商会設立編

第11話 遭遇戦

 泣きながら走って来たヴィットマン


 ポルトの町を出発して領都のシャハトを目指して軽く走っている。


 シャハトまでは100キロ弱の距離がある、徒歩で2泊3日の距離だ、なるべく走って時間の短縮をはかりたいが変な場所で野宿も嫌なので少し加減して走っている。


 ここシャハト伯爵領の街道は道が悪い、バカ領主が金をケチって道の整備をサボっているからだ。


 おかげで馬車は歩くより遅い速度でしか走れない、騎乗であればそれなりの速度は出せるが馬車は本来の速度を発揮できない。


 今の領主に代わってからは関税を4割と言う法外な割合にしたので商人がほとんど寄り付かなくなってしまい一層統治にやる気が無くなっている様だ。


 おかげで小麦の一大産地であるポルトの小麦も領外に売れなくなってしまった。

 余り気味な小麦が安く手に入り食費が安く上がるので貧しい若者が集まる町になっている様だ。

(それ以外の物価は少し高めだが)


 ちなみにシャハトの町はポルトよりも更に不景気で王都に行くより近いので仕方なくポルトに働きに来る人も多いとの事だ。


 しばらく走っていると宿泊出来る集落まであと半分ぐらいの距離まで来た、左側に中央山脈を見ながら走っていると右側に林が見えてきた。


 それほど大きな林では無いが領主がサボっているので魔物が住み着いているらしい。


 警戒のため魔力探知で探ってみると林の中に隠れているのが20人、街道付近に散開して隠れている10人の集団を見つけた。


 どう考えても盗賊である。

 恐らく現金を積んでワイバーン素材を買い付けに行く商人の馬車が通りかかるのを待ち伏せしている様だ。


 街道にいる10人で姿を見せて弓矢で威嚇して林に逃げ込んだ所を大勢で囲んで捉える作戦なのだろう。


 俺に気が付いた様で街道の10人が包囲するように接近してくる。


 ちょっと嫌がらせでもしてやろうと道路わきの石に腰かけて水を飲んで休憩する。


 ふりをして姿勢を低くして気配隠匿を使って林の中に向かって走る。

 途中で最近は着剣したままにしてある小銃を取り出して走る。

 林の中に紛れ込んで気配を消して様子をうかがう。


 街道の方を気にしていて後ろががら空きである。


 リロードして魔力の弾丸で頭を狙って撃つ。


 衝撃音が響き渡るが林の中で音が反射して、どこで何が起こっているのか分からない盗賊が慌てふためいている。


 銃で撃たれた事など無いから伏せると言う行動をとる奴はいない。

 つるべ撃ちで撃ちまくる。


 倒れていく仲間を見てパニックになり林から飛び出して行く奴もいるようだ。


 撃ち倒せる奴も居なくなったので気配を消して接近し間合いに入った所で突く。

 街道に逃げて行った2人を除いて殲滅出来た。


 街道周辺に居る奴までちょっと距離があるので視界が確保できる場所で伏せ撃ちの姿勢を取る。


 更に3人仕留めた頃に落ち着きを取り戻したのか連携して警戒している。


 大勢は決したと思うのだが状況が把握できない様でまだやる気らしい。

(あと9人しか残ってねえじゃん!)


