるのは超越者だけらしい、俺が超越者だとは思わなかった様で余裕でやりまくっていたので、まさかの妊娠らしい。


「お主の子孫ならきっと大丈夫であろう、また文明が消滅することはきっと無かろう。」

 すまして言っているが結構嬉しそうだ。

(ドラゴニュートの質問は聞こえないふりだった様だ)


 レギンとエルルがちょっと拗ねているので家族会で回数を増やしてあげる事に決まったようだ。


 ある晩、レギンとエルルが両脇に寝ている時にイシリス様が現れた。


「その子達を孕ませたいならレベルを上げて成長を早めないとダメだよ。」


「イシリス様お久しぶりです、家族も増えて楽しく暮らしています、いつもありがとうございます。」


「ユウイチ君久しぶり元気そうね。」

「霊草を育ててくれてありがとう、おかげでこの大陸初の世界樹が育ったよ。」


「そう言えば霊草って何に使えば良いのですか?」


「世界樹の樹液と葉それと実を一緒に調合すると究極の回復薬エリクサーが作れるよ、はいレシピ」


 頭の中に作り方が入ってきた。


「ユウイチ君が住んでいる大陸に世界樹の存在を知っている者はいないよ、竜達も知らないからただのでっかい木って事で通せば懸念している争いの種にはならないよ。」


「あの土地全体が清浄な場所になっているからあそこで暮らすと何もしなくても健康になるわよ。」

「病気の人とかあの土地に滞在すればじわじわ良くなるから試してみて」

「竜の巣もそれなりに清浄だったけど世界樹が芽吹くほどではなかったの、私が作った世界にも世界樹が育ってきたので私の神格も上がったわ、ユウイチ君ありがとう、やはり私の目は確かだったわ!」

 久しぶりにイシリス様のドヤ顔を見た。


「イシリス様、ルミシールに教会を作っても大丈夫ですか?大丈夫なら療養所も併せて作りたいのですが。」

 折角の世界樹が枯れたりしたら大変なので一応確認した。


「大丈夫よ、別に教会はいらないけど作っても問題はないよ。」


「重度の病気って回復でも治癒でも治らないから困っていたので助ける術が出来たのはありがたいです、領民から治療費は取らないのでお礼にイシリス様に感謝を捧げる教会はわたし的には必須なのです。」


「まあ作っても大丈夫だけど、私にエッチな事を期待したらダメだよ。」

 サッとおっぱいを手で隠した、そんなに期待する様な顔をしていたのだろうか?

「もし私とエッチな事に及んでしまったらユウイチ君も神格を得て人でなくなっちゃうからそこの所はよろしくね。」

「それとユウイチ君、超越者になったでしょ?双剣術を取らない様に気をつけて生活してね、両手に剣を持って戦うと簡単に取れちゃうから。」


「何か不都合があるのですか?」

 何かありそうなので聞いてみた。


「超越者が双剣術を取ると自動的に勇者の称号が生えるの、過去の例から言って勇者になると色々と面倒な事になるから私が指示するまで取らない様に気をつけて欲しいの。」


「世界に滅亡の危機が来ない限りは不要な称号だから本当に気をつけてね。」


 何か分からないがこの様子だとかなり面倒な事になるようだ、なるべく銃剣で戦う事にしよう。


「ところでイシリス様、最初に言ったレギンとエルルの事ですがレベルを上げると成長が早まるのですか?」


「ドラゴンやエルフ、ドワーフとかの長命種はレベルを上げると成長が早まるのよ、知らなかった?」


 全く知らなかった、そう言えばエルルは初めて会った時からほとんど成長していないが、レギンが少し成長しているのは一緒にオークを狩りに行ったりしてレベルを上げているせいだろう。


「エルファの赤ちゃんもレベルを上げたら成長が早まったりするのですか?」

 可愛い赤ちゃんの姿を長く見れて嬉しいが成長した姿も見てみたい。


「成長期にレベルを上げると顕著に差が出るわよ。」


「そうなのですね・・赤ちゃんはフォークすら握れないからレベル上げは厳しいですね。」


「じゃ、パーティ経験値共有のスキルを授けましょう、これで子供達とパーティを組んでユウイチ君が狩に行けばパーティ全体に経験値が分配されるよ、ユウイチ君は成長が遅くなるけど超越者だからもうレベル上げは不要でしょ?」


「おお!ありがとうございます、レベル100を超えてからはレベル上げするのを控えていましたがこれで心置きなくレベル上げができます。」


 竜の巣境界付近に魔物がポツポツ出ていたが人的被害が出ていなかったので放置だった、根こそぎ殲滅してやろう。


 スカイドラゴンを狩った頃には超越者になっていたのだがステータスを見ない様にして知らないふりで今まで通していたのだ。



 数ヶ月後


 ルミシールの小さな通用門の先にイシリス様の教会を建てた、併せて40床程の療養施設を作った常駐のシスターはシャルロットに任せる事にした。


 元領主の娘だったが教会で楽しく過ごしていた、神聖魔法も授かって、貴族の一族だったので頭が良く教えた医学の知識もほとんど覚えた才女だ。


 更にステータスも魔力の値が高い。


 孤児院の見習いシスターを5人ほど引き連れて移動してもらった。


 イシリス教は特に教義も無いので療養者の面倒を見ながら穏やかに過ごして欲しいものだ。


 それと施設維持のために周辺の集落から独居の年寄りに集まってもらった、まだまだ元気な爺さん婆さん達なのでここに住んで長生きしてもらいたい。


 程なく病が癒える療養所として大陸内で有名になった、他国の貴族達からは結構ボッタクリ価格でお布施をもらっているが順番待ち状態である。


 病床数を増やした方がいいだろうか?


 特産物では無いが領内に有名な物が出来た、世界樹も今のところ壁の外からは見えないがそのうちナミブあたりからでも見える立派な世界樹になるだろう。


 周辺の集落を観光地化する準備をしておいた方が良いかもしれない。

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