『レベル999で世界最強になった俺、倒した敵の「上限」を奪って無限に進化する ~神話級ボスをワンパンしたら、レベルの概念そのものが壊れた~』
第24話仲間全員の一撃を繋いだら、弱者を信じなかった神が初めて膝をついた
第24話仲間全員の一撃を繋いだら、弱者を信じなかった神が初めて膝をついた
「お前が信じられなかった強さを、今から見せる」
ハルトの背後で、仲間たちがそれぞれの武器を構えた。
ヴァルカスは、その全員を一度だけ見渡した。
「数をそろえれば、弱者が強者へ変わるとでも思ったか」
「違う」
ハルトは首を横へ振る。
「弱いままでも、できることはあるって言ってるんだ」
「ならば証明してみせろ!」
ヴァルカスが大剣を天へ掲げた。
「《原初神焔――蒼天蓋》」
青白い炎が闘技場の天井を覆う。
降り注いだ無数の火が、仲間たちの武器と魔法へまとわりついた。
「《聖盾陣》が消える……!」
カイルの前に展開されていた光の盾が、一枚ずつ炎へ溶ける。
セインの星鎖も、エルシアの聖剣を包む加護も、青白い火へ触れた場所から光を失っていった。
「外部術式、神託、武器から与えられる加護を確認!」
メタトロンの瞳に、解析結果が高速で流れる。
「それぞれが自分で生み出した魔力は使用可能です! しかし、ハルトへ魔力を集めれば、その瞬間に他者由来と判定されます!」
「つまり、全員の力を俺に乗せるのは駄目か」
「はい。よくある総力戦の必殺技は使えません!」
「よくあるとか言わないでください!」
エリナが思わず突っ込む。
その間にも、原初神焔は勢いを増していた。
「一人に集めた力など、所詮は借り物だ」
ヴァルカスが言い放つ。
「貴様らの絆とやらも、我が炎の前では形を持たぬ!」
ハルトは少し考えた。
そして、後ろを振り返る。
「だったら、俺に力を貸さなくていい」
「え?」
「俺まで道を繋いでくれ」
エリナが目を見開く。
ハルトはヴァルカスへ向き直った。
「一人が全部持つから焼かれる。なら、それぞれが自分の役目だけ果たせばいい」
「それです!」
メタトロンの解析表示が一斉に切り替わる。
「魔力そのものを譲渡せず、各自の行動結果だけを次へ繋げる! 原初神焔は因果関係まで他者由来とは判定できません!」
「もっと分かりやすく!」
エリナが叫ぶ。
「全員でハルトを前まで運べます!」
「分かりました!」
エリナは闘技場全体を見渡した。
迫る炎の位置。
仲間たちの立ち位置。
ヴァルカスが大剣を振り下ろすまでの時間。
そのすべてを頭の中で一本の道へ変える。
「炎の騎士さんたちは、左右から来る炎を押さえてください! 倒す必要はありません、三秒だけです!」
『承知シタ』
最初に自我を取り戻した赤い騎士が、盾を掲げた。
左右へ並んだ騎士たちも、自分の意思で武器を地面へ突き立てる。
赤、青、白、緑。
彼ら自身の魂から生まれた炎が壁となり、原初神焔の波を二つに分けた。
「ガルドさん、バルガスさん! 中央の床を!」
「壊すのは得意だ!」
「俺もだ!」
二人の大斧が、同時に闘技場へ叩きつけられる。
「どうして二人とも、そこだけ息ぴったりなんですか!」
「細かい相談がいらねえからな!」
「褒められてる気がしねえぞ!」
床が中央から大きく傾いた。
ヴァルカスの足場が、ほんのわずかに崩れる。
「この程度で!」
大剣が振り下ろされた。
「カイルさん!」
「分かっている!」
カイルは、光を失った黄金の聖剣を両手で構えた。
神から授かった力は、もうない。
残っているのは、何千回と振り続けた剣技だけだ。
大剣と聖剣がぶつかる。
「ぐっ……!」
カイルは受け止めない。