 弓持ちがまだ残っているので気配を消しつつ匍匐前進で距離を詰める。


 気が付かれるとは思ったが200メートルぐらいの距離で弓持ちを撃つ。

 残った弓持ちが俺に気が付いた様で曲射で射かかって来るが下手なので全然当たらない、残りの弓持ちも仕留めて残りが5人になった所で立ち上がって姿を晒した。


 盗賊は基本アホなのでこれだけやられても相手が1人だと分かれば襲い掛かって来る習性があるので1人も逃がさない為にはこの手に限ると思い敢えて姿を晒した。


 案の定、頭目と思われるとデカい剣を持った大男がこの状況なのに凄んで来た。


 何かムカついたので瞬脚で近づいて両足を突いてやった。


 残った子分共はザコだったので普通に踏み込んで瞬動で逸らしながら全員銃剣で首を飛ばした。


 さて、1人生き残った盗賊リーダーはお約束の命乞いをしている。


 どうやらアジトに置いてあるお宝を譲ってくれる様だ。


「逃がしてやるから先に行って準備しておけ」

 と、言い渡してから倒した盗賊共から金目の物と首を貰う作業に着手した。


 頭目は足が動かないので無様に這ってアジトがある方向に逃げて行った。


 小一時間かかって盗賊共の装備と金と首を集め終わったので頭目を追いかける。


 すぐに追いついたので後どの位かかるか軽く蹴飛ばしながら聞いてみた。

 丘の向こうの街道から見えない場所に廃屋があるらしい。


 このままのペースでは2時間ぐらいかかりそうなので武器を取り上げ裸に剥いてから両足の傷に少し傷薬をかけて治してやった。


 何とか歩けるぐらいに回復したのでペースを上げて廃屋に向かう。


 廃屋が見える所まで近づいたらフルチンの分際で仲間が30人ぐらい残っていると凄み始めた。

「命が惜しかったらその見た事が無い武器を置いて立ち去れ」

 と偉そうに脅して来た。

(渡したら仲間を連れて殺しに来るでしょ?)


 フルチンでの偉そうな態度が最初は滑稽で可笑しかったが段々腹が立って来たので、当然断ってさっきの場所とは違う所を突いてやった。


 悲鳴を上げながら仲間を呼び集める頭目。

 倉庫の様な廃屋からぞろぞろと汚くて臭そうな連中が出て来た。


 30名程に取り囲まれるが強そうな奴は居ない様だ。


 悲鳴を上げながらフルチンで転がる頭目を見た連中が仲間割れを始めた。

 どうやらこの中には居ないがもう1人強い奴がいてそいつを頭にする話がまとまりつつあった。


 反対した奴が1人斬られたところで話がまとまった。



 なので、瞬脚で間合いを詰めて真ん中に飛び込んで無茶苦茶に

 斬って

 突いて

 瞬動で逸らし周りは全部敵なので同士討ちを気にせずに殺しつくした。


 頭目はまた命乞いを始めたのでお宝の所まで案内させた。

 今度は這ったままだ。


 中に入ると以前見た盗賊のアジト同様に酷い有様だった。


 お宝は女達だった様で結構な数が囚われている様だ。


 取り合えず金目の物は無いのか優しく聞きながらつつき回したら金貨が隠してある場所に案内してくれた。


 金貨は軽く200枚ぐらいはありそうだ。



 約束通り出血箇所に傷薬をぶっ掛けて止血だけしてやったら頭目は這って逃げて行った。

(後で囚われていた子たちと一緒にぶっ殺して、レベル上げをしてけじめをつけさせよう)


 もう一人いるはずなので魔力探知で探してみると建物の奥の事務所スペースだったと思われる部屋の中に2人居るのを見つけた。


 教わった通りにドアをノックすると男が中で悪態をついている。

 お楽しみを仲間が邪魔しに来たと思った様だ。

 教わった基本通りドアを蹴破って中に入り、驚いて振り向いた隙に首を飛ばした。

(最初に聞いた時は何て乱暴な作戦なんだろうと思ったが余りにも有効過ぎてワロタ)


