第8話 ルーキー狩り討伐

 日課のギルド訪問をせずに銀剣のクランハウスに向かう、建物の前では今日探索に出るパーティが2組程準備している様だ。


 最近は森の外の草原で採取する時はルーキーだけで編成していた様だが今日はベテラン風の冒険者が2、3人混ざっている


 中に入ってまとめ役のお姉さんに声をかけたら奧に通された、カイトが3人の女の子と一緒に待っていた。


「おはようヴィットマン、今日は宜しく頼むよ」

 相変わらず朝から爽やかな笑顔だ。


 早速3人を紹介された、全員春に冒険者になったルーキーだ、まあ俺もそうなのだが既にBランクなのでルーキー呼ばわりはされていない、ボロい革鎧姿はこの町では有名になってしまった。


 左端の子がマルシアで黒髪黒目の魔法使いだ、注文通り弱そうに見える

 真ん中がシャルトで栗色の髪に灰色の瞳の斥候職で小さくて弱そうに見える

 最後に右端の子はヒルダで黒髪黒目の前衛職でデカくてグラマーで俺より強そうに見える、装備が良ければベテランに見えそうだ、ちょっと注文と違うが大丈夫だろう


 流石に銀剣のルーキー達だ、3人に礼儀正しく挨拶されたので

「今日は宜しくお願いします、草原で採取をしながら採取のコツとか注意する点を覚えてもらおうと思います、余裕があったら森の浅い所に入ってみたいと思います。」


 挨拶の後に用意してもらった銀剣のルーキーセットを装備する、革鎧、小手、ショートソードだ、グローブは自前の物を着けた


 4人でおしゃべりしながらギルドに向かい、普段は受けないルーキーでも出来る依頼を3つ受ける、カウンターのお姉さんが事務的に手続きしていたが、何かに気がついた様でハッとして声をかけて来た。


「ヴィットマンさん銀剣に入ったのですか?」


 いつもと装備が違うだけで新人に紛れ込めるモブっぷりの俺ってどうよ、とか思ったが


「違う違う、しばらくルーキーの教導をする事になったので秘密にしておいてくださいね」

 と答えると


「そうですか、気をつけて行ってきてくださいね」

 と送り出された。


 早速森の手前の草原で採取を始める、3人でまとまって一生懸命に探しているが、ただ闇雲に探しているので見つからない


 20分程探したところで3人を集めて採取のコツを教える、普通の薬草は群れて生えていて雑草に比べて背丈が低いので草原の窪んで見えるところを探すと見つけやすい旨を説明した、まあ俺は魔力探知で探しているのだが、薬草類は魔力が含まれているので結構良く見える、最近は種類も多少判る様になった、早速言われた通りに探す3人組、すぐに群生地を見つけて採取している、取り尽くさずに少し残しておいて場所を覚えておけばいちいち探さないで済む事も教えておいた、今シーズンはもう採取出来ないが来シーズンは期待できるはずだ。


 他の群生も見つけて一生懸命採取している、銀剣のルーキーは本当に真面目だ


 俺は採取するふりをして魔力と気配で周辺を索敵している、今のところ周辺に怪しい動きの奴はいない様だ


 薬草は充分集まったので、毒消しを探しに森の端に移動する、今度は意地悪せずに最初に探すポイントを説明する、周りに木があって程良く日光が当たる所を探す様に指示する、直射日光が当たる所と日が当たらない所には生えないのだ、森の中なのでそういった場所を探すのが大変だが闇雲に探すよりは楽なはずだ、俺は魔力探知で探すので楽勝なのだが・・


 浅い所とはいえ森の中なので周辺の気配にも気を配る様に注意した


 3人とも普通に歩いて毒消草では無く明るい場所を探している様だ、この様子ならすぐに見つかるだろう

(ヒルダ後ろだ)


 3人ともコツを掴んだ様でモリモリ採取している、充分な量が集まったので森から出て見晴らしが良い所でお昼にする


 持ってきたデカいパンを3人に一個づつ配る、沢山採取できたので皆んなご機嫌でおしゃべりしながら食べている


 食べ終わって水を飲みながら休憩している時に魔法の鍛錬について説明する、イシリス様直伝の方法だ


 寝る前に道具も無く簡単にできるので可能なら毎日する様に言っておいた、魔力探知の便利な使い方も説明したがマルシアが多少魔力を動かせる程度なので先は長そうだ


 ついでにヒルダと軽く剣を合わせてみる、鞘を固定して打ち合ってみる、久々に軍刀を取り出して打ち合ってみたがヒルダは見掛け倒しだった


 剣術スキルはあるが無印で武技もまだ生えていないそうだが、全く剣が振れていないのにスキルがあると言う事は先天スキル持ちなのだろう、鍛えたらすぐに強くなると思うがとりあえず剣の振り方を教えて素振りさせる、すぐに剣筋が良くなって来た