かつてハルトから教わった、重さを横へ流す動きで、巨大な刃の軌道をわずかに変えた。
大剣が床へ突き刺さる。
「セインさん、今です!」
「《星鎖封陣》!」
床に散ったセイン自身の魔力が、星の形を描く。
幾本もの鎖が大剣へ絡みついた。
原初神焔に焼かれながらも、鎖は一瞬だけ刃を地面へ縫い止める。
「〇・七秒だ!」
「十分です! エルシアさん!」
「任せろ!」
聖剣アストラが閃いた。
狙うのはヴァルカスではない。
大剣から闘技場へ流れ込む、原初神焔の支配経路。
「神の炎であろうと、所有を名乗った時点で境界は生まれる!」
エルシアの斬撃が、その境界だけを断ち切った。
闘技場を覆っていた炎の一部が、ヴァルカスの命令から外れる。
消えたのではない。
ただ、誰を焼くのかを命令されなくなった炎が、その場で静かに揺れた。
「道が開きました!」
エリナが叫ぶ。
「ハルト、真っすぐです!」
「分かった!」
ハルトが駆け出した。
だが、ヴァルカスも止まらない。
「我へ届くと思うな!」
大剣を手放し、右拳へ原初神焔を集中させる。
ヴァルカス自身の魂から生まれた炎。
エルシアにも、そこだけは切れない。
「ハルトさん、正面から来ます!」
メタトロンが警告する。
「回避した場合、背後の全員へ直撃します!」
「なら、避けない」
ハルトは走る速度を上げた。
「また一人で受けるつもりか!」
ヴァルカスの怒声が響く。
「違う!」
ハルトは拳を引いた。
「ここまで連れてきてもらった! 俺の役目は、最後の一歩だけだ!」
二人の拳が激突する。
原初神焔がハルトの腕を包み、残っていた捕食上限との接続を次々と焼いていく。
【捕食済み成長上限――全封印】
【使用可能固有能力――《無限捕食》のみ】
それでもハルトの拳は止まらない。
無限捕食が炎を喰らい、奪った上限を焼かれる。
もう一度、喰らう。
また焼かれる。
【適応時間――〇・一一秒】
【適応時間――〇・一八秒】
【適応時間――〇・二七秒】
「無駄だ!」
「無駄じゃない!」
リリアとミリアが、ハルトの後方から両手を伸ばす。
二人の治癒は、力を与えるためではない。
炎へ踏み込み続けるハルトの身体を、その場で支えるためのものだ。
「力は渡せなくても――」
「倒れないようにすることはできます!」
「治癒も焼け!」
ヴァルカスが炎を広げる。
その前へ、炎の騎士たちが次々と割って入った。
『コレハ我々ガ選ンダ炎ダ』
『誰カニ与エラレタ力デハナイ』
騎士たちの炎が、青白い波を押し返す。
強さでは及ばない。
一人では、一瞬しか耐えられない。
それでも一人が退けば、次の一人が前へ出た。
一瞬と一瞬が繋がり、ハルトへ届く時間へ変わる。
「なぜだ……」
ヴァルカスの拳が、初めて押し戻された。
「なぜ、命じられてもいない者のために立てる!」
赤い騎士が答える。
『我々ハ、弱イ』
その盾には、いくつもの亀裂が走っている。
『ダカラ、隣ノ者ニ立ッテモラウ』
別の騎士が、その盾を横から支えた。
『ソシテ隣ノ者ガ弱イ時ハ、我ガ立ツ』
ヴァルカスの目が揺れる。
その一瞬を、エリナは見逃さなかった。
「ハルト! 今です!」
「おう!」
【《原初神焔》への適応――一秒到達】
たった一秒。
だが、全員が繋いだ道の先では、それで十分だった。
ハルトの拳が青白い炎を突き抜ける。
ヴァルカスは左腕で受けようとした。
ハルトは直前で拳を開き、その腕をつかんだ。
「何……?」
「倒すだけなら、殴ればいい」
ハルトは踏み込み、ヴァルカスの重心を崩す。
「でも、お前に見せるんだったら、こっちだ」
力任せではない。
荷物持ちだった頃、重い荷を傷つけず地面へ下ろすために覚えた動き。
