『レベル999で世界最強になった俺、倒した敵の「上限」を奪って無限に進化する ~神話級ボスをワンパンしたら、レベルの概念そのものが壊れた~』
19話 閉じる天界の門を仲間全員がこじ開けたら、第三神の牢獄は最強の俺だけを拒絶した
19話 閉じる天界の門を仲間全員がこじ開けたら、第三神の牢獄は最強の俺だけを拒絶した
閉じるはずだった天界の門が、ハルトの腕一本で止まった。
「お前も妹も、まとめて連れて帰る」
赤い門の向こうで、炎の騎士たちが一斉にこちらを向く。
『侵入者ヲ排除セヨ』
無数の槍が突き出され、門を押し返した。
ハルトの足元が地面へ沈む。
「ぬおおおっ! 門と押し合いをしてやがる!」
バルガスが目を見開いた。
「実況してないで手伝ってください!」
エリナに怒鳴られ、バルガスは慌てて大斧を門の隙間へ差し込む。
「最初からそのつもりだ!」
「絶対に今決めましたよね!?」
「細かいことは気にするな!」
大斧の柄が軋み、閉じかけていた隙間がわずかに広がった。
しかし、門を包む炎は勢いを増していく。
「ハルト、喰らえないのか!」
カイルが叫んだ。
「試してる。でも、これは駄目だ」
世界捕食界は門の炎へ食らいついている。
だが、捕食する直前でハルト自身が止めていた。
「なぜだ!?」
「この門の向こうから、セインの神契と同じ力を感じる」
セインの表情が変わる。
「妹の治療につながっているのか?」
「たぶん。門を全部喰らったら、治療の炎まで消えるかもしれない」
「なら壊すな!」
セインが叫び、杖をハルトへ向ける。
カイルが反射的に聖剣を構えた。
「セイン!」
「邪魔をするなら、今度こそ俺は――」
「壊さない」
ハルトは門を支えたまま、あっさり答えた。
「お前の妹を助けに行くのに、助けるための力を消したら意味がない」
セインの杖が止まる。
「……本当に分かっているのか?」
「だから、さっきからそう言ってるだろ」
「お前は昔から説明が足りない!」
「セインさんにだけは言われたくないと思います!」
エリナの言葉に、元勇者パーティーの三人が同時にうなずいた。
「今だけは同意する」
「俺もだ」
「私もです」
「なぜお前たちまでそちらに立つ!?」
ほんの一瞬、セインの声が昔のものへ戻った。
だが、胸の《神契》が赤く光ると、彼は再び口を閉ざした。
「門の構造を解析します」
メタトロンが両手をかざす。
赤い門を覆う術式が、幾重もの輪となって空中へ映し出された。
「これは移動門ではありません。天界第三牢獄そのものが、一時的に魔界と接続されています」
「どう違うんだ?」
「扉を固定している五つの支点があります。すべて同時に奪えば、門をこちら側の法則へ固定できます」
「それなら早くやろう」
「簡単に言うな。支点は門の内側だ」
ノクスが目を細める。
門の向こうでは、炎の騎士たちが隙間を塞ぐように陣形を組んでいた。
一体一体から放たれる力は、上位の神兵をはるかに上回っている。
そして門が閉じるまで、残り二十秒。
「俺が中へ入って、五つとも壊す」
「却下です!」
エリナが即答した。
「でも、一番速いぞ」
「壊したら駄目だと、たった今確認したでしょう!」
「じゃあ、壊さずに奪う」
「そういう問題でもありません!」
ハルトが首をかしげる。
その横で、メタトロンが五つの支点へ番号を振った。
「単独行動は非効率です。支点の位置は上下左右と中央。それぞれ別の術式で保護されています」
「なら、全員でやればいい」
「全員って、まさか三万六千人ですか!?」
「門に入らないか?」
「入る前に詰まります!」
「そこは悩むところではないぞ、ハルト」
ノクスがため息をつき、魔王の杖を掲げた。
「上は余が取る。影ならば炎の陣を抜けられる」
「下は私が斬るわ」
エルシアが聖剣アストラを抜く。
「神の所有権だけを切り離せば、支点は壊れない」
「左右は俺たちに任せろ!」
バルガスが門の右側へ大斧を向ける。
反対側にはガルドが並んだ。
「また貴様とか」
「不満か、でかいの!」
「いや。今度はどちらが先に終えるか勝負だ」
「乗った!」
「今は競争している場合ではありません!」
ミリアとリリアが、ぴたりと声をそろえた。
二人は顔を見合わせ、それから少しだけ笑う。
「門の炎が全員の力を奪っています」
リリアが杖を構えた。
「私たちで、みなさんを支えます」
「中央は俺がやる」
カイルが聖剣を握り直す。
神託の力を失った刃には、もう黄金の光はない。
それでも、その目に迷いはなかった。
「これは勇者としてではない。セインの仲間として、俺が取り戻す」
「勝手に仲間へ戻ったつもりになるな」
セインは冷たく言った。
