『SIDE A:第一章』#07 "灯り"

店を出ると、札幌の夜風が心地よかった。


さっきまでの焼き鳥の香りが、まだ服に少し残っている。


「ごちそうさまでした!」


「ありがとうございました😊」


「また行きたい!」


「……美味しかった。」


四人が笑う。


ライブハウスを出た時とは、まるで別人のようだった。


悔しさは消えていない。


でも。


笑顔は戻っていた。


駅前で別れ、それぞれ帰路につく。


倉橋(プロデューサー)も家へ向かう。


…また明日、何て声掛けるかな…


その時だった。


スマホが震える。


【Echoes of SIGN@L】


「ん?」


画面を見る。


『グループに招待されました』


「え?」


思わず立ち止まる。


開いてみる。


美咲

『今さらだけど』


まりみ

『招待するの忘れてたー』


蒼唯

『これで連絡しやすくなりました』


涼歌

『……よろしくお願いします』


「ぷっ」

思わず吹き出す。


「今だったの?」


夜道で一人、笑ってしまった。


すると、


美咲

『真琴さん、今笑ったでしょ』


まりみ

『うん、絶対笑った』


蒼唯

『笑いましたね』


涼歌

『……たぶん笑った』


「なんでわかるんだよー」


−−−−−


五人目として加わった、


初めてのグループLINE「Echoes of SIGN@L」。


不思議と嬉しかった。


⸻


帰宅。


シャワーを浴び、


ソファに腰を下ろす。


静かな部屋。


スマホが光る。


個人LINE。


送り主。


白坂蒼唯。


『今日はありがとうございました』


『ライブ終わった後、ちょっと落ち込んでたんです』


『でも、みんな笑って帰れたのでよかったです』


『学校祭の話も面白かったです』


『シールド抜けたところとか』


『なんか』


『失敗してもいいんだって思えました』


『今日は前向きな気持ちで眠れそうです』


『おやすみなさい』


しっかりとした文章。


何回も…何回も読み返した。


とても嬉しい言葉だったから。


『こちらこそ』


『ありがとう』


『おやすみなさい』


送信


するとまた通知。


【Echoes of SIGN@L】


美咲

『おやすみ〜』


まりみ

『次のリハ楽しみ!』


蒼唯

『おやすみなさい』


涼歌

『……おやすみなさい』


−−−−−


スマホの小さな光。


その四人の名前を眺めながら、


倉橋は少し笑った。


まだ何者でもない。


まだ始まったばかり。


でも。


あの対バンライブの後の表情より


間違いなく前を向いている。


それで十分だった。


部屋の灯りを消す。


テーブルの上で、


スマホの画面も消える。


まるで。


四人が


「また明日。おつかれさまでした」


と言ってくれているように。


…よし、寝るとするか。


みんな…早いリカバリ。これは強みかも…

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