ヴァルカスの巨大な身体が宙を回り、闘技場の中央へ落ちた。
片膝が、床につく。
原初神焔が止まった。
闘技場へ、静寂が降りる。
「第三神が……膝をついた」
カイルが呟く。
ハルトは拳を下ろし、ヴァルカスの前へ立った。
「お前が負けたのは、俺一人じゃない」
ヴァルカスは、周囲を見渡す。
神から与えられた力を失っても剣を握ったカイル。
妹だけでなく、知らない魂まで救うと決めたセイン。
傷ついた仲間を支え続けるリリアとミリア。
自分の意思で盾を並べた炎の騎士たち。
「お前が弱いと決めた全員に負けたんだ」
「弱者の選択が……我の炎を越えたというのか」
「一つだけじゃ無理だった。でも、選んだことは次のやつへ残る」
ハルトは手を差し出す。
「だから、世界まで変えられる」
ヴァルカスは、その手を取らなかった。
代わりに自分の力で立ち上がり、セインへ向き直る。
「魔導士セイン」
セインの胸元へ、弱々しい炎の紋章が浮かぶ。
「我との神契は、まだ残っている」
「分かっている」
「契約を終えるには、結んだ双方の選択が必要だ」
ヴァルカスが右手を上げる。
「我は、お前を管理する権利を手放す。お前はどうする」
セインは、眠る妹を見る。
次に、隣へ立つ仲間たちを見た。
「俺は、二度と妹の未来を誰かへ預けない」
胸元の紋章へ、自分の手を重ねる。
「俺たちで守る。だから、この契約を終わらせる」
二つの意思が重なった。
炎の紋章が、静かな光となってほどけていく。
【神契――解除】
その瞬間。
天界第三牢獄全体が激しく揺れた。
「今度は何ですか!?」
エリナが天井を見上げる。
消えたはずの《煉獄天秤》が、黄金の光となって再び浮かび上がっていた。
ただし、その中心に刻まれている名はヴァルカスではない。
【第一神ゼノス】
黄金の鎖が天井から降り、ヴァルカスの両腕と炎の輪を拘束する。
『神が、人の選択を認めたか』
冷たい声が、牢獄のすべてへ響いた。
『ならば第三神ヴァルカス。お前はもう、管理者ではない』
無数の牢が一斉に閉じ始める。
解放されかけていた騎士たちの鎧へ、黄金の炎が侵入していった。
「解析不能……いえ、違います!」
メタトロンが声を震わせる。
「第三牢獄そのものが、巨大な神焔兵器へ作り替えられています!」
ヴァルカスは黄金の鎖を引きちぎろうとする。
だが鎖は、原初神焔に触れても消えなかった。
「ゼノスは、最初から我が背く場合まで予定へ入れていた」
逆さの塔の最上部で、巨大な黄金の炉が動き始める。
牢獄に残るすべての魂を、燃料として吸い上げながら。
「止める方法は?」
ハルトが尋ねる。
「第三牢獄の最深部にある《神座核》を破壊する」
「なら行こう」
「待て」
ヴァルカスは鎖に拘束されたまま、落ちていた大剣を拾い上げた。
「あれは我にしか斬れぬ。だが、神座核へ刃を向ければ、我は第三神の力をすべて失う」
「それでも斬るのか?」
ハルトの問いに、ヴァルカスはしばらく答えなかった。
やがて、自分で立ち上がった炎の騎士たちを見る。
「……弱者の選択にも、世界を変える力があると言ったな」
「ああ」
「ならば今度は、我が選ぶ」
ヴァルカスは大剣の切っ先を、第一神の名が刻まれた天へ向けた。
「第三神ヴァルカスは、これより神々の予定へ反逆する」
『レベル999で世界最強になった俺、倒した敵の「上限」を奪って無限に進化する ~神話級ボスをワンパンしたら、レベルの概念そのものが壊れた~』 @goddango
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