「だったら、戻るまで何度でも言う」
カイルは聖剣を向けた。
「お前は俺たちの仲間だ」
セインは答えなかった。
ただ、その瞳の金色の輪へ、ごく細い亀裂が走った。
「残り十二秒!」
メタトロンが告げる。
「五つの支点を可視化。敵の波形を共有します!」
個体七〇八が槍を掲げた。
「解放神兵隊、門前へ防壁を展開! 突入する者たちを援護せよ!」
三万六千二百十一の神兵が翼を広げる。
炎の騎士たちが放った無数の槍を、白い光の壁が受け止めた。
「アクアリア!」
「分かっています」
女神が指先を動かす。
王都を流れる水が空へ昇り、門の炎へ薄い膜を作った。
「私には、もう炎を消す力はありません。けれど、流れを一瞬遅らせることならできます」
「十分だ!」
ハルトの返事と同時に、全員が動いた。
ノクスの影が炎の騎士たちの足元を抜け、上の支点へ巻きつく。
エルシアの斬撃が炎だけを割り、下の支点からヴァルカスの紋章を切り離す。
バルガスとガルドは左右へ飛び込み、二本の大斧を同時に振るった。
「俺のほうが速い!」
「同時だ!」
「なら俺の勝ちだ!」
「なぜそうなる!」
中央では、カイルが炎の騎士と剣を交えていた。
神の加護はない。
力も速さも、相手が上だった。
それでも、一歩も退かない。
「ハルトが荷物持ちだった頃、俺は自分だけが仲間を守っていると思っていた」
炎の槍を受け流し、前へ出る。
「だから今度は、誰かに任せたままにはしない!」
聖剣が騎士の槍を跳ね上げ、中央の支点へ触れた。
「今だ、ハルト!」
「天律支配――五つの支点の所有者を、天界から地上へ書き換える!」
五つの紋章が、同時に黒く染まった。
閉じようとしていた門が止まる。
残り一秒。
「固定、成功!」
メタトロンの声に、地上から歓声が上がった。
「開いたぞ!」
バルガスが笑う。
「これで全員、天界へ殴り込みだ!」
「待て」
ハルトが門を押さえたまま振り返る。
「全員では行かない」
「何?」
「王都を守る仲間が必要だ。ゼノスたちが、俺たちの留守を狙うかもしれない」
エリナが驚いたように目を瞬いた。
「ハルトさんが、ちゃんと後先を考えている……」
「俺だって考えるぞ」
「知っています。でも、成長が急すぎて少し怖いです」
「そこまでか?」
「そこまでです」
ノクスが小さく笑うと、王都の方角へ向き直った。
「では、余が残ろう」
「ノクス?」
「ここは魔界であり、余の国だ。王都と離反兵を守る責任がある」
アダマスも盾を地面へ立てる。
「私も残る。二度と、守るべき者を神の命令へ差し出さない」
アクアリアは静かにうなずいた。
「私は門と治療の炎をつなぐ流れを、こちらから監視します」
「なら突入するのは、俺、エリナ、バルガス、リリア、エルシア、メタトロン。それからカイルたち四人だ」
「私も数に入っているんですか!?」
「来ないのか?」
「行きますけど!」
エリナは即答してから、はっとした。
「違います! せめて先に聞いてください!」
「聞いたぞ」
「順番!」
張り詰めた空気の中に、仲間たちの笑いが広がった。
セインだけは門の先を見つめている。
「話は終わったか。妹に残された時間は七日しかない」
「七日もかけない」
ハルトが先頭に立った。
「今日、連れて帰る」
一行は赤い門を越えた。
天界第三牢獄。
空は赤く、巨大な塔が逆さまに浮かんでいる。
足元には炎の道が続き、その左右に数えきれない牢が並んでいた。
門を越えた瞬間、ハルトの身体を白い炎が包んだ。
「ハルトさん!」
エリナが手を伸ばす。
「触るな!」
メタトロンが制止した。
「神域法則を検出。これは通常の炎ではありません!」
白い炎は服も身体も傷つけていない。
代わりに、ハルトの内側にある力だけを測るように燃えていた。
【天界第三牢獄・侵入者判定】
【対象の保有上限を計測】
【計測不能】
【危険度――無限】
牢獄全体が、激しく揺れた。
左右の牢から炎が噴き上がり、すべてハルト一人へ向きを変える。
「どういうことだ!?」
バルガスが斧を構える。
セインの顔から血の気が引いた。
「ヴァルカスの《煉獄天秤》だ。この神域では、強い者ほど炎が強くなる」
「では、ハルトの力を測った結果は……」
リリアが言葉を失う。
塔の最上階から、ヴァルカスの笑い声が降ってきた。
『待ッテイタゾ、世界ヲ喰ラウ者ヨ』
白い炎が集まり、天まで届く巨大な檻へ変わる。
『最強デアル貴様コソ――コノ牢獄デハ、最モ無力ダ』
炎の檻が閉じ、ハルトだけを仲間たちから切り離した。
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