 建物の中に囚われていた人たちに盗賊は全員倒したと建物全体に聞こえる大声で告げた。

 建物の中は不潔なので動ける人は外に出て集まって貰った。


 魔力探知では誰も居ないが動けなくなっている人が居ないか隈なく調べてみたら1人を遺体で見つけた。


 抱きかかえて外に出たが既に体が硬くなっているので亡くなって1日以上は経過している様だ。


 井戸の周りに集まって貰っている人たちに埋葬してくる旨を伝えて少し離れた所に土魔法で埋めてあげた・・・



 全力で魔力と気配で周辺を探る。

 頭目はまだ近くにいるので小銃をしまい。

 刀を出して追いかけた。

 見つけたので有無を言わせずに胴体を真っ二つに斬った。

 俗に言う漸胴刑と言う奴である。


「見逃すと言ったがあれは嘘だ、苦しんで死ね」

 と言い残してその場を去った。


 首は死んだのを見計らってから回収しに来ることにした。

 レベルが高そうだったのできっと20分ぐらいは苦しむだろう。

 後でみんなでレベル上げするつもりだったのだが思わず斬ってしまった。


 生き残っている人たちの所に戻った。


 井戸は生きているようなので先ずは体を洗う様に言ってから鍋を出して土魔法でかまどを作って料理を始める。


 とは言ってもぶつ切り野菜と干し肉ぐらいしか入っていないごった煮だが。


 薪は大量に買っておいたので煮炊きするのは何の問題も無い。


 すでに夕方になっているのでこれから移動するのは得策ではない。


 あの臭い建物の中で寝るのは嫌だしどうしようかと思っていたら。

「あった!忘れ去ったはずの過去が!」

 井戸に近い広場に件の天幕を出してみる。


 何とアイテムボックスに詰め込んだ時のまま出て来た。


 組み立て済でペグだけ打ち込めば良いだけの状態で俺の前に姿を見せた。

(イシリス様いつもありがとうございます)


 ペグを6本打ち込んで敷設が完了した。


 中に以前何かに使えると思って買っておいた板を敷き詰める。

(余分に仕入れたらしい板が投げ売りされていたのを更に安く買いたたいたのが役に立って良かった)


 天幕の天辺の部分がめくれる様になっているのでめくった状態で固定しておいた。

 天幕の中央に土魔法で囲炉裏も作っておく。

 恐らくストーブか何かの煙突を出す為の仕組みだと思うがまあ大丈夫だろう。

 囲炉裏に薪を積んで火を起こしておいた。


 ここまでやった所で皆に天幕に入って休んで貰う。


 ごった煮も煮えた様なので味見して塩を足してとりあえず食える味にする。


 パンを全員に1個づつ配り食器の数が少ないので使いまわして貰い少しだが全員に温かい物を食べてもらった。


 落ち着いて数えたら21人も居た。


 毛布も余分に買っておいたが一人旅しか想定していなかったので5枚しかない。

 手ぬぐいやら何やら新品のふんどしに至るまで布状の物は全て出して少しでも温かくして休んで貰った。


 空になった鍋を井戸で洗って外のかまどでお湯を作っておいた。

(あまり寒くならないといいのだが)


 外はすっかり暗くなったが俺には自慢の明かりの魔道具があるので。

 建物の裏手に何かいる気配があったので見に行ってみた。


 魔力探知には引っかからないので何かと思ったら馬が繫養されていた。

 商人から馬車ごと奪った様で馬が8頭、馬車が3台残されていた。

 干し草も少し積んであったので8頭に均等にあげた。

 水桶を全て外してアイテムボックスに入れて井戸で水を汲んで水もあげた。


 見た感じ健康状態に問題は無さそうで馬車もあるのでここから皆で脱出するのに使えそうだ。


 ごくごく飲んでいるのでもう1回水をあげてから天幕に戻った。


 戻ったら彼女達のまとめ役が決まっていて挨拶された。

 彼女はマリア・スタインホフと名乗った。

 苗字持ちなので貴族なのかと聞いたら商人の娘だと言っていた。

(品も良いので大商人の娘なのだろう)


 丁寧にお礼も言われたので


「馬と馬車を見つけたので操車が出来る人を集めて欲しい」と伝えておいた。

 併せて見張りは俺がするので今晩は安心して休んで欲しいと言っておいた。


 外に出てかまどの近くに座って警戒していたが。

 仕留めた盗賊がそのままになっているのを思い出したので明かりを出して装備と金と首を集めに行った。

 頭目も死んでいたので首をいただいて埋めておいた。


「野生動物に食われてしまう所だったよ危ない危ない」


 戻ってうつらうつらしながら魔力探知で警戒し続けていたら朝になった。


 ちょっと眠いが仕方がない。


 井戸水で顔を洗ってから馬に水をやりに行く。

 取り合えず元気な様だ。

 水やりから戻って来たら皆起きだして来ていた。


 商人の娘が3人と畜産農家の娘が1人馬車が扱えると言っていた。

 冒険者の2人は馬に乗れると言っている。


 怪我をしていたり体調が悪い人が居ないか確認して貰ったら一人だけ見るからに酷い状態の子が居た。

 どんな扱いをすればこうなるのか分からない状態である。

(もっと苦しませて殺せば良かった)