 時間がある時に剣筋を意識して素振りをして鍛錬する様に言っておいた


 休憩を終えて森に移動して本日受けた最後の依頼に取り掛かる、快癒草は木が密集しているのに風通しが良い所に生えているので少し難易度が高い、俺はすでに見つけているのだが、周辺を警戒させながら一応探索させてみる、シャルトには気配察知の方法を伝えてあるが直ぐにスキルが生えて来ないと思うので、とにかく意識していればそのうち生えるので焦らない様に言ってある


 3人とも苦戦している様でまだ見つけられないみたいだ、まだ陽が高いので頑張って探させてみる


 最悪俺が集めれば依頼は達成できるのでここは少し苦労して探してもらう


 それでも2時間ぐらいで依頼分の快癒草を集める事が出来たので森から出て帰り支度を始める、もう一度全員に気配察知の練習をさせていたら、少し離れたところに怪しい動きをしている2人組を見つけた


 町に向かう道の途中で門からは死角になっていてる辺りの木の影で様子を伺っている様だ


 3人に小声で大体の方向と距離を伝えて気配を探らせてみるとシャルトは見つける事が出来た様だ


 そのまま気づかないふりをさせて、事のあらましを3人に説明した、必ず守るので俺を先頭に後ろをダラダラついて来る様に言ってから移動を開始した


 驚いた事に本当におしゃべりしながらダラダラ後ろからついて来ている、こんな事まで真面目な子達だ


 ダラダラ進んでいると道をふさぐ様に件の2人組が現れた

「こんにちは、どうかしましたか」

 と話しかけたら問答無用で切り掛かって来た


「全員ふん縛って奴隷送りだ!大人しくしろ!」

 と凄んでいる


 なんかあっさり釣れてしまった様だ


 アイテムボックスから小銃を取り出す


 着剣してしまっておいたので戦闘準備完了だ、先に切り掛かって来た剣持ちの剣を弾いて右肩を突く、何かがなっているが無視して床尾で側頭部をどついて昏倒させる、もう1人の斧持ちが「舐めるな!」とか叫んで切り掛かって来た

(全員生け取りの作戦なのに斧でどついたら死ぬだろ)


 などと思いつつ瞬動で右にかわす、大振りだったので斧術持ちでも右側に薙ぐのは難しいはずだ


 案の定瞬間で対応出来ずに大きな隙ができている、あまりに隙だらけなので右手を突き刺して斧を落とさせると、なんと仲間を置いて逃げ出した

(うーん、見た目はゴツいのに根性の無いやつだ、相手が強いと逃げるゴブリンみたいな奴だな)


 などと思いつつ瞬脚で近づいて後ろから右足首を突いてやったら、派手に転んで今度は命乞いを始めた


 後ろで見ている3人組に伸びている奴を縛っておく様に指示を出す、ロープはご丁寧に自前で準備して来た様なので使わせてもらう


 情け無く命乞いをするおっさんを正座させて尋問する

「最近のルーキー行方不明事件はお前らの仕業か」

 と聞いたら知らないと惚けるので浅く額を切ってやった、真横に15センチ!


 当然奴の視界は血に染まる、この程度なら1日放って置いても死なないので尋問を再開する


「次は右耳を落とす!」

 と脅したら素直に話し始めた、ジャミール王国から流れてきたDランク冒険者と言っているが詳しく聞いたら違約金が払えなくて逃げてきたらしい

(いや、それはもう冒険者じゃ無いじゃん)


 で、3か月前ぐらいに町に来て先月辺りからルーキー狩りをしていた様だ


 肝心の襲った連中はどうしたのか聞いたが口篭って答えない

(最初に奴隷送りだ、と騒いでいたので必ず生きているはずなのでここはもう少し痛めつけておく事にしよう)


 銃剣を構えて軽く出血する程度に何ヶ所か突っついてやるとまた見苦しく命乞いを始めた


「頼む、これ以上話したら殺されちまう!」


 うーん、なんて身勝手な奴だろう、今まで命乞いする奴を助けた事があるのだろうか?自分はお願いすれば助かると思っているなら思い違いも甚だしい


「俺は力による制裁でも法による裁きでもどっちでも良いんだ、話しても話さなくても死ぬのは決定だぞ、素直に話したらギルドに突き出してやる、今度はお前が奴隷になるが命は助かるぞ、10秒で選べ!」


 男はワナワナしながら話し始めた、依頼主は表面的にはジャミール王国の商人で闇奴隷商が本業らしい、今は帝国の王都ザハティールに滞在しているらしいとの情報を得た


 肝心の襲った連中の行方は5人がポルテから領都シャハトに向かう途中の廃村に隠されているらしい


 犬人族と猫人族の男が1人づつ、ヒューマンの女性3人が生きて捕らえられていて見張りは2人いるとの事だ、今日の襲撃が成功してもしなくても王都に向かう予定だったそうだ


 残念ながら残り4人は殺害して森に放置したとの事だ


 縛り終わった3人に門番に通報してギルドから人を呼んでもらう様に指示して行かせた。勢いよく走って行く3人、そんなに走らなくても良いのに本当に真面目な子達だ


 さて、尋問の続きだ、商人の名前を聞いたが知らないらしい、あちこち突っ突き回したが吐かなかったので本当に知らないのだろう、帝国の高位貴族との関わりをほのめかしていたらしい


