『SIDE B:それの意味』

七月のある朝。

湿っぽい雨が降り続けている。


まりみは朝が早い。

なぜならお天気お姉さんだから。


札幌のテレビ局のとある朝番組。

月曜から水曜までがまりみの担当。


明るい笑顔と元気な話っぷりが好評だ。


−−−−−


「おはようー」


今週は月曜午前中からスタジオ入りだ。

プロデューサーである倉橋も同じ。

演奏のバランス、メンバーの調子、新曲の構想、などなど

忙しいけど、楽しくて仕方がない


おはようございます…あ…


涼歌が何かに気づいた。


倉橋のワイシャツの胸ポケットに黄色の蛍光ペン。


…目立つ。マッキーぐらい太い。


「…あの…」


涼歌は言いかけてやめた。

スコアのチェックとかですぐに使うのかもしれない。


でも気になる。じーっ。


そんな涼歌の様子に気づいたのは蒼唯だった。


「どうしたの?」


「…蛍光ペン…」


「あー、黄色の…デカっ!」


「…不自然ですよね」


「きっと、すぐ使うんだよ^_^」


「…そうですよね」


−−−−−


それから美咲とまりみも合流し、その日のリハーサルは順調に終わった。


−−−−−


翌日


「おはようー」


いつも通りに倉橋はやってきた。


「……!えっ』

涼歌は固まった。


「涼歌どした?」

ただならぬ涼歌の様子に蒼唯が声を掛けた。


「…オレンジ…」


「うわ…ホントだ」


倉橋の胸ポケット。

今日はオレンジの蛍光ペンが鎮座している。


蒼唯は思わず(学生か!)とツッコミたくなった。

何か色を変える意味があるのだろうか?


涼歌は昨日と同じく倉橋をじーっと見ている。


すると倉橋がふざけた。


「そんなに…見つめないで…」


「……!!」


涼歌は少し照れているのか顔が赤い。


−−−−−


とりあえず、よくわからないけどリハーサルに集中することにした。


美咲が遅れて合流。


「すみませーん。遅くなりました!」


なんもだよー(方言)。

今日もキレイですねっ

なにいってんのー


倉橋と美咲が一緒のデスクに並ぶ。

「おはよー、美咲さん」

「おはようございます^_^」


……


…えっ、気づかないの?蛍光ペン!


私と涼歌の2人だけなの?この違和感。

ふと横にいる涼歌を見た。

目が合った…頷いた。


おかしい。絶対おかしい。

倉橋の周りのスタッフも何も感じていないようだ。


まりみが来た。


「おはよー!今日のお天気コーナー見ました?ねぇねぇ」


一気にスタジオ全体がパァッと明るくなった。

すごいよまりみさん。


−−−−−


この日も結局誰も蛍光ペンを指摘することなく、リハーサルは終了した。


−−−−−


翌日。


倉橋がやってきた。

「おはようー」


……


涼歌が再び固まった。


「…ええっ…どういうこと… 」

蒼唯も目を疑った。


…


倉橋の胸ポケット


緑の蛍光ペンが2本…!


…なぜに2本なの?!


涼歌はセッティングどころではない。

倉橋の胸の蛍光ペンを見て固まったままだ。


そして、

「…今日は…みどりの日…祝日…」


「涼歌!しっかりしてっ!違うからっ」

すかさず蒼唯が訂正する。


ちょうどそこへ今日も美咲が遅れてやってきた。


「おはようございま……どうしたの?」


「聞いて!美咲!実は……」


蒼唯は、月曜から続く不可思議な出来事を美咲に話した。


まこてぃさんの胸ポケットの蛍光ペン

色が日替わりなの。毎日違うの!

なんで?なんで?


美咲は

(え、えっ…ちょっと待って…別にどうでもいいじゃん)

と言えずにいた。


「えと…まりみはまだかなぁ」


まりみ……?あ…もしかして


うん。あれだ。

美咲は確信を得た。


「まりみが来たら聞いてみな^_^

蛍光ペン。」


……?


蒼唯と涼歌はきょとんとしている。


−−−−−


おっつかれさまでーす。


来た来た。


まりみがやってきた。


すかさず、

蒼唯と涼歌が一緒に近寄る。


「まりみー教えて!」

「……!」


「わわっ…なになになにっ。涼歌ちゃん、まばたきしてっ!」


まりみはゆっくり話を聞いた。


美咲が口を挟む。

「やっぱりそうだ、まりみ!朝のあれじゃない?」


まりみは少し考えて気づいた。

「ん?あ、あーっホントだ。そうだね、見てくれてるんだね。うれしー。

まこっちありがとね!」


そこへ倉橋がやってきた。

「んー?なんの話?」


「蛍光ペン!」


「あぁーこれね。」


「あなたが朝、ほら、言ってたから。『ラッキーカラーは緑ですっ』とな。」


「…ラッキー」

「…カラー」


「結構当たるんだよねー」


「…てか、あれじゃなくても良くない? 」

「…はい… 」


−−−−−


「今日の星座占い12位だったからさぁ。2本にしてみたんだよ、どう?」

「まこっちうけるー」


倉橋とまりみの横で、蒼唯と涼歌は話し続ける。


「…でも…」

「ん?」

「…占い信じてるってカワイイですね」

「…確かに…」


へっくしょーいっ


そこの2人だなーっ。

ほら、リハーサル始めますよー^_^


はーいっ!


−−−−−


蛍光ペンの効果はあるみたい…だ^_^

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