 と、殺気が漏れてその子を怯えさせてしまった。

「君を怒っているわけじゃ無いから大丈夫だよ、怯えさせてこめんね」

 と謝っておいた。


 その子は上手く喋れない様で頷いて許してくれた。

 あまりに不憫でまた殺気が漏れそうになったがこらえた。


 馬車が扱える4人に馬車を準備してもらって、騎乗が出来る冒険者の2人には得物を聞いて盗賊からいただいた中から良さげな物を装備して貰った。


 ムキムキの剣士がモニカ、小柄な斥候職がセリナ、2人とも商人の護衛をしていたが数に負けて降ったのだそうだ。

 C級だと言っていたので命を守るために苦渋の決断をしたのだろう。


 またごった煮を作ろうと準備しはじめたら。

 シェレンとサーシャの2人組が

「料理は得意だから任せて欲しい」

 と、言って来たので材料と調味料を適当に渡してお任せした。

 他に欲しい材料は無いか確認したら


「ある物で作るから大丈夫」

 と言って井戸の方に向かって行った。


 する事が無くなったのでさっきの女の子を呼んで治療をした。


 歯が全て抜かれているので盗賊の首を1つづつ出して虫歯が無さそうなところを分離させて一式集めて浄化をかけた。


 集めた歯をモデリングで変形させて1本づつ挿して治癒で融合させて歯を再建させた。


 嚙み合わせを確認しようと思ったら顎関節も変形してしまっていたのでモデリングで骨を成形しなおして治癒をかけた。


 すんなり顎が動く様になったので嚙み合わせを確認し少しだけ調整して口の治療は完成したが上手く喋れないのは喉を潰されている為だった。


 一旦治療を終わって食事の準備が出来たので皆で食べた。


 パンは1人1個づつ配ったので量は足りているはずだ。

 煮物は同じ材料で作ったはずなのだがびっくりするほど旨かった。


 治療中の子は歯を生やしたのでちゃんと食べられる様になったので不自由な手で一生懸命に食べていた。

 涙は片方の目からしか出ていなかった。


 食後に出発準備を始める。


 天幕はそのままアイテムボックスに収納した。

 有るだけの水桶に水を汲んでアイテムボックスに収納した。


 料理が得意な2人組は洗い物をしに行って貰った。


 馬車組には馬車を回してきて貰った。


 冒険者2人組は鞍を付けて騎乗して貰った。


 道は分かるという事なので2騎に先導して貰い馬車は縦列で進んで最後尾の馬車に俺が乗り込んで後方を警戒する事にした。


 先頭の馬車の御者はモーラで騎馬している2人を援護出来る様に水魔法が使える冒険者のエリスと他に5名乗車して貰った。


 次の馬車は御者がニーナで6名乗車。


 最後尾の馬車には御者が2人でサラとライラの二人で交換しながら操車して貰って俺と治療中の子とエルフの親子の2人に乗って貰った。


 治療中の子には落ち着いたら引き続き治療をすると言っておいた。


 大声で叫んで連絡するしか無いので乗車中のみんなで叫び声を聞き逃さない様に気を付けて貰う様に連絡して出発した。


 念のため先頭車には耳が良い猫人族のナーニャ、2台目には同じく犬人族のプールに乗って貰った。


 中規模の商隊並みだが護衛が4人しかいない。


 それでも今回討伐した以上の盗賊団は多分現れないだろう。



 車列は一路シャハトに向かう。

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