★
0
概要
りんご素麺は十一杯売れた。放送局は、まだ開局していない。
一九九八年六月十八日、榛野市保健センターに一本の電話が入った。
「さっきの放送が早くて、りんご素麺の作り方を聞き取れませんでした」
だが、FM榛野は開局二か月前だった。
市の有線放送にも、そんな献立は存在しない。
それでもその日、りんご素麺は十一杯売れた。
団地では西向きの窓が閉まり、バスは停留所を通過し、赤い子ども用長靴が交番へ届けられた。
どの出来事にも、ありふれた理由がある。
勘違い、古い停留所標識、清掃車から落ちた展示品、家族同士の思い込み。
問題は、理由が見つかるたびに、存在しなかったはずの「放送内容」だけが詳しくなっていくことだった。
存在しない通知を訂正票に書き写す交換員。
無関係な資料を四つに分ける学芸員。
因果関係を説明するため、観測されていない前項を置く研究者
「さっきの放送が早くて、りんご素麺の作り方を聞き取れませんでした」
だが、FM榛野は開局二か月前だった。
市の有線放送にも、そんな献立は存在しない。
それでもその日、りんご素麺は十一杯売れた。
団地では西向きの窓が閉まり、バスは停留所を通過し、赤い子ども用長靴が交番へ届けられた。
どの出来事にも、ありふれた理由がある。
勘違い、古い停留所標識、清掃車から落ちた展示品、家族同士の思い込み。
問題は、理由が見つかるたびに、存在しなかったはずの「放送内容」だけが詳しくなっていくことだった。
存在しない通知を訂正票に書き写す交換員。
無関係な資料を四つに分ける学芸員。
因果関係を説明するため、観測されていない前項を置く研究者
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?