 うーん、帝国では闇奴隷に関わると確実に死罪になるはずだから高位貴族が関わっているのは眉唾物だなと思っていると、3人がかりで縛り上げられた男が目を覚ました様で、何か叫んで凄んでいる


 とりあえずやかましいので穴が開いた右肩を蹴飛ばして

「自分の立場をわきまえろ、あんまうるせえなら殺すぞ!」

 と怒鳴ったら大人しくなった


 斧男をいじめながら話しを聞いていると、今日の夜遅くにアジトの廃屋を引き払って領都に向かう事になっているらしく


 ニヤつきながら

「俺達が日が沈む頃までに戻らねえとマズイ事になるぜえ」

 と言って来た、事が露見した際には証拠隠滅を図るため捕らえた人達を殺して埋めて散らばって逃げる手筈になっているとの事だ、だから解放しろって事を言いたいらしい


 なんかムカついたので床尾で軽くどつき回していたらギルマス以下の集団が到着したので事のあらましを説明した、見張りは2人だけなので場所を詳細に聞いて、今から馬で移動して強襲する事になった


 ギルマスは救出した5人を乗せる馬車で後からのんびり向かうので先にやっとけと気軽に言っていた


 手練れの斥候職と馬に乗れる戦士と俺で強襲する事にいつの間にか決まっていた


「今度はちゃんとやれ」

 とギルマスに凄まれてしまった


 確かにこの2人も話しを聞かなければならない、と理由を付けて殺さなかったが、生かしておくのは1人で充分だった筈だ、要は殺せなかったのである


 これが甘さで状況によっては窮地に追い込まれる事になると、頭では分かってはいるのだが踏ん切りがつかないのである


 廃村の近くまで馬で飛ばして、村には徒歩で入って状況を見て強襲しようと言う感じで作戦が決まった


 斥候職が先導して早速移動を開始する


 マルシアが戻ってきたので

「カイトによろしく言っておいてくれ」

 と声をかけて馬に跨る、乗った記憶は無いのだが普通に馬を操る事が出来た、前世の知識だろうがいったい何の仕事をしていたのだろうか?


 廃村から少し離れたところで馬を降りハミを外して馬を置き去りにする、この辺で草を食べながらウロウロしているはずだから後で迎えに来ようって事にして、3人でこっそりと5人が囚われている廃屋に近づく、斥候職のダンナが近づいて中の様子を探る、俺の魔力探知では中に7人いるのは分かるが様子までは分からない、斥候職のダンナが音もなく戻って来て中では移動させる準備をしながら2人が戻って来るのを待っているらしい


 外を警戒する様子は無いので戦士の男に裏に回ってもらい逃亡した際の抑えにした


 正面からは素直にドアをノックして注意を入り口に向け

 ドアを開ける様なら首を落として、開けないならドアをぶっ壊して一気に首を取ろう!

 と言ういかにも冒険者らしい乱暴な作戦だがこれが結構有効らしい


 って事で斥候職のダンナがノックする、俺はドアの横で刀を振りかぶって待ち構える


 緊張の一瞬


 やはり盗賊はアホなので仲間が戻って来たと思い悪態をつきながらドアを開けた


 無心で刀を振り下ろすと何の抵抗も無く首が落ちた、死体を退かせて中に踏み込むともう1人はお楽しみ中だったらしく気がついてもいなかった


 中は酷い有り様で、一気に怒りが湧いて殺意が芽生えた、先程とは違い明確な殺意を持って瞬脚で踏み込む、今まで使った事がない抜刀術で首を飛ばす


 刀を振って血を払い納刀すると、斥候職のダンナがパチパチ手を叩きながら近づいて来た、戦士の男にも声をかけて3人で囚われの5人を解放した、とりあえず汚いので1人づつバブルウォッシュで洗い、ドライヤーで乾燥させる、水を出して飲ませて食欲がある人にはアイテムボックスからパンを出して配った


 ギルマスが到着する前に馬を回収に行った、本当に放置した辺りで草を食べていたので馬を連れて村に戻った


 日が沈みつつある、今日はここで野宿だろうか?


 屋根がある建物は5人が囚われていた所しか無いが中が不潔で入りたくないし、囚われていた彼らも入りたく無いだろう、ギルマスが到着するまで怪我の治療をしながら待った


 特に獣人の2人はあちこち打撲が出来ていた、水も飯も最低限にしてボコって心を折る扱いをしていた様だ、女の子3人は傷を付けると売値が下がるので多少はマシに扱われていた様だが酷い事はされた様で助け出されてからも放心していた


 治療も終わったのでとりあえず野営の為に燃えるものを集めていたらギルマスがやって来た


 ギルドで以前に買った良い明かりの魔道具があるのでこのまま帰る事になった、暗闇の中魔道具の明かりを頼りにしてポルトの町に戻るのであった。

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